◔「継承」2/4
「この手だ。この手が悪さをするのか?」
エドガーがエドゥの右手を踏みつけた。
ゴキゴキと嫌な音が鳴る。汗も出てきた。
握っていた拳銃も手から離れていく。
「あぁぁぁぁあああぁぁぁ」
「ふん、これさえなければお前は俺を傷つけることすら出来ないだろう。」
絶対絶命。唯一といっていい有効な手が封じられたのだ。
全員が息をのんだ。
「いーや。おめぇはあと数手で負けるぜ。」
その時だった。エドガーの後ろから声が聞こえた。
聞きなれた声。
「!!ピザファット!!生きていたのか!!」
エドガーが振り向いた。
「貴様にもう用はない!!勝者の俺がこの島を統治する!!」
エドガーの爪がピザファットを貫こうとした。
「おめぇなぁ~。確かに強いってのは認めるけどよぉ。いつまでもガキみてぇなこと言いやがって。」
ピザファットはその場から動かない。
グサッという鈍い音を立て、爪がピザファットの体を貫いた。
そのままエドガーは腕を抜こうとする。
が、穴が塞がりそれを許さなかった。
「全員矢を放て!!」
ピザファットの号令と共に一斉に弓が引かれる。
「うぉぉぉぉお!!放せ!!ピザファット!!!」
無数の矢が二人に浴びせられる。
やがてエドガーの変身が溶け始めた。
「攻撃止め!!」
タイミングを見計らい、号令が出る。
「捕獲!!!」
エドガーを捕らえようと大勢が近づいていく。
「フン!!!」
エドガーはピザファットを足蹴りし、何とか腕を抜き、最後の力を振り絞り大空へと羽ばたこうとする。
「気来風・・・」
エドゥが構える。
「無駄だ!!この距離では届くまい!!!」
エドガーは既に上昇していた。
(くそ!!この距離じゃ!!。)
エドゥが構えを解こうとする。
「相棒!!そのままだ!!そのまま!!」
ピザファットが大声で語り掛ける。
ゴゴゴゴゴゴという音と共に地面が隆起する。
エドゥは勢いよく上昇した。
勝負は一瞬で決まった。
驚いたエドガーの一瞬の隙をつきエドゥの気来風躰掌がさく裂。
そのままエドガーは地面に叩きつけられた。
漸くエドガーが捕らえられた。
「印を探せ!!洗脳を解くんだ!!」
エドガーの顔を隈なく見る。
「無駄だ!そいつは自力で洗脳を解いている。」
土の中からフランコがはい出てきた。
「やっぱ、さっきのはお前か。おいしいところ持っていきやがって。」
ピザファットがフランコに笑いかける。
「ふん。一番おいしいところはお前の相棒が持っていったけどな。」
「全員の力が合わさっての勝利だ。それより洗脳は既に解けていたのか。」
エドゥが会話に割り込む。
「あぁ、これで後は黒幕を捕まえるだけだな。」
会話をしていると、脳内に声が響いてきた。
ーラルフが黒幕と対峙中、場所を送るので手が空いている者は向かってくれ。ー
「これで終わりにしてやる!」
「おうよ!俺っちたちを怒らせたことを後悔させてやろうぜ!」
「何人かエドガーの監視を置こう。」
「それなら、私がここにいるわ。」
ネミがその場に残ると言う。
「分かった、危なくなったら直ぐに信号弾を撃ってくれ。」
「ふぁぁあ。こんだけ暗けりゃ一発で気付くしな。」
ピザファットが欠伸をしながら話す。それも無理からぬ話であった。
あと数時間で明日が来る。一日の疲労は凄まじく今にも寝てしまいたかった。
だが、それはこの場にいる全員がそうであった。
ピザファットはそれを理解していたし、理解していたからこそ欠伸を我慢していた。
だが、我慢できずに欠伸をしてしまった。
一度空気が緩むとそれは感染するように広がっていく。
周りの戦士たちからも欠伸をするものが現れてしまう。
「・・ピザファット。」
フランコが静かに怒りを露にする。
「・・・悪かったよ。」
ピザファットはそんな目で見ないで、というように表情をつくり謝った。
