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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
●完全閉鎖孤島ーキロネキシアー
3/491

●「襲撃」2/4

第3部隊、こちらは西にある森にいた。


一通り調査が終了し、少女に関する情報を集めた。


「よし。この情報は必ずエリアス様の役に立つだろう。」


馬車を走らせていると急に、荷車に衝撃が走った。


「なんだ、どうした。」


隊長が馬の様子を見に行く。


「ぎゃあああああ」


馬は皮膚がただれ、目が飛び出ておりとても見られる姿ではなかった。


「お前が隊長か?10秒やる、早く能力を見せろ。」


木の上から声がする。上を見ると約170㎝のローブを纏った男がいた。


隊長は直ぐに隊員たちに逃げるように指示をだし、荷車から降りて走って逃げる。


「10秒経ったぞ、時間切れだ。」


男の声が聞こえると同時に右足に激痛が走る。右足を見ると骨が見える。


「ぁぁぁぁぁぁ」


痛みに耐えきれず、叫ぶ。


「死ぬ前に能力を見せろ。東に向かった者は能力を持っているとしっかり確認済みだ。」


男は淡々という。


「わ、分かった。見せよう。」


隊長は激痛を我慢し、懐から煙草を取り出し火をつけ、くわえる。


「何をしている!さっさとしないと殺すぞ。」


「今見せてやる!」


彼は瓶に入った髪を整えるための油を頭の上から被り、煙草の火元を自分に近づけた。


火事となったその森にはしばらくこの世のものとは思えない断末魔が響いた。


隊長は跡形もなく消えた。




「時間稼ぎか、小賢しい。」


ローブの男は逃げた隊員たちを追う。


不幸にも天気が荒れ、雨が降ってきた。


命を燃やした火は鎮火してしまった。




「早く、この情報を、、」


「エリアス様に、、」




ざぁぁぁぁぁという音が聞こえる。


隊員たちは激痛を感じる。


「お前、髪が緑色になっているぞ!」


「目が~俺の目がぁ~」




ごくごくごく


ローブの男は水筒を取り出し、一人洞窟に潜む。


「そろそろか。」


彼は能力を解除した。


森を歩き回る、木々は枯れ果て、生物は死に絶えた。


馬車の残骸を探す。情報では10台。


既に1台は壊した。


荷車を見る、生きているものはいない。生物の原型をとどめているものはいなかった。


荷車を壊し探索を続ける。


残り8台


バキッ、バキッ、バキッ


あと5台


バキッ、バキッ、バキッ


2台


バキッ


残り1台


バキッ


ローブの男は仲間に連絡をする。




ー第3部隊 全滅ー




第3部隊が攻撃を受けている頃、第4部隊も敵襲に遭っていた。


紫のとんがり帽子、ローブ、杖 魔女と呼ばれる集団に襲われていた。


「矢を放てぇー!」


号令をかけると一斉に弓を引く。


[barrierer]


魔女たちは横一列になると呪文を唱える。


光の障壁が現れ、飛んでくる矢をはじく。


[firest]


障壁の後ろから巨大な火の玉がゴォォォォォと音を立て荷車を襲った。


馬がそれに驚き、逃げる。


後退しながら応戦していく。




ビュンと矢が飛ぶ。


[barrierer]


魔女たちが光の障壁を張る。


矢は突如姿を消し、そして一人の魔女の心臓を貫いた。


第4部隊は近くにいた第2部隊と合流していた。




第2部隊の隊長であるシュゼット、その能力は物の存在を5秒だけ消すことが出来るというものだった。


彼女がこの能力に気付いたのは、7歳の時だった。彼女はそれまで全く注目されることがなかったが、その能力が祝福だと分かると、周りの人々は歓喜し、彼女を尊敬の目で見るようになった。


