✟「反逆への兆し」3/4
ビリビリビリ
マクシモヴィッチが一歩一歩シーラに近づいていく。
「……この!」
シーラはどうすることも出来ないのか、砂を投げてきた。
だが、その目くらましは全て弾かれる。
「シーラ!今助けるわ!」
「おっと!させねぇぜ!」
カーラとピザファットも激しい攻防を繰り広げていた。
-親和性 20% 安定してるわ、そのまま維持して!-
離れたところからナタリーがピザファットに通信をしながら戦っていた。
「邪魔するな!」
ピザファット目掛けて釘が飛んでくる。
「予定と違うが、何とかなりそうだな!」
装甲を纏い釘を防ぐ。
-装甲にダメージが溜まってるわ、あまり攻撃を受け続けないようにして!-
「分かったぜ!」
ピザファットは飛んでくる釘を避けカーラに近づいていった。
「シーラ!逃げて!」
姉の叫ぶ声が聞こえたがシーラは逃げることが出来なかった。
(痺れて……動けない……!)
シーラは電気が体を巡っていた。
「お前達にはまだ聞きたいこともあるからな。気絶で済ませられればいいんだが。」
マクシモヴィッチはシーラに拳を一発お見舞いした。
ドカー――ン
激しい雷のような一撃。
シーラは気絶しその場に倒れた。
「シーラ!!!」
カーラが激しく動揺する。
「さぁ、残りはあんただけだぜ!」
「この。妹を苦しめて絶対に許さない。」
カーラが激しく睨んできた。
「来るか!?」
ピザファットは構える。
しかし、カーラは襲い掛かる様子はなく、いまだ雨が降り続ける森の方へと逃げていった。
「何とかなったみてぇだな。」
ピザファットは鎧を外す。
「その子どうすんだ?」
「ちょっと悪いが手を縛らせてもらう。能力で反撃されると厄介だからな。」
マクシモヴィッチがエドゥの方を見る。
「影を取り返してくれてありがとうな、エドゥ。」
「ん?今”エドゥ”って言ったか?」
マクシモヴィッチはそれ以上何も言わなかった。
エドゥは気が付くとモノクロの世界にいた。
雨が降っている。
ずぶ濡れになる前にどこか雨宿りが出来る場所がないかを探した。
少し離れたところに大きな木が見える。
そこへ歩いていく。
木の下には机がポツンと置いてあった。
7つの椅子が隣接して並べられている。
(椅子はまだ並べられそうだな。)
何となくそんなことを思いながら一番古そうな椅子に座った。
ポタリポタリ
葉の間から雨粒が滴り落ちる。
エドゥは机の表面をなぞる。
ザラザラしているがどこか優しいような肌触りだ。
「いつもは雨なんか降らないんだけどね。」
急に声が向かい側から聞こえ、びっくりした。
「ウィリー……だよな。」
「うん、間違いない。君がいつも話しかけるウィリーのことを指しているならそうだ。」
「ややこしい言い方をするな。」
「まぁ、僕自身既に死んでいる存在だ。果たしてこれは生きていた頃の僕と同じ存在といえるのだろうか?」
「哲学だな。記憶があるんだろ?それならお前はウィリーだろ?」
「そう……か。記憶があればね。」
エドゥは一瞬止まった。
「まさか……ないのか?」
ウィリーはそっと首を縦に振った。
「嘘だろ?じゃあ、あの殺人鬼のことは何だったんだよ!」
「あれは覚えてる。ただ、それしか覚えてないんだ。」
「マジか。」
「うん。」
「ところで、7つ椅子があるってことは他の人もいるんだよな。」
「あぁ、皆本当にたまにだけどここに来るよ。」
「ウィリーは?」
「僕はいつもここにいる。君が語りかけてきたときに答えられるようにね。」
「それは何かすまない。」
「別にいいよ。僕が好きでやってることだからね。」
ほわぁ~ん
エドゥの体が消え始めた。
「またしばらくお別れだ。いつでも話しかけてくれていいよ。」
「悪い、行ってくる。」
「あぁ、行ってらっしゃい。いつか流星群が見れるといいね。」
「どういう?」
