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66 宮廷魔術師


 謁見の後、俺とマインは宮廷をぶらついた。


 マインは俺との約束をしっかり覚えていたようで、「宮廷の案内」という名目で俺に肆ノ型の魔導書を目にする機会を作ってくれた。結果、俺は“チラ見”に成功する。実にありがたい。これで火水風土の肆ノ型を苦もなく習得できた。


 ひとまず、余っていた経験値で四属性全てを16級から5級まで上げておく。ちなみに雷属性はというと、既に壱ノ型から肆ノ型まで全て高段へと上げてある。伍ノ型については龍馬・龍王のように必要経験値量がハンパではないので、初段で止めておいた。


 そして、ぶらり旅の最終地点。王宮からほど近い場所にある宮廷魔術師の拠点へと、挨拶に訪れた時。


 マインと共に訓練場に整列する宮廷魔術師たちの前に立って、そこで初めて気が付いた。


 俺、微塵も歓迎されとらん。


 そう。『第一宮廷魔術師団特別臨時講師』になったはいいものの、だ。


 よくよく考えてみれば、ぽっと出の若造がいきなり講師など、エリート中のエリートである宮廷魔術師様方が素直に受け入れてくれるはずもないのである。


 マインと一緒に来たのがマズかったか。第二王子のコネだと思われたに違いない。事実、コネだから始末が悪い。だからといって、マインがいなくなるのもマズそうだ。彼らは第二王子がいる手前、仕方なく整列しているといった風だ。マインがいなくなればすぐにでも解散しそうな雰囲気がある。「講義なんて必要ありません」とか今にも言い出しそう。


「セカンドさんです。これから一ヶ月間、第一宮廷魔術師団の講師を務めてもらいます。以後、皆は彼の指示に従うように」


 マインが俺を紹介すると、宮廷魔術師の皆さんは「はっ」と頷き返事をする。マインに対して返事をしているはずなのに俺を睨みつけるのはやめてほしいところだ。特に最前列右端の黒髪ボブカットの小さい女。もうこれでもかってくらい敵意丸出しである。


「大丈夫そうだね。じゃあボクはもう行くね。セカンドさん、頑張ってね」

「お前もな」

「うん! えへへっ」

「待て、えへへじゃねえよ。これのどこが大丈夫なんだよ」

「恐らくセカンドさんならどうせ大丈夫だよ多分」

「……言うようになったなお前もな」


 小声で言葉を交わし、訓練場を去ろうとするマインをなんとか引き留めんとする。その時、最前列の真ん中にいた赤毛のてっぺんハゲの50歳くらいのオッサンが口を開いた。


「王子、お待ちを! 納得せぬ者が多すぎます。このままでは足並みが揃わぬことは明らか。王子から一つ、何か申していただきたい」


 おお、このオッサン良い度胸だ。王子に対してこれだけ言えるってことは、なかなか地位が高く、そして信の置かれている人物だろう。多分この人が第一宮廷魔術師団の団長だな。よし、赤ザビエルと名付けよう。いや、ザビエル希少種、ザビエルベス……うーん、ザビエル2Pカラーも捨てがたい。


「ゼファー団長。それは王子であるボクが気にするところではなく、団を取りまとめる貴方と、反感を買っている本人が気にするところです。ボクが口を挟めば、団のためにならない。違いますか?」


「むぐっ……いや、しかし」


 マインの正論が赤ザビに突き刺さる。やっぱりこの人が団長だった。


 ……あれ? というかマインのやつ、何気に俺をディスってない?


