旅の始まり 意外な実力
倒れたサハギンの傍にはリラクが立っていた。
片手には、石を持っている。
一瞬のうちに、周囲のサハギンが後ずさりする。
何が起きたのか分からないのだ。
そして、注目が集まる。
ゆっくりと、リラクが石をもって、振りかぶる。
ビュシュゥゥゥゥゥ~、と。
一挙手一投足を見逃さないようにしていたが、あまりのノーコン具合に、石の行方を気にしてしまった。
そして、再び、
『グキッ』
リリィは見ていた。
リラクの動きを見ていた。
そして、一瞬のうちに、彼はその倒れたサハギンの傍らに立っていたのだ。
間違いなく、何かしらの方法で、彼がサハギンを倒したに違いない。
きっと、とんでもなく、すごい武器か何かを持っているのかもしれない。
ただ、それが、なんであるのか、リリィには理解できなかった。
リラクがこちらを見ながら、にっこりと笑っている。
「ほら、大丈夫だろ」
と言いながら。
唖然とした顔をしていたんだと思う。
リラクの顔がニコニコして、私のことを、もてあそんでいるかのような顔に見える。
「1つ。大抵の魔物や生き物は、胴と頭が離れると、、、つまりは、首をやられると、生きていられない。」
「なお、スライムには、首がない。」
リラクは、リリィに向かって話をしていて、背後にいるサハギンたちを無視している。
そのサハギンは、今がチャンスとばかりに襲い掛かってきた。
『ボキッッ!!』
ギャッ、ギャッ、ギャッ・・・。
転がりまわるサハギン。
「2つ。関節あるものは、必ず限界がある。つまりは、壊れる。」
「なお、スライムには四肢(手足)がない。関節もない。」
気を失ったのか、転がりまわっているサハギンは動かない。
残り2匹。
なりふり構わず、同時に襲い掛かってきた。
リラクは特に動いた気配はないようなのだが、足元に2匹とも倒れている。
リリィでは、目に見えないのだ。
決定的で、強力な武器は今のところ見えない。
「3つ。脊椎がある生き物は、脊椎を攻撃されて、神経をやられると生きていられない。」
「なお、スライムは当然のごとく、脊椎(背骨)などは、ない。」
「僕はとっても、スライムという生き物が苦手なんだ。」