ウィリーの答えを聞く前にエドゥはその世界から消えた。
パチリ
次に目が覚めた時、エドゥはダークエルフの里にいた。
「ここは?」
「おぉ、相棒!最近よく気絶してんな!?」
「寝起きにお前の顔を見るなんて最悪だな。」
「ひっでぇな!おい!」
「ここは俺の家だ。」
マクシモヴィッチが奥から箱を持って出てくる。
「それは?」
「いいか、これを絶対に誰にも見せるなよ。」
パカッと箱が明けられた。
「何だ?」
箱の中にはボロボロな本が埃をかぶっていた。
パンパン
手で埃をはらうマクシモヴィッチ。
「なになに?"風体書"って書いてあんのか?」
「エドゥ、お前の必殺技とかいうやつ。どこで覚えたかは知らないが。全てのルーツはここにある。」
パラパラパラとピザファットがページをめくる。
「そういやさっき、お前も似たような技を使ってたよな。」
「そうだ、あれもこの本から学んだ。」
「でもよぉ、相棒のとお前のは全然違ったよな。」
エドゥはマクシモヴィッチの方を見る。
「どういうことだ?君も風体術を?」
「あぁ、そうだ。」
すぅうううう
マクシモヴィッチが大きく息を吸う。
ビリビリビリ
電気が彼の周りを走る。
「うぉっと!」
「これが風体術。禁じられた秘術だ。」
「禁じられた?」
「まぁ、今その話はいいぜ。それよりこれが聖剣とどう関係があるんだ?」
「俺の爺さんが山の守り神に会った最後のダークエルフなんだよな。」
「あぁ、そう聞いてる。」
「なら婆さんから聞いた話は本当だったわけだ。」
「どういうことだ?」
マクシモヴィッチが昔話を始めた。
ーマクシモヴィッチ=バビチェフのお爺さん。
名をセルゲエヴィチ=バビチェフ。
山の守り神サンシャシャと最後に会ったダークエルフ。
彼が生きた時代は激動の時代。
まだエルフ族とダークエルフ族が共存していた時代。
ダークエルフとエルフはある事件をきっかけに対立をしてしまう。
その時にセルゲエヴィチはサンシャシャを騙し聖剣を勝手に持ち出してしまった。
ダークエルフ族は聖剣の力をかりエルフ族を次々と斬っていた。
サンシャシャはそのことに大層怒った。
セルゲエヴィチから聖剣を没収し、その身に呪いをかけたのだ。
彼はそれから二度と姿を現さなくなった。
サンシャシャは二度と同じことが起きないように聖剣を台座に戻し、何人も台座に近づけないようにした。ー
「この風体書はかつて守り神とエルフ達が作り出したもの。守り神は全ての風体書を焼き払ったが、この一冊だけは運よく残った。これが何を意味するか?」
「聖剣に辿り着くためには風体術がいるってことか?」
マクシモヴィッチが頷く。
「そうだ。しかし、ただの風体術では駄目だ。風体術の究極奥義じゃなければ神による妨害を防げないだろう。」
「究極奥義?なんだそりゃ?」
「この焼かれているページにあるこの言葉。」
エドゥが風体書をめくり、一つのページを指さした。
「天衣無縫 風〇、〇雷、〇〇、〇〇、〇〇 」
そこにはそう記されていた。
「なんだこれ?」
「俺もページが切れてて最後まで読めなかったが今分かった。長老がどうしてお前たちにこだわったのか。」
「そうか、ウィリーの力を使えば、 破れる前のページが読める!」
「マジか!早速やってみろよ!相棒!」
エドゥは風体書の破れたページに左手をかざす。
過去の記憶が流れてくる。
「そうか、そういうことだったのか!」
「どういうことだよ?相棒!?」
「マクシモヴィッチ、一緒に来てくれ!ピザファットは……どっちでもいいや。」
「おい!」
「待った。暗殺者の方はどうする?」
3人は柱に括り付けたシーラの方を見る。
「まぁ、手は縛ってあるし俺っちが見張ってるぜ。」
「分かった。それじゃあ頼んだぞ!」
エドゥはマクシモヴィッチを連れて森の中へと入っていった。




