旅の始まり 水際の再会
翌朝、考え事をしている内に寝込んでしまっていたことに気が付いた。
隣の部屋に宿を取ったリリィの姿はなかった。
そればかりか、路銀もすべてくすねられていた。
「やっぱりか・・・」
内心、そうなるような気がしていた。
だからといって、咎める気持ちもそんなに沸いてこなかったのは、自分の手の内の中にまだあると確信出来ていることと、そのほうが、後々、都合が良くなると直感しているからだ。
とりあえず、宿の代金は前払いしてあるので、早々にチェックアウトして、次の街を目指そうと思っている。もちろん、この道のりは、彼女も歩いているに違いないからだ。
川沿いに進んで、湖を抜けた先に次の街がある。
一本道だし、たいした距離もない。
ただ、この街で色々と見たかったのだが、自分の路銀がないので、次の街のギルドで調達の必要があった。移動手段を買う予定だったのだが、ここからも歩きが決定してしまったのは残念だ。
しばらくいくと、悲鳴が聞こえてきた。
「もう、来ないで。いやぁっ。」「きゃぁっ。痛い、痛い。もう嫌。近寄らないで!」
リリィの声に違いなかった。
彼女がどうやらピンチらしい。
駆け出していくと、姿が見えてきた。
防戦一方で、リリィが戦っていた。
全身びしょぬれになって、買ってあげたローブが身体にまとわりついて動きにくそうにしている。
相手のモンスターは河童の化け物みたいだ。
「サハギン」という半魚人的なモンスターだ。
緑いろや青、紫といった色が見えるが、中級のサハギンもいるみたいだ。
彼女は中級魔法使いではあるが、得意な魔法は炎系だ。
中級相手には分が悪い。
電撃系であれば、初級でも水系の魔物には効果的だが、炎系では上級以上でなければ、ダメージは半減されてしまうだろう。
そして、彼女の魔力は尽きてしまっている。5体のサハギンに追い詰められていた。
「きゃぁ。誰か・・・。嫌。いやだってばぁ。。。」
リリィは持っている杖を振りまわり、泣きべそ状態だ。