初級の森 僕の女神様
目の前がオレンジ色に染まっている。
そして、チリチリとした焦げ臭さに鼻がおかしくなりそうだった。
「ごほっ。ごほっ。」「うぇっ。。。」
あまりの煙に、涙と咳が止まらず、情けない顔になっているのが分かる。
「ねぇ、生きてる?大丈夫?」
涼やかな声が聞こえてきた。
涙目でぼやけている視界だったが、彼女の姿は僕にとっては女神に見えた。
「大丈夫。ありがとう。」「ごほっ。ごほっ・・・。」「はぁ。。。はぁ。。。」
「大丈夫じゃなさそうだけど・・・。とりあえずは、窮地は脱したわ。」
「ありがとう。なんて、言ったら良いのか・・・。情けない。」
「ほんと、情けないというか、冒険者でもないのに、どうして護衛もつけないで歩いていたのよ?」
もう、彼女に言い訳する気持ちも何も起きない。
今は助かっただけで、良かったのだ。
本当に良かった。
彼女は紛れもなく、僕の命の恩人だ。
「僕の名前は、リラク。街で『リラクゼーションのお店』を出している。普段は、戦士や勇者たちの身体を癒しているんだけど、どうしても行かなくちゃいけない場所があって、そこへ旅をしている途中なんだ。」
「ふーん。それで、ここで死にそうになっていたのね?ねぇ、あなたの計画性って大丈夫?お店の経営とか上手く行ってないんじゃない?」
僕の女神さまは随分とストレートな物言いで当たってくる。
「ねっ、どうしてかね?スライムだけは、昔から苦手でね。骨とかないでしょ?骨がない奴は特に苦手で・・・」
僕は情けなさに顔を逸らした。
「そういうもの?だいぶ苦戦していたみたいだけど・・・。それに、骨がないのは、あなたのほうでしょ?」
はぁ、女神さまと心の中で呼ぶのを辞めようかと思うほど、言葉も鋭いし、頭の回転も速いようだ。
魔法使いは頭でっかちが多いから、少々苦手である。
「まぁ、でも、隣町に行くんでしょ?私が護衛になってあげようか?」
この状況ならば、お願いするべきだ。今の自分では虫すら殺せない。
「ありがとう。護衛代金ははずむよ。」
「ほんと??」
目をキラキラさせて喜んでいる様は、女神さまだ。笑顔が純粋に可愛い。
命の恩人だから、護衛代金ははずもう。
なによりも、こんな初級の森で死んでしまっては元も子もないのだから・・・。
パーティーに魔法使いが加わった。