しかし、彼女にとってそのことは全然うれしいことではなかった。


周りからの期待も重いし、祝福を持っているだけで抵抗軍に狙われる。


事実、彼女のいた村は抵抗軍に滅ぼされた。あまりにひどい有様であった。


それは食料から始まった。土壌が汚染され、農業を続けることが出来なくなった。


海も汚染され、魚を食べた村人は次々病にかかった。


無論黙ってやられたくはなかったので、抵抗はした。


しかし、彼女にはこの力をうまく使うことはできなかったのである。


物を5秒消すということは5秒後にそれは再び現れるということである。


つまり消えた位置に別の物を持ってくれば、5秒後にそれは重なって強大なエネルギーが生じるのである。


だから敵を5秒以内にその位置に誘導しなければ攻撃できないし、飛び道具を消すにしても5秒後に相手の元まで飛ばすという相当な技術が要るのである。


幼い彼女はその能力を上手く扱えず、目の前で両親を殺されてしまった。


命からがら逃げた先にあったのが、教会だったのだ。


来る日も来る日も能力の鍛錬をした。


抵抗軍を滅ぼす、それが死んでいった皆にできる唯一の罪滅ぼしだと信じて。




弓を引く。5秒後の矢の位置を想像する。


びゅんと矢が飛び一人、また一人と魔女の心臓を貫く。


第2、4合同部隊はその姿を見て、活気づく。


「皆!続けー!」


矢が魔女に降り注ぐ。


反撃が来なくなり、隊員たちは自分たちの勝利を確信した。






医学が発展した町パピルスにて、謎の患者が運ばれた。


「なんだ?外傷が全くないぞ。」


「息をしていない、心電図を取れ。」


その患者は心臓が止まっていた。念のために解剖をする。


「どういうことだ?心臓は綺麗だ!何の異常もない。」


医者たちはこの謎の症状について調べたが、結局何も分からず、この件については保留することにした。


その死体がピクッと動いたのを誰も見ていなかった。




魔女の一団を倒したシュゼット達は疲弊していた。


前方から何かが近づくのが見える。


「止まりなさい!止まらないと敵対の意志有りとみなします。」


「違います、私は味方です。」


震えた声で返事が返ってきた。よくよく見るとそれは女性であった。皮膚はただれ、髪は緑色に変色し、今にも息絶えそうな様子である。


シュゼットは過去のトラウマを思い出す。


(一緒だあの時と、)


目の前で殺された両親の姿が脳裏に焼き付いて離れない。瞬く間に顔が溶け、恐怖で声が上がらなかった。


しかし、今の自分は違う。エリアスの右手とまで称されるほどに成長したのだ。


シュゼットは逸る気持ちを抑えて彼女の話を聞く。


「雨音がしたんです。最初は皆何ともなかったんです。突然皆、」


彼女は震えながら話す。


「顔が溶けだして、、私は!死体になった仲間の顔を!」


彼女は吐いた。言葉にしなくてもその場にいた誰もが状況を想像できた。


彼女は仲間の皮を剥いだのだ。そして死体になったふりをし、生き延びたのだ。


彼女は漸く落ち着くと、シュゼットに大事なことを伝えた。


「第3部隊が掴んだ情報です。目的の少女は行商をして移動中とのこと、恐らく次の目的地は南西部の港町だと思われます。」


そう伝え終わると彼女の様子が急変した。咳がひどくなり血を吐きだした。シュゼットは彼女がもう助からないということを直感で感じた。シュゼットは最後に彼女を看取った。


第4部隊を情報共有のためエリアスの元へと向かわせ、自分たちは第3部隊が向かった西へと向かう。




ざぁぁぁぁぁと雨音がする。すぐに馬を雨の当たらない場所へと誘導する。


(近い!皆!敵討ちは必ず取って見せる!)


バクバクと心臓の鼓動を感じる。視界が雨でよく見えないのでしっかりと目を凝らす。


すると、遠方からローブを着た男の姿が見えた。


(くらえ!)


シュゼットは男に奇襲をかけた。弓を飛ばし、5秒間だけ存在を消した。


5、4、3、2


(とどめ!)


ガッツポーズを決める!が、男は知っていたかのように矢を避けた。


びゅんと男が先ほどまでいた場所に矢が現れそのまま飛んで行った。


男がこちらに気付き走って向かってくる。


今度は大勢で弓を射る。が、それも避けられてしまった。


ローブの男から何かが飛んでくるのが見える。


次の瞬間後ろから悲鳴が聞こえた。


隊員たちは瞬く間に溶けてしまったのである。

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