初級の森 旅の目的
「ねぇ、なんでこんな無謀な事をしたの?」
それは、聞きたくなるに違いない。
自分だって、そりゃ、無謀な気もしないでもないけれど、ちょっとした恥ずかしい事情がある。
だから今はあえて言わないでおこうと思っている。
せっかく、こうして美少女の魔法使いで、命の恩人である女神に出会えたのだから。
まぁ、もちろん、言葉は鋭いし、嫌みも存分にあるけれど、それでも、命の恩人の女神さまであることに、
僕の中では変わりはない。。。と信じたい。
「まぁ、王国に仕事の関係で、ちょっと用事があるんだよ。」
完全にごまかした。
「ふーん。王国までね。遠いね?そんなに、お店って大きいの?仕事が手広いの?」
これまた、鋭い。王国に仕事で行くだなんて、まぁ、そうとうな手広さで仕事をしていなかったら、わざわざ行く必要なんてないのだから。。。
「まっ、その規模とかとは、ちょっと関係ないかな。。。」
「ふーん」
ちょっと残念そうな顔をしている。
まぁ、たぶん、それは、報酬の色を気にしているのかもしれない。
良い金づるとまではいかないなぁって顔だと思う。
まぁ、自分としては、報酬は弾むつもりではいる。情けない姿をさらした口止め料も含めてだ。
僕は、まさか、「スライムにやられる」とは思っていなかった。
長年、大きなギルドの前にある店で、ありとあらゆる「勇者」「戦士」「格闘家」などの冒険職業者を癒してきた経験もある。
色々な魔物の話を聞いてきた。冒険話が何よりも好きで、あらゆる魔物の弱点や倒し方を聞いてきた。
憧れの装備も色々と見させてもらっていた。
ただ、スライムの倒し方を聞いたことは無かった。
そりゃそうだ。
スライムなんて、初歩の初歩。
どんな冒険者も乗り越えている。
剣でつつけば、一撃。わざわざ倒し方なんてないのだ。
そのスライムにやられるとは、自分でも思ってもみなかった。
本当に「骨のない奴」とは戦いたくない。
武器があれば、まだ良かったのかもしれない。
ただ、自分は冒険職業者じゃないので、武器が装備できないのだ。
武器は装備できる職業者が決まっている。
冒険職業者でない自分は装備が出来ないのだ。
これが一番困る。剣だって装備できない。
楯も鎧も、何も装備できない。
この国の決まりというか、この縛りに直談判しようとしたのが、今回の目的だ。
「王国直属の神殿に行く。」
そこで、直談判して、職業冒険者に自分の職業も入れてもらいたいのだ。