◑「僕の記憶」3/4
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僕は長老の息子として幼い頃から仕事を見てきた。長というのは常に民のことを考え、自分のことは考えないものだと勝手に考えていた。ハンナおばあちゃんも帰ってくるのはいつも遅かったから自分の時間なんてやっぱりほとんどないんだなぁと子供ながら思った。だけど、それは同時に素晴らしいことだと僕は思う。
自分を犠牲に出来るエルフなんて普通はいない。出来ないことをやることが素晴らしいんだと、ただただ信じていた。
だが、それは違うってことに気付かされた。
2人の家族に。
たまたま寄った家から聞こえた楽しそうな声。
僕は気づくとその声に吸い寄せられていた。
(何をしているんだろう?)
申し訳ないとは思いつつ窓から様子を窺う。
何やら白い紙に色々な色を加えて何かを描いているようだ。
何をしているんだろうと思った。これは生きることに必要がない。資源の無駄遣いだ。
そう感じた。でも二人があんまりにも楽しそうにしていたので、何やら自分までウキウキしていた。
自分らしさを描く。
そうルカのおばあさんが言っているのが聞こえる。
ここで、自分らしさとは何だろうと考えて見た。
他人のために自分を犠牲にする。
なるほど確かに立派だ。だが、そこに自分らしさはあるのだろうか。
答えは恐らくないのだろう。人それぞれだ。それでいい。
この件に関して僕の解答は ない だった。
僕はその日以来自分というのを見つめなおすことをするようになった。
する必要のないことも積極的に始めることにした。
その中で、らしさが見つかるのではないかと考えたからだ。
周りからは変な目で見られるようになったが、そんなことは些細なことでしかなかった。
やってみるとこれが意外にも面白かった。
人生に色が付けられたような。
ひょっとすると、これが らしさ なのかもしれない。
そのあたりからフランコとエドガーとつるむようになった。
その二人もまた必要最低限のことしかしなかった自分と似た境遇だと勝手に思ったからだ。
最初二人は中々動かなかった。だから強引に連れて行った。
そのうち、2人とも楽しくなったのか。どんどんと率先して行動するようになった。
僕を退屈な世界から救ってくれた家族に何かお礼がしたかった。
だから、女の子とまずは仲良くなることから始めようと思ったんだ。
同世代の女の子と話したことがなかったからはじめは緊張してしまった。
「HEY!彼女!俺っちとデート(楽しいこと)しない?」
思わず緊張からそう口走ってしまった。
これもまた自分らしさなのだろうか。
女の子はすごく嫌悪を示して、ただ
「・・・どっか・・行って・・・お願いだから。」
としか言わなかった。
その日は帰ったが、僕はどうしても諦められなかったんだ。
次の日も、その次の日も、アタックをつづけた。
はじめは女の子は拒絶してばっかりだったが、だんだんと打ち解けてくれた。
気を引くためにいっぱい変なことをしたからだろうな。
今思い出すと恥ずかしい。
何週間か経つと僕は女の子の家に呼ばれるほどの仲になっていた。
ルカが人の目を嫌っていて絵を描くことに怯えていることは何日か見ていて分かっていた。
だから、そんなルカが絵を見せてくれたことが本当にうれしかった。
何とかしたいという一心で僕は皆に絵を薦めた。
はじめはフランコとエドガーに。
そしてそれから多くの子供に。
はじめはあまり上手くいかなかったが、皆の仕事を少しづつ引き受け余裕を持たせ娯楽という概念を与えていった。もちろん自分も娯楽の時間を忘れずに過ごした。
一か月もかかった。だが、やり遂げてみせた。
良かった。恩は返せた。
だが、しばらくすると彼女に不幸が襲った。唯一の家族がいなくなってしまったのだ。
僕は彼女の力になりたくてずっと慰めていた。
それからしばらくして、彼女を元気づけたくて島で一番高い場所まで連れて行った。
夕焼けを見る彼女の横顔に僕は恋をした。
そのあと君が泣くもんだから僕は気持ちを伝え損ねた。
だが、それでよかったのかもしれない。
あそこで告白すると、傷心に付け込んでいるようで何か卑怯な感じがするからだ。
僕はそれからタイミングを逃してしまった。
照れ隠しに他の人をナンパしたり、何をしているのか自分でもよく分からなかった。
食欲も増えた気がする。おかげで今ではぽっちゃり体系だ。