 ちらりとマインを見やると「あ、やべっ」みたいな表情で顔を逸らされた。こいつ昨日の学校でのサプライズをまだ根に持っているのかもしれない。


 一方で宮廷魔術師たちは、納得したように頷いている奴がちらほら見て取れた。反感を買ってるこの講師が悪いのだと、そう言いたいようだ。


 俺は別に怒ってはいなかったけど、その態度を見て怒ることに決めた。怒りの矛先は幸いにもここにいっぱい集っているので選り取り見取りである。


「よし、じゃあこうしよう。文句のあるやつは俺にかかってこい。何対一でもいいぞ」


「ちょっ、ダメですよっ!」


 マインが慌てて止めに入る。だが止められない止まらない。


「ゼファー団長が一番強そうだな。歳いくつ? 俺は17だ」

わしは55だ」

「そうか。じゃあ、その55年のうちどれだけ無駄な時間を過ごしてきたか特別に教えてやろう」

「……面白いな、小僧。ハハ、面白い。ハハハッ!」


 赤ザビは、笑ってはいるがその額に青筋を立てていた。かなりイラってるご様子だ。こりゃ結果は見えてるなぁ……。


「私がやりますよ、団長」


 と、そこへ空気の読めない女が入ってきた。よく見ると、先ほど俺を睨みつけていた背の低いボブカット女だった。


「儂が売られた喧嘩だ、儂が買う」

「しかし団長がおいそれと私闘をされては団の規律に関わります。団長が行うようなことではありません。それも、第二王子の御前で」

「……確かに、そうか」

「その点、私ならば単なる実習と内外も納得するでしょう」

「分かった。チェリ、お前が行け」

「はい」


 どうやら俺の相手はチェリとかいう女になったようだ。赤ザビは漢気のあるやつと思っていたが、違った。残念である。


「貴方、調子に乗らないことです。ここは王国随一の魔術師が集う場所。多少腕に覚えがあるからと、通用するような場所ではない」


 チェリは偉そうに啖呵を切る。そういうこと言えば言うほど負けフラグがビンビンになると気付いていないのか?


 ……よし、そうだな。ここはいっちょ講師らしく講義と洒落込もう。世界一位への道からはちょいと外れた“寄り道”になるが、これもキャスタル王国存続に必要なことだと割り切ってしっかりやろうと思う。キャスタル王国が侵略されればタイトル戦もなくなるかもしれんのだ、これは世界一位を目指す俺にとっちゃ死活問題である。


 ん、待てよ。そう考えると、だ。こいつらに講義や実習をして一ヵ月後に成果を出すってのも、言わばタイトル戦の一環なのでは? おお、なんかめっちゃヤル気出てきた。


「なるほど鋭い意見をありがとう。お前が俺の相手をするのか?」


「……ええ、そうです。覚悟をしておいた方がいいですよ。いくら神童や天才などと謳われようと、ここではただの一般人以下になりますから」


「自己紹介?」


「いちいちムカつきますね、貴方のことですよ。私は序列上位です」


「フーン……ところで、井の中の蛙って知ってるか?」


「ええ」


「お前のことだよ」


「…………ッ!」


「あーあー怒るな怒るな。怒れば怒るだけ弱くなるぞ」


 コンマ何秒さえ惜しいPvPプレイヤー・バーサス・プレイヤーにおいて、感情ってのは無駄でしかない。ああしようこうしようと考えることすら無駄だ。日頃の鍛錬や過去の経験から“思考をショートカット”して動かなければならない。つまり、感情を表に出している時点で「話にならない」んだよ。


「今、お前は多分こんなことを思っているんだろう? どうしてこんな若い男が講師なんて。私でさえ宮廷魔術師になるので精一杯なのに。きっと王子のコネに違いない。そんな奴に教えを乞うなんてプライドが許せない。それに何だこの男の態度は。舐めやがって。気に食わない、気に食わない、気に食わない」


「……へえ、よくお分かりですね。その通りです」


「舐められて悔しいのかな? チェリちゃん」


「ッ……いえ、別に。それとその呼び方やめてもらっていいですか」


「世の中にはな、舐めていい場合と駄目な場合がある。前者は舐められる方が悪い。後者は舐める方が悪い。お前らは明らかに前者だな。何が宮廷魔術師だよ。揃いも揃って俺に手出し一つできねぇでやんの」


