●「風の赴くままに」1/4
Ancient style
「この島の危機を共に守ろう。」
フランコがエドゥとピザファットに握手を求める。
「おいおい、ホイホイと信用していいのか?俺っちたちが嘘をついているとは考えないのか?」
「その時は、息の根を止めるだけだ、簡単なことだろ?」
「まぁ、とりあえずよろしく頼む。」
二人はフランコの手を握った。
さて、とフランコがエドゥの方を向く。
そして、深呼吸をして話を切り出した。
「まず、お互い協力するんだ。手の内を隠していては不都合も生じるだろう。信頼するという意味で俺の能力を伝えておこう。俺のアミュレットは簡単に言うと物質を液体、固体、気体に変化させるというものだ。」
「なるほど、俺が土に埋められたのは、土を一時的に液体にしてから、元に戻したからだったのか。」
エドゥは納得し、そして気になることを質問した。
「因みに何でも変えられるのか?」
すると、フランコは丁寧に能力の解説をしてくれたのであった。
「何でも変えることは出来るが、もちろん制限はある。まず、俺の体が触れているか、何かを媒介していなければならない。」
「それは、肉体も含むのか?」
「あぁ、よく俺なんかは自分の体を変化させて防御する。しかしだ、液体にすると微妙に体がずれていくし、気体になると意識は5秒しか持たないという弱点がある。」
ピザファットが今度は口を開いた。
「よっしゃ!次は俺っちの番だぜ!」
「再生能力だろ?」
「OH!」
エドゥはピザファットの能力については何となく見てきたので、説明を省くことにした。
不満そうなピザファットを適当にあしらっているとフランコが
「それで、エドゥ。お前の能力は何だ?」
といった。
「いや、俺に君らのような特殊な能力はないよ。強いて言うなら、武器を持っていることと、体が少し浮くってことぐらいだ。」
「十分だと思うが。浮くのは条件があるのか?」
「いや、勝手に浮いてしまうんだ。」
この惑星が地球より重力が軽いからと説明しようかエドゥは考えたが、面倒だったので説明はしなかった。
「今は浮いていないようだが?」
当然予想した質問が返ってくる。
「あぁ、今は重りを服に入れているからね。これがないと浮いてしまうんだ。」
「なるほど。ところで、そっちの武器はどんな感じなのかちょっと見せてくれないか?」
エドゥは銃をフランコに手渡し、使い方を説明する。
「ふむ。外ではこんな技術があるのか。弾はあと何発あるんだ?」
「今は3発しかないが、予備が宇宙船にある。」
「そうか。」
フランコがそう言いながらピザファットの方を向く。
「おい、起きろ!」
フランコの大声で、ウトウトしていたピザファットの体がビクッとなった。
「なんだよ!大きい声出すんじゃねぇよ!」
ピザファットは欠伸をしながらそう言った。
「普通このタイミングで寝るか?」
呆れるフランコにピザファットは堂々と
「夜に寝るのは当たり前じゃねぇか?寝ぼけとんのか?」
と返したのだった。
フランコはカチンときていたが、気を取り直して話を続ける。
「エドゥ、この通りこいつはいい加減だ。だが、やるときはやるはずだ。信じてやってくれ。」
そういうと、エドゥは苦笑いをして
「あぁ、数日一緒にいたから何となく分かるよ。」
と、再び横になった自分を相棒と呼ぶ男の方を見ていた。
「さて、互いの自己紹介が終わったところで、次はこれからの作戦を立てなければな。」
「あぁ、恐らくあと数時間で脱走に気付かれる。そうすれば俺は命を奪われるだろう。」
「そうだな。そして、お前が死ねば侵略者は恐らくしばらく身を潜め、じわじわとこの島にいる全員を思い通りに動かすだろう。」
「こっちは命を狙われるってのに、誰も殺さず黒幕を見つけなければいけない。」
「そうだな。お前を信頼させなくては黒幕の存在を伝えることが出来なくなる。」