こんな僕じゃ君は好きになってくれはしない。
僕は勝手に君への気持ちを押し込めた。ー
(今もう一度君への気持ちを伝えよう。)
「ルカ========!!!!!愛してる!!だから死ぬな!!!生きてくれ!!!」
血の塊を力強くだきしめる。
血の塊はピザファットを払いのけようと暴れている。
ピザファットは体が消滅していくが、増殖して再生することで死を免れる。
「頼む、体に戻ってくれ。」
血の塊はその後暴れていたが、やがて静まった。
「ありがとう。」
ピザファットの手から離れた血の塊はルカの体へと入っていった。
「よし、これで。」
体のパーツを頑張って繋げる。
足りない部分は自前で用意し無理やり引っ付ける。
(相棒のときも大丈夫だったんだ。頼む!生き返れ!!」
口に思いが出る。
何とかつながった。ピザファットの細胞がルカに適応しているらしかった。
顔に血色が戻ってきた。ルカの胸に顔を当てる。
ド・・・ク・・・・ド・・・ク
微弱だが心音がきこえた。だが、まだ意識は戻らない。
「頼む!生き返れ!生き返れ!」
「ピザファット!!!どこだ!!!」
エドガーの声が迫ってきた。
(まずい!ルカを安全なところに連れていかなくては)
ピザファットがルカを背負う。
その時、ハレイから通信が来た。
ー戦士たちにより占拠された集落は全て解放された!大型2台は現在フランコが足止め中!黒幕の姿は依然
見えず。ー
「イテテ」
エドゥが目を覚ます。
体全体が動かない。
(立て!こんなところで止まっている場合じゃない。)
動こうとする意志とは裏腹に視界がぼやける。
ー
「情けないわね。あんたそれでも男なの。」
地球にいた時の記憶が呼び起こされる。
彼女との出会いは大学のサークルであった。
第一印象は恐らくお互い良くなかった。少なくとも私の方はそうだ。
しかし、彼女の何事にも積極的に取り組む姿勢にいつしか私は惹かれていった。
彼女を狙っていた男性は多く、私は彼らに負けないように努力をしていた。-
・・ハッ!!
今は昔のことを考えている場合じゃないとエドゥが立ち上がる。
周りは焼け野原でエドガーはもうこの辺りにいないのが分かった。
(弾丸の予備を取りに行こう。今はそれしか対抗手段がない。)
フラフラになりながら歩く。
「エドゥ!!大丈夫?」
ネミが肩を貸してくれた。
「あんまり大丈夫とは言えないが、俺が乗ってきた船まで連れて行ってくれないか。」
「分かったわ。」
二人がその場を離れていく。
ピザファットがルカを治癒所に預けてきた。
治療班の話によれば、前例がないのでどうなるか分からないとのことだった。
今だにルカは意識を取り戻していない。
「とにかく、全力を尽くしてくれ!頼んだぞ!」
一旦その場から離れ、近くの森へと入っていった。
「ホラホラ~。どうした!勢いがなくなって来たぞ!」
フランコは大型2体を足止めしていた。
防戦一方で中々勝利への糸口が見つからない。
(せめて一体一体なら勝ち目があるんだが。)
「片足片手でよくここまでやれるもんだ。」
後ろからビームが飛んでくる。
それを避けるともう一体が銃撃をしてくる。
すんでのところで空気で足場を作り、軌道から外れる。
(ビームの速度には慣れた。後はこいつらを引きはがせれば・・)
地面を見るが、恐らく爆弾型が埋まっているだろう。
有効な手は悉く潰されていると考える方が良いとフランコは思っていた。
少し距離をおくと直ぐに周りを囲まれる。
戦いは膠着状態になっていた。
「ピザファット!!出てこい!俺と戦え!!!」
エドガーは上空からピザファットを探していた。
「発射!!」
エドガーに向けて何かが発射される。
「小癪な!」
ヒュウーーーーーーバーーーーン
火薬がさく裂し、暗闇に光がともる。
エドガーの目に煙が入った。
ギャアァァァ
ドラゴンが声を上げる。
そのままエドガーの巨体が地面に落ちていった。
バキバキっという音と共に地面が抜け、液体が注がれていく。
「どいつもこいつも!!!」
ドラゴンが火を吹いて戦士たちを牽制しようとした。
ボォォォっと液体に引火する。エドガーは全身に火が付いた。
「落とし穴も成功した!油にも引火した!!狙い通りだ。今だ回り込め!」
戦士たちがエドガーに回り込んで様子を窺う。
「姿が消えた?」
そこにエドガーの姿はなかった。
「げぇ」
突然戦士が一人地面に引きづられていった。
「地中だ!!エドガーは地中にいるぞ!!」




