旅の始まり 僕の絶望
魔法使いのリリィは軽い足取りで、前を歩いていく。
次の町までは一本道だからだ。
魔法使いが前衛だなんて、、、
護衛を頼んだのだから仕方がないが、恥ずかしい限りだ。
リリィは中級の冒険者らしい。
たまたま、森を歩いていて、僕に気が付いてくれた。
リリィの目的は、新しい武器と防具をセールだから買いに行くという。
実に女の子らしいといえば女の子らしい目的だ。
年齢は、17~20歳ぐらいだろうか・・・。
魔法使いだからもしかしたら、年齢が上かもしれないけれど・・・。
女性に年齢を聞いてはダメ。
見た目にも若いし、気持ちも若い。
何より、生命力に溢れている。
それだけで、嬉しいものだ。
疲れもだいぶ癒えてきた。
半日戦い続けていて、ボロボロの僕。だけど、その足でも、隣町までは平坦な道のりだし、
強い護衛もついているおかげで、スライムに悩まされることもなく、午後には、街に着いた。
夜明けから出発して、2時間しないような距離なのに、半日以上たってしまった。
疲労感が襲ってくるが、リリィは新しい武器と防具を見たくてしょうがない様子だ。
あれやこれやと、ものすごい勢いで見て回っている。
まぁ、いうなれば、資金源はここにいるわけで、今回の報酬も弾むわけだから、買い物意欲は高まるばかりだろう。
まぁまぁ、セール品でも、値の張るローブが気に入ったようで、たかられました。
命の恩人、僕の女神さまですから、仕方ないですね。なにより、僕は女性に弱い。
自分は体力の回復も兼ねて宿屋を取った。
リリィの分の宿も取った。もちろん、部屋は別だし、お金も前払いで済ませた。
1人ベッドに横になって考えている。
「自分も武器が装備出来たらな。」
「魔法とか使えたらな。」
今回のように「スライムに負ける」だなんて失態はおかさなかったはず。
でも、そのどちらも叶わない。
この世界では、12歳で不思議な種を授かる。この種は1人1人固有のもので、15歳までの3年間で
大切に成長させていくのだ。
まだら模様やピンク色と様々な色をしているし、15歳になるとその特性にそって、中身から特徴的なものが現れる。
例えば、勇者であれば、その証となる印。格闘家であれば、バンダナとか、魔法使いであれば、魔法の素が出てくる。
魚屋なら出刃包丁。床屋ならハサミ。商売人なら計算機。などなど、なにかしら特徴的なものが出てくるのだ。
そして、僕の種は、輝いていた。
周りのみんなが驚いていた。
「これは、勇者の種に違いない!」ってそれは、それは、街中大騒ぎだった。
僕も期待を一身に背負って、勉強に励んで、訓練もしていた。
だけど、一夜にして悪夢になる。
15歳のその時。僕の種は「空っぽ」だった。
なんにもない。
何にも生まれなかった。
試しに装備品を試してみた。
剣も、格闘技も、楯も杖も、槍も、何にも装備できない。
あんなに輝いていた種だったのに、
今は絶望しかなかった。
なんの冒険職業者にもなれなかった。
なんの仕事にもありつけなかった。
そして、僕は、憧れの人達の身体を癒す仕事をなんとか自力で見つけて今に至るのだ。
小説初心者です。仕事しながら書いているので、不定期になるかと思います。
少しずつ挑戦していきます。