食料確保へ~ボアの姉御と~
最近忙しいので遅れ気味ですが、もはや趣味レベルなので気にしない。(私は。)
今回は遭遇した蛇と共に、……です。
とりあえずいきさつをボアに伝える。
生誕後すぐにダークアクイラに襲われたこと。
兄弟であろう卵を割られたこと。
マザーのおかげで命からがら逃げ出したが、マザーが連れていかれている所を見たこと。
自分だけで生きなければならないこと。
それを聞いたボアは、なんとももの悲しげな顔をしていた(気がした)。この世界に産まれて何かを教えてもらう前に全てを失った蛇である私。何も知らなくて当然だろう。
マザースネークについてボアはこう漏らした。
『マザースネークはね、蛇種のなかで最も大事な存在なの。アタシの親父なんかもね、今はボアだけど、それはベビースネークからの派生で進化したものなのよ。』
その言葉に驚いた。ベビースネークの可能性。進化をすれば強い個体に、マザーではない個体になれる?……そうしたら、あの糞鳥を倒すことができるのでは?そう思ったとき、希望が見えた。
ふと、ボアさんの顔が曇っているのが見てとれた。何がどうしてそんな顔をしているのかわからず、どうしたのかきく。ボアさんが話したことは衝撃的な内容だった。
『……今ね、マザーの個体数とベビーの個体数が減ってきているって噂されているの。あんたを心配したのもその噂を聞いてたからなの。まさかと思っていたけど、本当だったなんて……。』
……えっ?マザースネークって繁殖力高いんとちゃうの?えっ?どないしよ……。どうすればいいん?
悩んでいると、
『とりあえず、あんたはアタシの巣に来なさい。スネークベビーは単体じゃ生き残るのすら困難だって聞いたことあるし。最低限進化して一匹でも生き残れるようになるまではマザーの代わりに面倒見てあげる。』
こう聞いて私は思った。このお方は神か仏の写し代わりでは?……と。実際、忘れていないか心配になるほど放置されていたスネークイーターの死体が動かせないほど、非力な私。ボアさん……いや、ボアの姉御、ボア姉について行くことにした。ちなみに、ボア姉と呼んだら困惑された。つらい。
数十分這いずり進み、蛇にしては大きいが、人から見たら小さいであろう斜め下に向かって開いた穴の前に着く。
道中で話していた事を簡単に説明すると、
・ボア姉はスモールボアと言う名前だが、実はその下のベビーボアからすでに進化しているらしい。
・ボア姉は親離れしており、一匹で暮らしている。
・ここいら辺にはスネークイーターくらいしか蛙は居ないらしい。
『着いたわ。じゃああんたの寝る場所に案内するわ。』
「うーん、あんたって呼び方が……何て言うか……他人行儀で悲しいような……。」
そう言うと、ボア姉は驚き、そして呆れ果てた顔をした。
『あんた本当変わってるわね……。まぁいいわ。じゃあどうしようかな……。』
そうだよね。普通はないよね、蛇にそんな欲求なんて。にしても、ボア姉につけて貰うのなら文句は言えんが、困惑しそうだな。新しい名前ってのも。
しかし、ボア姉が言ったのは、予想外の言葉だった。
『じゃあ……ユン。あんたはユンね。』
「……えっ?」
何故なのか?ここで前世と同じ名前が出てくること、それはどう頑張っても偶然では片付けられなかった。
『ん?何か問題でもある?』
「い、いえ、ないですけど…。またどうしてそんな名前にしたんです?」
『あ~……実はなんでか知らんけどそれしか思い浮かばなかったのよね。かわいいからいいでしょ?』
わは~♪何かしらの外部からの圧力が見える~♪……神様か誰かが仕組んだでしょ?と思い空を見ると、
『……ザザッ……個体名【ユン】が登録されました…ザザッ……』
ぞぞっとした。その異様な機械音声は、何かを狂わせて去っていった気がした。
怖かったが、ボア姉に急かされとりあえず巣に入ることになった。