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蛇姫転生物語  作者: シア風
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蛇神様と転生

(あわれな少女よ、目を覚ますがよい。)


私は不思議な声に目を覚ます。そこは先ほどの社だった。私は身体を起こすと、そこには意識を無くす前にいた白蛇がいた。


「……えっ?喋ったのって?えっ?」

(ワシだが?)


目の前の蛇からやはり聞こえている気がする。ギャーシャベッターとは意外とならないものなんだな。なんだか冷静に見れる。


(ワシは正直悔しいんじゃよ。この気持ちがわかるかな?お嬢さん。)

「いえ、わかりません。どうかしたんですか?」


そういうと、白蛇は静かに目をつむる。そして、静かに呟く。


(ワシはな、これでもこの地の土地神なのじゃよ。)

「はぁ、そんなところだろうと思ってましたけど……。」


そりゃそうさ。蛇が喋るなんてナンセンスなこと、神か化け物くらいだと思うし。普通ではないことは誰が見たってわかるだろう。

そう無関心に蛇を見ていると、


(……すまんかった。護ってやれなくて……。)


物悲しげに蛇は言った。蛇の表情なんてわからない筈なのに悲しんでいる。……ということだけはわかった。そして護ってやれなくてという言葉からふと居なくなったみっちゃんを思い出す。


「っ!……そうだ、みっちゃん!みっちゃんはどこに行ったの!?」

(あの子は……別の世界へ召喚されてしまったのじゃ。)

「召……喚?」


えっなにそれ?まるで異世界ものの本みたいじゃない…。そんなのが現実にあっていいわけ?そう思いつつも、実際にあるんだと歓喜しそうになる。何せ、私はそういう小説、漫画が大好きだったから。


「そっか~みっちゃんは完璧だからなぁ……。親御さんになんて言えばいいのかな……?」

(……どうやって伝えるつもりじゃ?)

「はい?そりゃ……家まで直接行って伝えるしかないでしょ?」


そう言うと、白蛇はそうか……とだけ小さく呟いた。するとシュッと石像の台に姿を隠す。しかし、私からは丸見えである。


「……なにやってんの?」

(お嬢さんはそこで立ってなさい。)


なんだと思っていると、いかにも軽はずみに肝試しに来たであろうカップルが入ってくる。


「やだぁ~こわい~♪」

「安心しな、俺が守ってやる。」


いらっとくるリア充に少し殺意がわく。残念でした~先客居ますよ~だ。そう思いながら見ていると、カップルは一直線で私に向かって来る。……まるで、見えていないように。


「そうだ。こういうところの定番と言えば……写真だよな!何枚か撮っていこうぜ。ほら、入ってこいよ二人で写ろう。」

「わかったぁ~」

「はいチーズ」パシャ


うえい!眩しい!ちゃっかり撮りおって……まったく。しかしそんなことを思っていると、


「うわあぁぁぁ!う、写ってる!」

「えっマジ?……うわっ!あたしらの真後ろじゃん!に、逃げよ!」


そう言うとカップルは走ってこの場から去って行った。……何となく、カップルが突っ込んできたときに察しがついていた。……ただ。


「認めたくなかった……なぁ。」

(現状……理解出来たかな?)


するりと白蛇が出てくる。そして護ってやれなくての意味を聞いてきた。


(護ってやれなくて……この言葉の真の意味……わかるかい?)


静かに、下を向きながら私は呟いた。


「……私は、……死んでたんだね……。」


自分でそう言ったとたん、なぜか涙が溢れだした。霊なのに泣ける事実に違和感も感じずに私はただただ泣き崩れた。






(泣き止んだか?)


白蛇の優しい言葉に私は頷く。どうやら私はあの呼吸困難になった時に窒息死していたようだ。ただ、不可解な点があるとするならば、


「何で私は呼吸困難に陥っちゃったんだろう?」

(ふぅむ憶測でしかないが、召喚のための生け贄になってしまったのではないか?)

「生け……贄?」


白蛇いわく、召喚には親しい者の命が必要らしい。しかし、召喚先の世界に親しい人は居るわけない。だから自分を生け贄にする手順を作ったのだろう……とのこと。ただ、その手順はわからないもよう。


「じゃあ私はどうすればいいの」


今後どうすればいいのかわからない。おもいっきり未練があるから成仏しなくちゃと思っても成仏出来そうにない。すると、


(あの子の元に行きたいのであろう?)

「そりゃ……そうよ。唯一と言っていい私の友達……いや、親友なんだから。」

(……転生ならば出来るかもしれんぞ?)


そう言われたとたん身体中に電流が走るような感覚を覚えた。転生。異世界召喚モノの小説を読む人なら大半が憧れる(と私は思ってる)。自分の魂を持ったまま新たな身体に生まれ変わること。異世界転生ならば超強い存在にと言うのもよくある。

憧れの異世界転生。みっちゃんに会えるかも知れない。この二つの条件は私の心を動かすには充分すぎた。


「転生したいです!」


そう言うと、驚いた様子で白蛇は言う。


(じゃが、よいのか?転生さ)

「いいです!問題ないです!」

(ワシの力では転せ)

「何でも条件バッチグーです!出来ればちょっと優遇してくださると嬉しいです!」


まったく話を聞かない私に呆れる白蛇様。仕方なかったんや。気分が有頂天やったから……。判断能力の欠損が起こってたんや。


(……わ、わかった。お嬢さんの言葉に免じて面倒な話はせんでおこう。少し屈むがよい。)

「こう?」


白蛇様の言葉につられて屈むと、冷たい息を吹き掛けられた。


「冷たっ!何々なに?」

(土地神の加護じゃ。あちらはこっちの世界と違ってさまざまな魔物がおる。その加護があれば成長率に補正がかかるじゃろ。後は運次第じゃな。頑張るがよい。)


そう言うと、私の身体が光に包まれ始めた。


「……土地神様!ありがとうございました!先の世界でも頑張ります!」


そう言うと、白蛇は口角を上げ微笑んでいるような顔をして社へと消えていった。

そして、私の身体もその場から消えていったのであった。

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