召喚されたみっちゃん
今回は召喚されたみっちゃんの小話です。
神聖なる神殿らしき建造物。たった八本の大きく太い柱だけで支えられているそれは、外から侵入出来ないよう薄い魔力の膜が張られていた。
中央にはなにやら神秘的に感じる模様が施された台と、その台の側面から溢れる色の付いた水が地面の台を囲むような溝に流れている。
美しい少女は台の中央に丸まりながら寝ていた。流れている水は黄色く輝いていた。
「……ま。……しゃ様。」
誰かの声がする。身体が少し重い。私は……
「勇者様、お目覚めください。」
「……んん、ん?勇者?」
目を開いた私の前にいたその人物は、真っ白なローブを纏い、優しく微笑みかけてくる女性だった。
(……だれ……?)
そう思ったとき、脳内にアナウンスが流れた。
『《上位鑑定》を行使することができます。
実行致しますか?
YES NO 』
よくわからなかったが、興味本意でyesを選択。
『鑑定結果
ルルージェ=アロンカイト
性別 女 年齢 鑑定不可 職業 聖女
ステータスの鑑定失敗 』
「……なにこれ?ルルージェ?」
「!?な、勇者様!なぜわたくしの名を!?」
目の前の女性が驚いている。私はまだ少しこの状況に困惑していたが、いつの間にか身体中の重みは無くなっていた。
「鑑定は弾くはずですし……されたらされたで感知できるはず……。昔どこかであったなんて絶対にありえませんし……。」
「ねぇ。埒が明かないからさっさと進めてくれる?」
私は知ってるはずだ。状況が何となく飲み込めてきた。ここがどこか詳しくはわからない。でも、同じような光景なら、私の愛する親友が……ユンちゃんが大好きだった異世界召喚ものの背景にそっくりだ。つまり、ここは異世界である可能性が高い。
そこまで考えて、ユンちゃんを思い出す。ユンちゃんは……?私……は……?
「そうだ、ユンちゃんは、私の大事な親友はどこ!?あのとき一緒に……」
そしてあのときのことをもっと鮮明に思い出した。私は、
「あのとき……そうだ、お参りして、ユンちゃんに声をかけようとして、声が出なくて、動けなくて……そのままユンちゃん残して消えちゃったんだ。」
「申し訳ございません。ですが、わたくし達も勇者様を呼び出すしか方法がなかったのです。闇の権化、魔王を倒すには。」
非常に無責任で自分勝手。ユンちゃんの愛読書を私も読んでなかったら今頃パニック不可避だったでしょうに……(パニックしていない訳じゃない)。つまり言いたいことは、
「ちゃんと元の世界に帰してくれるのなら手伝います。」
「!あ、ありがとうございます。で、ではこちらに……。」
ルルージェに連れられるままに神秘的な台から降りる。すると、黄色く輝いていた水は水本来のあるべき透明な色のない状態になった。
「……水が、変わった?」
「勇者様が乗っておられたからですわ。あの水は最も得意とする属性を示すのですわ。勇者様は黄色く輝いていましたから、雷属性の陽型ですわ。」
「雷属性はわかるけど、陽型って?」
「詳しくは後程お話いたしますが、モンスターと人間で陰型、陽型と分けられておりますの。」
なるほどと思いながら前を向く。帰してくれるのならとは行ったけど、もう帰れないようなそんな気がする。
ユンちゃんに会えないのが辛いけど、私にはユンちゃん印のお守りもある。何としてでもユンちゃんの元に帰ってみせる。
そして、ここでのお話で盛り上がるんだ。
こうして少女は意思を固める。勇者ミヅキの旅はこの日から始まったのだ。
みっちゃんはこれからもちょくちょく話が載ると思います。よければお楽しみにしてくださると嬉しいです。