●「襲撃」3/4
ローブの男が急に立ち止まり、口を開いた。
「お前は、面白い能力を持っているようだな。」
「お前だ!お前が村の人々と両親の仇だ!今その能力で疑惑が確信に変わった!お前は私が必ず倒す。」
シュゼットは自分が興奮しているのを感じる。ようやく復讐が果たされると思うと居ても立っても居られなかった。
しかし、男の元まで行こうとすると雨に当たることを避けられない。
シュゼットは作戦を考え付き実行に移した。
なんと、ローブの男に直線で突っ込んだのである。
そして、雨雲を、消した。
眩い光が辺りを照らす、与えられた5秒で男の元まで近づき、剣で心臓を狙う。
カンッと剣が金属音を鳴らす。
(っつ!そんな!)
その剣は心臓まで達しなかった。男が持っていた水筒に当たっていたのだ。
水筒から水がこぼれていく。
「貴様!」
男は急に慌て始めた。こぼれる水を一生懸命飲み始めたのだ。
男の隙をつき再び攻撃に移る。
びゅんと男の口元から何かが飛び出るのが見えた。
シュゼットはエリアスの言葉を思い出す。
「いいですか。呪いをもった能力者と戦うときは、弱点を把握するのです。呪いは強力ではありますが、必ず弱点があります。相手の一挙手一投足を見逃さないで冷静に分析することが重要なのです。」
(少なくとも水が必要なようね。さっきは暗くてよく見えなかったけど水を口から発射していたのね。)
冷静に分析を開始する。
(でも、それだけじゃ皮膚が溶ける説明にはならない、雨と私の矢を避けることが出来たことも解決しないとこの男は倒せない!)
シュゼットは実践経験が少なかったので、ここでミスを犯してしまう。
(!しまった!)
先ほど消した雨雲が姿を現し、再び雨が降り出したのである。
彼女はもろに雨に当たってしまった。
(あれ?)
しかし、全く痛みを感じなかった。
突然男はシュゼットに背を向け逃げだした。
「待て!」
彼女は急いで男を追った。
エリアス達は情報を受け取ると南西部へと向かっていた。
道中抵抗軍に邪魔され兵は疲弊しきっていたので、近くの町に寄り休憩することにした。
「エリアス様、よろしかったのですか。シュゼット様の加勢に行かなくて。」
信徒の一人がエリアスの元へ行き、訊ねる。
「今回の任務は少女を護衛することです、私たちは一刻も早く見つけなくてはならないのです。とはいえ敵を無視できないのも事実。彼女は強いですから、敵は彼女に任せましょう。」
「分かりました。」
エリアスがいないところで一般教徒は会話をしていた。
「なぁ、おかしくないか?」
「何が?」
「今回の任務だよ。」
「何で?」
「教会トップ直々の依頼なんだぜ、いくら能力者が少ないと言っても2人しかいないなんて変じゃないか。」
「考え過ぎだよ、大丈夫!神は我らを見捨てたりしないさ。」
「俺はどうも裏があるようにしか思えないな。」
ー日が暮れてきたー
シュゼットは男を追っていた。
(水を奴に渡しては駄目!次に奴が水を得たら、また多くの犠牲がでる!ここで必ず仕留める。)
「参った!」
男が急に止まり、地面を頭につけて降参する。
突然の出来事にシュゼットは驚きを隠せなかった。
「お前は多くの命を奪ってきたんだ!お前にかける慈悲はない!ここで死ね!」
シュゼットは弓を引く。
「お願いだ!助けてくれ!まだ死にたくないよ!」
男はまだ命乞いをしている。
「死ぬ前に聞いておきたいことがある!お前は何故私だけでなく何の関係もない村の人々を殺したのだ!」
「ひぃー死にたくないよー!」
男の情けない声を聞き、シュゼットは優越感を覚える。
もはや理由など知る必要もない、ここでこの男を殺せば全てが終わるのだ。
そう思いとどめの矢を引く。
ビュン
鋭い音が後ろから聞こえる。
「えっ?」
ズシリと鈍い音がすると同時に左足に激痛が走った。
シュゼットが左足に目をやると自分の血が噴き出しているのが見えた。
男はさっきまでとは打って変わって、冷酷な態度をとった。
「やれやれ、余程俺に恨みを持っていると見える。俺に気を取られすぎたな。」
