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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
✟眠れる聖剣と神秘の森ー超大陸バンギア北西部最奥部「神秘の森 カティー二ャ」ー
110/495

☥「The End of the World」1/3

A final showdown

ギギギギギギ


「おいあれ見ろよ。何かが覗いてるぜ!」


ピザファットが空にあいた穴を指さした。


確かに何か赤い瞳のようなものがこちらを覗いていた。


バシャ―ン


赤い瞳が穴から離れたと思ったら今度は、骨がむき出しになった手が穴から出てきた。

といっても穴は小さいので人差し指が少しだけ出てきただけだったが。


「何だありゃ!?あれが山の老人ってやつなのか?なぁ相棒?」

「うるさい。今どうすればいいか考えているんだ。」


人差し指が作る影が森に映った。

その部分がいきなり激しい音を鳴らし崩れていった。


「ギャアア!あんなのもうどうしようもねぇ!逃げようぜ相棒。」

「駄目よ。あんなの放っておいたら世界が終わるわ。」


人差し指が右へと動いていく。


それと連動し影が動いていき、森が崩壊していく。


「あの影の中にいるものは全て滅びる。そう考えるべきだろうな。」

「なぁ!絶対無理だって!あんな巨体が作る影なんて相当なもんだろ!?とっとと逃げねぇと皆死ぬぜ!」


人差し指が動いていく。


「とにかくここから離れよう。あの影はいずれこっちに向かってくる。」

「オクタビアを助けにいかないと!」

「待てナタリー。どこにいるか分からない以上、止めるべきだ。」

「そんな!?」

「わりぃけど相棒の言う通りだぜ、嬢ちゃん。きっともう逃げてるって。」


「行くぞ。皆逃げるぞ!」

「皆、先に行ってくれ。」

「マクシモヴィッチ……」

「頼む。」

「……分かった。」


エドゥ達は走り始めた。


マクシモヴィッチはアルカディエヴィチの前に来た。


「これがあんたの望んでいたことなのか?」

「そうだ。これが100年の我らの悲願だ。」

「さっき無駄だっていってたけどさ。やっぱりあんたの口から直接聞きたいよ。どうして永遠の命や楽園のために家族を捨てられる?」


アルカディエヴィチはため息をつく。


「本当はお前もこっちに来てほしかった。」


アルカディエヴィチは語り始めた。


アルカディエヴィチの父、セルゲエヴィチは聖剣をサンシャシャからだまし取った。

そして、エルフ族との戦いに聖剣を使い、サンシャシャの怒りを買った。

セルゲエヴィチは生命をサンシャシャに吸われたのだ。


はじめに光を失った。

それから記憶。

そして寿命。


「それほどまでに、罰を受ける必要があったのだろうか!母はエルフ族に殺されたのだ!その怒りをぶつけて何が悪い!」

「……」


マクシモヴィッチは黙ってアルカディエヴィチの話を聞いていた。


「あれは皆が崇める神などでは決してない。傲慢な一匹の山犬にすぎん!」

「あの空に見えるものが本当の神だと?」

「その通りだ。私は楽園であの神に出会い、この能力を授かった。全ての物の魂を奪うこの能力を。」


アルカディエヴィチは毎日葡萄だけを食べ続け、穴にこもり"山の老人"に信仰を捧げてその命を絶った。


それが影響してかは知らないが、彼はやがてリビングデッドとして再びこの世に生を受けたのだ。


「私は楽園をこの世に生み出したいと願った。そしてもう二度と失われない家族を作るのだと。」

「……分かった。理解はした、だが納得はしない。」


マクシモヴィッチはアルカディエヴィチの目をしっかりと見て言い放った。


「永遠ってのはさ、確かに素晴らしく感じるかもしれない。」

「でも限られた寿命だから、皆との思い出がより大事で愛おしく思えるんだ。」

「誰かを殺してまで永遠を手に入れたって楽しくないさ。俺はそう思う。」


「分からないな。最後があるのは悲しいことだ。どんなに楽しさを得たとしても最後には悲しさで終わる。お前に分かるか、最後に父から見向きもされずに終わりを迎えた私の気持ちが!」


