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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
⚙︎機械仕掛けの神ー超大陸バンギア北部「医学都市 パピルス」ー
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⚙︎「My Foolish Heart」3/4

私は唖然とした。

さっきまで私が使っていた机は?椅子は?

本棚は何所だ?

それだけではない。

今まで稼いできた金は?


「警告を無視したな。不敬である。」


私は土の塊に取り押さえられた。


私の前に複数の信徒たちが現れる。


その中の一人が、手を伸ばしてきた。


(なんだ、手に傷が?)


手に釘を打ったような跡が見て取れた。


グィ


そんなことを考えている場合ではなかった。

私は突然胸倉を掴まれた。


「今から質問に答えてもらう。」


なんだ。本当になんなんだ。

私は、能力を使い過去を覗こうとした。


ーー


だが、上手くいかなかった。


(こいつ、恐らく何かの能力者だな!)


「余計なことをするな。そうすれば痛い目を見ることはない。例えば!」


そういうとその信徒はいきなり私の首を絞める。


「うっ。」


私は暴れた。信徒の手を必死に叩く。


「過去を覗ける能力で、俺の過去を見ない限りは!!」


ぱっと男は手を離した。


「ゲホッゲホッ!!」


私はすぐさま空気を吸う。


「天使様、準備が整いました。」


私を掴んだ男が後ろに下がる。

再び私は土の塊をした何かに拘束される。


ブォォォォォオオオオン!!


激しい音が鳴る。


それと同時に信徒、怪物たちは跪いた。


(天使か……話だけなら聞いたことがあるが、実際に目にするのは初めてだ。一体俺に何を聞こうというんだ。)


考えても仕方ないので、私は大人しくしていた。


やがて、遠くからこちらに向かう一つの影があるのが見えた。


(いやらしいやり方だ。直ぐにこないでこちらに緊張感を持たせたいのか?)


事実私は、今色々な推測をしている。

能力を使えば直ぐに疑問は晴れるだろう。

だが、そんなことをすれば直ぐにこの土の塊に殺されるだろう。

こいつらは単純に力が強い。

その気になればすぐにでも私を殺せるだろう。

早く来い!


私は少しいら立ってきていた。


「力天使、レックス=ネーロ様の御前である。頭を垂れよ。」


コクリ


私は言われた通りにした。 


やがて天使 (どうやらレックスというらしいが……)が目の前に現れた。

何の因果か知らないが、天使と対話できる機会などもう二度とこないだろう。

この瞬間をしっかり目に焼き付けたい。

天使の姿は、どんなものだろうか。


しかし、周りにいる土の塊がそれを許さなかった。

私は頭を強く押さえつけられる。


【神の名のもとに!!】


突然、天使は大きな声を出した。


「「「「「神の名のもとに!!」」」」


周りの信徒たちも同じ文言を繰り返す。


【ウィリー=ブロッジーニ。エドワール=コクトーという男を知っているか。】


私は、人の名前を覚えるのが得意でない。

さて、エドワール。エドワールか。


ー「それで、あんたの名前は?」

「コクトー、エドワール=コクトー。」ー


あいつか、ポーションの材料を探していた青年。


「知っているわけじゃない、依頼人として会ったことがある程度だ。」


ポタリポタリ


私の顔から突然血が噴き出す。


【ベネデッタ、よせ。それでは肝心なことが聞けなくなってしまう。】

「はっ、申し訳ございません。しかし、言葉遣いがなっていなかったもので。」


はぁー。はぁー。


突然大量の血が抜けたからだろう、意識が朦朧としてきた。

どうやら敬語で話さないといけないらしい。

些細な事でも奴らの気に触ったら、殺すまではいかないにしろ今以上のことをされるわけだ。


「はぁ、はぁ。申し訳ない……。その男については何も……。」

【アデーレ。彼が言っていることは本当か?】


レックスに話しかけられた女性の信徒が頭を上げる。


「はい。」

【では、あの"樹"の情報を奴に渡したのは間違いないということか……】


なにやら勝手に話が進んでいるようだ。


【奴は今どこにいる?】

「はぁ、はぁ……何しろ。はぁ、何日も前のことですから……はぁ。」

【神樹の位置を教えたのだろう。それはどこだ?】

「ポータム・ポート、その街の郊外にあります。」

【なるほど、協力感謝する。】


ブン


レックスは剣を振り上げた。


「な!?」


さすがに私も声が出た。

ここは、解放される流れだろ!?