さて、そんな一幕があったが、ネミと数人の戦士たちにエドガーの監視をさせ3人は残りの戦士たちを連れ情報のあった海岸まで駆けていった。
「いたぞ!あれが敵だ!!」
海岸にポツンと男が一人佇んでいた。
「あれは!!」
エドゥが驚く。
「どうした相棒?知ってるやつか?」
ピザファットの質問に食い入るようにエドゥは口を開く。
「すごいな!初めて見たぞ!Japanese S・A・M・U・R・A・I だよ!!侍!!」
男は着物を着て腰に刀を携えていた。これが侍じゃないなら何だというのか。
興奮するエドゥとそれにドン引きするピザファットを無視し、フランコが男に声を掛けた。
「お前はAH社とかいう組織の一員で、この島を侵略しに来た。・・そうだな?」
「如何にも、名乗らせていただこう。我が名は宮本 蒼士。・・しかし」
宮本と名乗った男が話を続ける。
「侵略しに来たというのはちと語弊がある。私は回収に来ただけだ。」
「回収・・・?何のだ?」
「それは私の預かり知らぬこと。もっとも知っていたからと言って教える義理はないわけだが。」
「もういいだろ、フランコ。こいつ一人みたいだし、俺っち達で倒せば何の問題もねぇよ。」
ピザファットが会話を遮る。
「戦うことは吝かではない。しかし、私は一体一の真剣勝負を所望する。」
宮本が刀を抜く。
「卑怯なようで申し訳ねぇけどよ。お前と遊んでる暇はねぇ訳。お分かり?」
「ピザファットの言う通りだな。」
「俺も出来たら漫画みたいに一体一の果たし合いがしたかったけど、そうも言ってられないしな。」
ピザファット、フランコ、エドゥが攻撃の準備を始める。それと同時に戦士たちも武器を構えた。
「致し方ない・・・」
宮本がピザファットの方へ間合いを詰めていく。
「!?何だこいつ急に止まりやがって、このピザファット様に恐れでもなしたか?」
宮本の動きが止まった。
3人は宮本の様子を窺う。
ドサッ。
突然何かが落ちる。
頭だった。
ピザファットの。
急いで宮本の方へ眼を向ける。
彼はその場にさっきと全く同じ体勢でいた。
(見えなかった。一瞬でピザファットの首を切り落としたのか!?)
その場に緊張が走る。
一方その頃・・・
(俺は・・・負けたのか・・)
エドガーは縄でグルグル巻きにされていた。
(他の奴らは何所にいるんだ。)
周りを見るが誰一人いない。
縄は容易に解けた。
(何所だ?ここは?)
エドガーは辺りを見渡す。
見渡す限り木でいっぱいである。
島の森林地帯のどこかであることは何となく分かった。
(だが誰が俺を運んだ?)
思考を巡らせる。体はボロボロなので能力で上空へ飛ぶことは出来そうにない。
諦めてその場から離れようとした。
「あぁ、エドガー。随分傷ついて・・・。」
後ろから声が聞こえる。
「・・・ラルフか。」
ラルフの方へゆっくりと近づき、
手を変身させ、地面に叩きつけた。
「!?どうしたんですか。いきなり」
ラルフが突然のことに驚く。
「・・・誤魔化す必要はない。お前が内通者だってことぐらい知っている。」
エドガーは手に力を籠める。
「やめてくれ!!俺は関係ないんだ!!」
ラルフが必死に叫ぶ。
(効いていないのか?)
エドガーがいくら力を込めてもラルフはピンピンしていた。
「関係ない訳あるか!!ハレイの通信で資料が頭の中に入ってきたはずだ!!」
「それが、何の関係があるっていうんですか!!」
「あれはお前が書いたものだな!!」
「違いますよ!!」
「いや!!違わない!!お前は俺が認知している能力者の欄に自分を入れなかった。」
「はい?そんなこと理由になりますか?」
「何故裏切った!」
ラルフの言葉を聞かずエドガーが攻撃の手を緩めない。
「この!!目を覚ましてください!!」
ラルフがエドガーの力をものともせず、手を押しのけた。
そして、手にライトを持つとエドガーの目に照射する。
「うっ。」
一瞬だけ目を離すとラルフはいなくなっていた。




