旅の始まり 勘違い
「あっ、」
リリィは『違う!』『違うから!』と心の中で思ったが、勘違いしている様子なので、流れを見ることにした。
「僕はね、君みたいな優しい子に出会えて良かったと思ってる。だけど、まぁ、見ての通り、ある程度の魔物は問題ないはずなんだ。ただ、スライムの倒し方がまだ良くわかってなくって。あの時も半日以上試行錯誤して、体力を失っていて・・・」
「えっ??半日以上も?」
リリィは単に囲まれて、ボコボコにされているだけだと思っていたし、まさか、あの大所帯相手に、普段着のままで、半日以上戦っていた体力に驚いた。
「僕はね、ずっと夢があるんだ。だから、今回の旅も僕なりにトレーニングはしてきたし、いろいろ考えて用意もしてきた。そして、最初の森で、君に助けられた。運命だって思った。縁があるんだって。勘違いでもなんでもいい。でも、僕の女神さまが助けてくれたって思っている。それに、感謝しているんだ。もしかしたら、足手まといかもしれないけれど、一緒にパーティーを組んで、正式に王国まで旅をしてもらいたいんだけど、ダメかな?」
どこまで勘違いしているのやら・・・。とリリィは内心複雑な気持ちなのと、なぜか、わからないほどの気もちを突然に受け取ってしまって、気持ちが胸のあたりまでこみあげてきている。
優しさに溢れているし、率直に告白してくれちゃっているし。その想いに嫌みがなくって、すがすがしいぐらいの気持ちにしてくれる。
足手まといだなんて、とんでもないぐらい強さを感じるし、何よりも心が広い人なんだと直感している。
「あっ、あの。私なんかで良ければ・・・」
「ほんと?ほんとうに??」
リリィは内心、騙しているような気持にもなるし、こんなに強い人なら、スライムだって倒せるだろうに・・・。なんだか腑に落ちないことが山ほどある。
新手のナンパなんだろうか・・・。優しすぎるのと、心が広すぎるのと、それらをひっくるめての怪しさもある。
でも、今、サハギンから救ってくれたのは確かだし、悪い事されるなら昨日の時点でされてるだろうし、、、あー、なんか考えるのも面倒になってきた。
旅は道連れって言うから、いざとなったら、パーティーを解消しよう。
「うん。改めて、よろしくお願いします。」
「やった!」無邪気に飛び跳ねるリラクの姿がある。
「ねぇ、いろいろ聞いてもいい?今後のために・・・」
リリィはどうしてもはっきりさせておきたかった。