「貴方ッ……!」


「ほら、数十秒前に教えたことすらできてない。怒るなって言ってんだよ。言葉分かる?」


 チェリちゃんはぷるぷる震えて怒っている。マインが「やりすぎですよ!」と肘で小突いてきた。「これ講義なんだけど」と返すと「はぁ?」という顔をされる。


「チェリ? あの、これ持ってきたんだけど……やめた方が」

「……どうも、アイリー」


 すると、アイリーと呼ばれた女がチェリちゃんに何か渡した。この無駄な時間はこれの到着を待っていたってことか? 一体何だろう。大きさからしてアクセサリーかな。



「さあ、この“対局冠”を使って対局しましょう。逃げることは許しませんよ」


 チェリちゃんは自信満々の顔で、俺に対局冠を渡しながらそう言った。逃げることは許さない、と。大真面目に。


 …………。



「んぶっ、ぶっっはっはっははは!!」


「な、何がおかしいんですか!」


 俺は腹を抱えて笑った。


「っはははは、いや、だって、いひひっ!」


 こんなん笑うなって方が無理だ。


「はー、笑った。いやあ、凄いなお前ら」

「だから、何がです。馬鹿にしてるんですか?」

「ああ。お前ら、いつもコレで訓練してんのか?」

「ッ、ええそうです。まあ貴方には関係のないことですが」

「……凄いな。凄まじいわ」


 本当に凄い。俺は「何対一でもいいからかかってこい」と言ったんだ。なのに、抱腹絶倒中の隙だらけの俺に対して、誰も攻撃してこなかった。その後だらだらと喋っていた間も、訓練場を見渡すフリをしてあえて背中を向けてみたのだが、誰も何もしてこない。


「はぁっ」


 俺は溜め息をひとつ強めに吐いて、口を開いた。


「自信満々の顔で、言うことは対局? 逃げることは許さない? ふざけんなよ。平和ボケもいい加減にしろ。こん中でマシなのは三人だけだ。ゼファー団長とチェリちゃんとアイリーさん。三人以外は生ゴミだわマジで」


 赤ザビは常に警戒を怠っていなかった。恐らく俺との戦闘を良しとせず傍観に徹したのだろうが、いつでも迎撃できるくらいの集中はしているように見えた。つまりは、対局など考えの中になかったと言える。


 また、対局冠を持ってきたアイリーは「こういうことじゃないんじゃ……」という困惑とともにチェリちゃんへと手渡していた。戦意は感じられなかったが、要点は理解している。


 チェリちゃんは、なんかもうことごとくダメダメで好感が持てる。なのに立ち向かってくるところが可愛い。伸びしろしかない。良く言えば可能性の塊である。


 それ以外のゴミどもは「どうせ対局だろ」「俺は関係ない」とでも思っていたのか、明らかに日和っていた。棒立ちで俺とチェリちゃんの様子をただ見ているだけの生モノである。気に食わない。


 だが、その気に食わない奴らを一ヵ月間で目に見えるレベルまで成長させるのが今の俺に与えられた仕事だ。やると決めたんだ、とことんやってやる。折角だから世界で一番強い魔術師集団にしてやろうじゃねえかゴミども。よかったね。


「いいか、対局ってのは全てが仮想のものだ。攻撃が当たっても痛くないし、死ぬことはないし、回復の必要もないし、手軽で、便利で、何度でもできる。お前らはこれが良い訓練になると思ってんのかもしれんが、そりゃ大きな間違いだ」


 メヴィオンの世界では、死亡にペナルティがあった。具体的にはステータスの一部が僅かに下がるのだ。一般のプレイヤーには大したことではないが、トップランカーには痛すぎるほどのダメージとなる。ゆえに、この世界とはまた違った意味で、皆は死亡を恐れていた。その恐れが、実に大切だった。


「必ず油断が生まれる。絶対に何処かで甘えが出る。どうせ痛くないし一撃くらい受けてもいいか。どうせ死なないしちょっとなら無理してもいいか。“どうせ”が意識の奥底に棲みつく。そして、手軽に何度もできるがゆえに、戦闘はどうしても荒くなる。そんなことはないと、そう思うだろうが。無意識にそうなっていることに、お前らは気付いていない」


 何か反論が来るかと思っていたが、意外なことに全員が黙って聞いていた。じゃあ最後まで喋らせてもらおう。


「問題はな、いざ下手すりゃ死ぬとなった時だ。攻撃を受けると痛くなった時だ。俺は知っている。対局に慣れ切った奴は、十中八九が臆病になる。攻め時に上手く攻め切れず、受け時に躱すことばかり考える。それがもしほんの僅かな一瞬の癖だったとしても、見逃してくれない猛者は何人もいるぞ」