2人の親子が互いに睨み合う。


「時間だ。私はこの身を神に捧げ一体化する。」


アルカディエヴィチが最期にマクシモヴィッチに近づいた。

そしてその手でマクシモヴィッチの頭に触れた。


「マクシモヴィッチ、たとえ新しい家族を作ろうともお前達が家族だったことは決して忘れない。」

「俺もたとえ、あんたが大勢を奪った極悪人でも家族だったことは忘れない。」


二人は背中を向け、それぞれの道へと向かっていった。


アルカディエヴィチは人差し指の影に入る。

既に死んでいるその体は滅びることはない。


アルカディエヴィチは自らの能力で自らの魂を抜き取った。


「さぁ、共に連れて行ってくれ!」


アルカディエヴィチの魂が空へと昇っていく。



「ぜぇ、ぜぇ。相棒!もっとゆっくり走ってくれ~!」

「駄目だ。いい運動になると思って走れ。」

「あ!そうだぜ!鎧を着れば楽に走れるんじゃねぇの?」

「メンテナンスしてないからどうなっても知らないわよ。」

「あっ、そう。止めとくぜ。」


マクシモヴィッチが3人に合流した。


「待たせた。」

「あぁ。」


エドゥはなにもマクシモヴィッチに尋ねなかった。


ドドドドドドド


激しい音を立てながら森が崩れていく。


「相棒!影がこっちに近づいてくるぜ!」

「まずい!あの大きさじゃすぐにこっちに来るぞ!」


ドドドドドド


次々と木が消えていく。


「arrrrrr」


エドゥの前にゾンビ達が目の前に現れる。


「やっべー!こいつらのことすっかり忘れてたぜ!」

「今相手してる場合じゃない!迂回するぞ!」


ドドドド


音が近づいてきていた。


「相棒!だめだ!逃げられない!」

「見て!影がもう迫ってる!」


ドドドドド


ドドドドド


ドドドドド


ドドドドド


…………

…………


エドゥ達は全滅した。


それはほんの一瞬の出来事。


あぁ、彼らの物語はここで終わりを迎えてしまったのだ。





「起きて。起きてくれ!」


どこからか声が聞こえる。


「うっ?俺は?」


エドゥは目を覚ました。


「良かった。目が覚めて。」


エドゥの前にはオクタビアを担いできたノナジがいた。


「あんたは一体?」

「俺のことはどうでも良い。それより皆を生き返らせてくれ。」


ノナジは右手がなくなっていた。


「あんた、聖剣を触ってそうなったのか?」


エドゥが警戒する。聖剣を触れないということは目の前の男は不死者、つまり敵だということになる。


「誤解しないでくれ。確かに死なないけど君たちの敵じゃない。」

「まぁ、手を犠牲にしてまで俺を生き返らせたってことは敵じゃないんだろうな。」

「よかった。分かってくれて。」


「それであんたは俺を生き返らせてどうしたいんだ?」

「あれを見てくれ。」


ノナジは上空を指さした。


「!?」


エドゥは驚いた。


自分が死んでどれくらいたったか知らないが、空に開けられた穴が広がっていたのだ。

先程まで人差し指の第一関節が出る位の穴だったが、今は片腕が出るぐらいまでの大きさになっている。


「あそこまで俺と一緒に行って欲しい。」

「何?」


エドゥはノナジの方を見る。


「俺の能力ならあの穴を塞ぐことが出来るかもしれない。」

「そうなのか。だが、影の中に入ったら即死するぞ。」

「俺は大丈夫だ。死なないからな。そして君も死なない。」

「ん?どういうことだ?」


{カーハッハッ!察しが悪いな!}


突然聖剣からサンシャシャの声が聞こえる。


{つまりだな、こうするんだよ!}


聖剣がエドゥの手から離れ勝手に動き出す。

そして、刃先をエドゥの心臓に突き刺した。


{どうだ、俺様の能力で常に生命のエネルギーが循環するようにしてやった。}

「なるほど、流石ですね。」


{おい、そこのノナジとかいう小僧に伝えろ。確かにお前の能力は役に立つだろうが……}


サンシャシャの言葉をノナジに伝える。


「なるほど、それじゃあこういうのはどうですか……」

{……確かにそれで理屈としては良いだろうが……本気か?}


「……分かったその作戦で行こう……。」


こうしてエドゥ達は最後の戦いを始めるのだった。

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