シュゼットは後ろを振り返る。
ブンブンブンとプロペラ音を鳴らす見たこともない物体がそこにはあった。
「噂に聞く機械兵とかいうやつだな、実在していたとは驚きだ。」
「くっ!」
シュゼットは痛みで上手く歩けない。
「矢より余程殺傷力のある武器のようだ。全然動きが見えなかったぞ。」
「お前を!お前だけは!」
「気を付けたほうがいい、次の攻撃が来るぞ」
「!」
機械兵が攻撃を仕掛けるより先にシュゼットは能力を使い機械兵の存在を消した。
男はその一瞬を逃さず、再び走り出して逃げた。
シュゼットは残りの力を振り絞り、先ほどまで機械兵がいた場所に剣を振る。
5秒後、剣と機械兵は重なり合って互いに反発し、両方とも破壊された。
シュゼットはその場で座り、足を布で縛り、応急処置をすると、急いで男を追った。
ざぁぁぁぁぁと滝の音が聞こえる。男が向かった先は崖であった。必死になって男を探すが、もう男の姿は見えなかった。
ーあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー
「ごめんなさい。皆!折角追い詰めたのに!また大勢の犠牲者が出てしまう!私が未熟者だから!」
シュゼットはその場に立ち尽くし涙を流した。
一方エリアス達は夜が更けてきたので、任務を一時中断し、町で宿泊することにしていた。
部下たちを気遣い、滞在中は自由にさせていた。酒を嗜む者、村人達と交流をする者など様々だった。
「おい!来てみろよ!」
「どうした?」
「村一番っていう占い師に見てもらったんだけどよ。すっげー良く当たるんだよ!」
「お前が気に入るってことはそれだけじゃないんだろ?」
「分かるか!雪のように白い肌をしているんだよ!目の保養だね、ありゃ。」
「よっしゃぁ!いっちょ行くか!」
よく当たるという噂を聞きつけ、多くの部下たちがその占い師のところに向かった。
「あなたは奥さんと今上手くいっていないようね。」
「どうしてそれを?まだ手を見せただけなのに、」
「凄腕占い師ですから。家事を奥さんに押し付けてはいませんか?」
「確かに、最近は忙しいから。」
「そこですよ!忙しさをいい訳にして誤魔化してはいませんか?」
「むぅ。」
「少しの時間だけでもいいので奥さんを助けてあげて。」
「分かりました。ありがとうございます。」
占い師はアドバイスをすると、次の客を手招きした。
客は大きな男であった。男は占い師の元まで行くと威勢よく語りだした。
「よく聞け!嬢ちゃん!俺はどうしても占い師っつう輩は信じらんねぇんだよ。今のやつも嬢ちゃんの仕込みなんじゃねぇのかってつい疑ってしまう。」
「手を見せてください。」
バンッと男は机をたたく。
「もし、お前の占いが少しでも外れたら、払った金を返してもらうからな!もちろん俺の分だけじゃなく今日あんたに見てもらった全員の分もだ!」
男は高圧的な態度で占い師に手を見せた。
「あなたは母親と二人で過ごしていますね。失礼ですが、あまり裕福ではない家のようですね。お母さまは今病気で、その病気を治すためにお金を稼いでいる。」
占い師は続ける。
「お金のためなら何でもやってきましたね。強盗、恐喝、殺人などなど数えきれないほどやりましたね。」
野次馬どもが騒ぎ出す。
「お前!何出鱈目いってんだ!ふざけんな!金は返してもらうぞ!」
男が激昂する。
「合ってますよ!現に今あなたから真っ黒な色がするんですもの。」
「何訳の分からないこといってんだ!」
男は我を忘れて占い師に襲い掛かろうとした。
はぁ、と占い師はため息をつくと自分の手を急に掻きむしり始めた。
「ぎゃああああ」
男は急に自分の手に痛みを感じ始めた。野次馬たちは男の様子をみて不思議がっていた。
が、次の瞬間、自分たちも手に激しい痛みを感じ始めた。
「痛い、痛い。」「誰か!救護班を呼べ!」
近くに待機していた救護班が到着する。
隊員たちは激しい痛みを訴えたが外傷は全くなかった。治療しようにも出来なかったのである。