 ちらりとチェリちゃんを見ると、ぶすっとした表情で斜め下の地面を見つめていた。本心では俺が正しいと思ったが気に食わないのでとりあえず不満顔をしてみた、という感じである。


「対局ってのは、実験的に遊んで使うものだ。実戦形式で使うものじゃない。よく覚えとけ。じゃないと恥をかくことになる。売られた喧嘩を買うのにトランプを持ち出すやつがいるか?」


 ワハハと数人の笑い声が聞こえた。少しだけ暖まった空気。もっとウケると思っていたが、まあ今日のところはこんなものかなぁ。


「じゃあ、今日の講義はここまで。明日また来る」


「な、待ちなさい! 貴方の実力がまだ分かっていません!」


 言いたいことだけ言ってマインと一緒に帰ろうとすると、チェリちゃんが呼び止めてきた。実力か、なるほど。自分より弱い人に教わるのは嫌だとかいう馬鹿みたいな発想だな。もしくは宗教上の理由か。それとも単に俺のことが気に食わないのか。うん、気に食わないだけのような気がしてきた。


「…………」


 俺は今後のことも考慮して、どうせならド派手に格好付けようと思い、何か良いパフォーマンスはないかと思案する。


 ふと、手に持っていたままの対局冠が目に付いた。よし、これだ。



「ほっ」


 対局冠を誰もいない方向へと天高く放り投げる。そしてすかさず《雷属性・肆ノ型》を準備して、落下中の対局冠に座標を合わせていく。


「貴方、何をやって――」



 チェリちゃんがツッコミを入れようとしたその瞬間。


 パッ――という音さえ聞こえそうなほどの眩い閃光が辺りを照らし、その直後に地面を揺らすほどの轟音が鳴り響いた。誰もが耳を塞ぎ、何が起きたのかと恐慌する。


 《雷属性・肆ノ型》は、“落雷”の範囲攻撃魔術。決定した座標の一定範囲内にいる対象へ強力な雷属性のダメージを与える。どれほど強力かと言えば、それは一発一発が参ノ型に匹敵する。範囲内に5体の魔物がいれば、一度で参ノ型5発分。お得パックみたいな魔術である。


「……か、雷が、落ちた……?」


 俺は未だ俺の魔術だと気付いていないチェリちゃんたちに背を向けて「また明日~」と一言、困惑するマインを連れて訓練場を後にした。



 しばらく歩いて、マインは恐る恐るといった風に口を開く。


「あれは、セカンドさんが?」

「おう」

「雷の魔術なんて、見たことも聞いたこともないよ……」


 まあそうだろうな。俺も「プレイヤー用の雷属性魔術」についてはそうだった。アンゴルモアとの一体感から自動的に獲得したことで初めて知ったスキルだ。恐らく、この世界のオリジナルだと思われる。


「…………ん? 待って。雷属性、雷属性……えっと、何処かで……」


 ふと、何かを思い出すようなポーズでぶつぶつと呟くマイン。そして数秒後「もしや」という顔でこちらを向いた。


「セカンドさん。精霊大王……って、知ってる?」


 知っているのかマイン! 召喚術の本か何かに書いてあったのか? 流石、勤勉なだけはある。


 俺は折角だからと、《精霊召喚》でアンゴルモアを喚び出して、本人に自己紹介させることにした。


 ギュルルッと、虚空から虹色のねじれが生じ、そこから回転とともにブワリと舞い降りるようにして具現するのは、やたら仰々しい格好の中性的な美人。


「――我が名はアンゴルモア。我こそが四大元素を支配する唯一無二の存在、精霊大王である」


「………………」


 マインは一拍置いて「わひゃっ!?」と驚き、腰を抜かしてその場にへたり込んだ。


 大声に駆けつけたメイドの補助によってなんとか立ち上がる。しまった、サプライズが過ぎたかもしれない。


「すまんすまん」

「すまんじゃないよ、もー……心臓が止まるかと思った」


 胸を押さえてジトーっとした目でこちらを見るマイン。頬を赤く染めて、呼吸が少しだけ荒い。まるで俺がセクハラしたみたいな構図である。


「でも、とんでもないね。まさか精霊大王様を使役してるなんて……いや、とんでもないってレベルじゃないよ。魔術も召喚術も一流って、セカンドさんは神にでもなるつもりなの?」