「なかなか厳しいな、銃だけで果たして出来るのか。」
二人が作戦を立てていると、今まで寝ていたと思われるピザファットが急にガバッと体を起こし、
「風体術ふうていじゅつだ!」
と、まるで今までメロディーしか分からなかった歌の名前が出てきたように嬉しそうに言った。
「風体術?」
エドゥは初めて聞く言葉に首を傾げた。
そんなエドゥにフランコが説明をしてくれた。
「何でも古代からエルフに伝わっていたとされる戦闘術らしい、風を利用することで通常よりも何倍もの力を引き出せるとか。」
「どうして、伝聞系なんだ?」
「この島にはほとんど記録が残っていないからだ、里に行けば、、あっ。」
途中まで言うとフランコが口ごもってしまった。
そんなフランコを見てピザファットがため息をつく。
「はぁーーーー。お前、今更隠したって意味ないだろう。こいつは信頼できる。それに、どうせすぐ殺せるんだろ?」
「あぁ。そうだな、すまなかった。つい癖でな。」
エドゥは置いてけぼりをくらっていた。
「別に無理に聞く気はないけど。」
「いや、いい。聞いてくれ。」
フランコはそういうと、エドゥにエルフの過去を話し始めた。
「俺たちは絶滅を避けられたが、里が今どうなっているのか誰も知らない。里には色々なものが取り残されているんだ、風体術もそのうちの一つだ。」
エドゥは、エルフをここまで追い詰めた連中に怒りを覚えていた。
「ひょっとすると、黒幕の目的っていうのは・・・」
「・・・かもしれないし、別の目的かもしれん。」
「まぁ、捕まえてゲロらせちまえばいい話じゃねぇか。俺っちたち3人がいれば出来るさ!」
3人が互いを見る。なんの根拠もないが、不思議と出来そうな気が3人ともしていた。
「おっと話を戻すが、」
フランコが話を再開する。
「ピザファット、風体術がどうしたっていうんだ。」
「相棒に風体術を身につけてもらうんだよ!」
エドゥは頭が混乱してきた。
「ピザファット、その失われた術をどうやって身に着けるんだ?」
当然の疑問を口にする。
「二ヒヒ!実はな・・ハンナおばあちゃんから少しだけ教わってたんだよ!」
ピザファットの言葉にフランコが驚く。
「何?お前今までそんな技使ってこなかったじゃないか。」
すると、また堂々とした態度で
「そりゃ使えないからな、修行とかめんどくせぇからしなかったし。でも、やり方だけは知っている。」
と言ったのであった。
「ピザファット、でも時間はあまりないよ。」
エドゥが不安そうに尋ねる。
「心得そのいち~!どんな時でもポジティブに!はい!復唱!」
「どんな時でも。ポジティブに・・」
ピザファットの変なテンションに圧倒されて、エドゥは呆気にとられた。
そんな二人を見て、フランコは微笑ましく思っていた。
「よし、どれくらい時間があるかは分からないが、二人は修行をしていてくれ、俺は戦士たちに協力を要請してくる。」
そういうと、フランコは外へと出ていった。
フランコを見送ると、ピザファットは神妙な顔つきになりエドゥに話しかけた。
「相棒!絶対に黒幕を見つけ出して、皆を守ろう。そして、外の世界に行こう!」
そして、手を差し出した。
エドゥはその手を握り。
「あぁ!」
と力強く言った。
「よし、それじゃあ。早速始めるぞ!」
「ここでか?」
「下手に外に出ると見つかっちまうからな。基本をここでたたき込み、後は実践で慣らせばいいさ。」
「分かった。」
「よし、最初に大事なことを教えるぜ!守破離って知ってるか?」
エドゥは首を横に振る。
ピザファットは紙に守・破・離の文字を描いた。
「まず、守っていうのは指導者の教えを守るってことだ。そんで、守の段階ができたら、教えを破って工夫してみる破の段階に行く。そして最後の離の段階で指導者から離れて相棒なりの新しい風体術を発展させていくってことだ、ここまでOK?」