【神樹に到達できるその能力。野放しには出来ん!!今回のように悪用されればどれだけの民を危険にさらすか!!選べ!!ここで死ぬか、監獄アジカトラルで余生を過ごすか!】


だめだ、こいつは聞く耳を持たない。

どちらの選択肢を選んでも二度と自由は手に入らないだろう。


「ちょ~~~~っと待った~~~~。」


群衆の中から一人の男が飛びだしてきた。

男はそのまま私と天使の間に割って入ってきた。


バッ


反射的に複数の信徒たちが男を押さえようと飛び出した。


【お前たち、止めろ!!民を傷つけてはいけない!】

「「「「はっ!!」」」」


信徒たちがその場で止まる。


「おぉ~~~こえ~~。」


男はおどけていた。


【それで、どんな用件でしょうか?】


レックスはそれまでとは異なった態度をとる。


「いやね。どうも話だけ聞いてると、この人そこまでするような悪い人なんかね。」

【彼のせいで、多くの民が危険にさらされるかもしれないのです。】


くるりと男は私の方を向く。

「ポータム・ポートってさっきいったよね。」

私は頷いた。

「あっちゃ~。いやね。俺そこで宿やってんだぁ。うちのかみさんもそこにいてさ。」


男は今度は天使の方を向く。

「おたくらの力は強大だけど、人の捜索には向かない。でしょ?」

(確かに、街中で暴れるわけにもいかない。それに、こんなに大勢では遠くからでも目立つだろうな。)

私はしばらく男の話を黙って聞いていた。


【なにがおっしゃりたい?】


「俺とそこのあんちゃんでその男を捕まえる。」


「なっ、いきなり何を!?」


男の提案に驚いた。だが、確かに合理的かもしれない。

問題となっているのはその神樹とやらの情報を青年に渡してしまったことだ。

青年を捕まえれば天使が危惧していることは起きないだろう。


【いいでしょう。本当にそれが出来るというなら。】

「あーーっと、出来たら一つお願いが。」


ザッ


信徒たちが今にも襲いそうな雰囲気を醸し出している。

下手なことを言えばころされるぞ!!


【なんでしょう?】

「事件が解決したらあんちゃんのことを放っておいてやってください。」


この男、私が今一番気にしていた。先のことまで考えていてくれたのか。


「あんちゃんもその樹がらみの話は今後口にしないって約束できるよな。」

「あぁ、もちろんだ。」

「まぁ、こう言ってるんで。もし約束破ったらそん時は好きにしてください。」


【……】


レックスはしばらく考え事をしているようだった。

そしてしばらくの沈黙が破られる。


【いいでしょう、その条件呑みましょう。ですが、こちらも条件を提示させていただく。】


ゴクリと私は息をのんだ。

天使が出す条件。嫌な予感がする。


【1週間以内です。その期間を超えたら全てこちらの指示に従っていただきます。】


「いやぁ、よかったなあんちゃん。」

男が私の肩をバンバン叩く。


(ひとまず、良かった。まだ何とかなる。)


私はほっと溜息をついた。


【今我々は神のもとで契約した。無下にしてはならないこと、ゆめゆめ忘れないで下さい。】


そういうと天使たちは去っていった。


「ありがとう、あなたがいて助かった。名前をお伺いしても?」


私はお礼を言う。


「俺?俺は、あー。トミー=ホーカンソンってぇの。よろしこ。えーっと。」


「ウィリー=ブロッジーニです。よろしく。」

「あぁ~。硬いねぇ、もっと砕けた感じでいかないと疲れるよぉ~。」

「じゃあ改めて、ウィリーだ。よろしく。」

「いいね、そうこなくっちゃ。よろしこ。」


僕とトミーは固い握手をした。


「じゃあ早速行こうかぁ。馬車に乗ってけば半日でつくよぉ。」

「あぁ。」


そうして私たちはポータム・ポート。

この街に向かっていったのだった。




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