「弓術も剣術も超一流だぞ。それ以外も行く行くは、な」

「我がセカンドは世界一の男よ。そして我は精霊界一の大王。すなわち我らは森羅万象の覇者である」

「セカンドさんが味方で心底良かったと思うよ……」


「ちなみに精霊界一の軍師も我がセカンドに相当お熱でな。精霊界では我がセカンドの話ばかりしておったわ。あれほどの大賢を手懐けるとは我がセカンドも隅に置けぬ」


 初耳だ。というか、それは浮いた話ではなく「こんな強いカード手に入れたんだー」みたいな自慢の類の気がする。


「軍師? あ、ウィンフィルドさん……えっ、あの方も精霊なんですか!?」

「うむ」

「あれ、言ってなかったっけ」

「聞いてないですよ! もー……」


 久しぶりに会ってからというものマインは驚きっぱなしである。俺の友人をこんなに驚かせ続けるなんて許せねぇ。一体どこのどいつだ。まったくけしからん奴だな。


「じゃあ、もうこっちは盤石ですね。これ以上ない布陣だと思いますよ」

「ん? どういうことだ?」

「軍師が精霊なんでしょ? 使役者が特定されない限り、暗殺されようがないじゃないですか。軍師の弱点をきっちりと克服しちゃってます。そして戦力にはセカンドさんがいるし、精霊大王様までいるし。ボクの思い浮かぶ理想の更に上の上を行ってますね」


 なるほど暗殺か。そう考えると、確かにウィンフィルドは軍師としての理想形態だ。精霊だから戦闘力は言わずもがな人間より強いだろうし、食事も睡眠もとらないからな。


「貴様、気に入ったぞ。我がセカンドの盟友として認めよう」

「あ、ありがとうございます」


 王子相手に貴様って……流石はアンゴルモア様。マインも何故か嬉しそうにしているし。


「ただいくら盤石だからって、武力で勝ったとしても民衆は納得しないからな」


「そうですね。民あっての国ですから。ボクがしっかりしなくちゃ」


「いや、お前がしっかりするのは次期国王に内定してからだ。それまでは俺たちに任せておけばいい」


「……はい?」


「お前の言う盤石な状態を存分に活かして、真綿で首を絞めるようにじわじわと帝国の犬どもとそれに乗せられた馬鹿どもを地の果てまで追い詰めてやる。そして一網打尽にして帝国に生きたまま帰れないようにしてやる。そのうえ二度とキャスタル王国に生きたまま入れないようにしてやる……主にウィンフィルドが」


「いいんですかねそれ……というかセカンドさんがやるんじゃないんですね」


「今回の政争においては、俺はウィンフィルドの駒だからな」


「そんなに嬉しそうに自分のことを駒って言う人、ボク初めて見ましたよ……」



 その後しばらくマインとだらだら雑談して、日が暮れる頃に宮廷を出た。


 明日からはいよいよ講師として本格的に活動しなければならない。講義のプランでも練っておくか、と。そんなことを考えながらキュベロが待っているはずの馬車まで歩く。


 しかし、そこには馬車どころかキュベロの姿すらなかった。


 ただ、その代わりと言っては何だが、そこには――



「……シルビア?」


「う、うむ。遅かったではないか、セカンド殿。待ちくたびれたぞ」


 若干の緊張が窺える、着飾ったシルビアの姿があった。私服は随分と久々に見たが、やはり元が美人だからか相当に似合っている。


 そして、シルビアは頬を朱に染めながら喋り始めた。


「ほら、約束したではないか。精霊チケットの……わ、忘れてしまったか?」

「いや覚えてるが。休日に買い物と言ってなかったか?」

「これから忙しくなるだろう。少しでいいんだ、付き合ってくれ。適当に店を覗いてから、ゆ、夕飯でもどうだ?」

「うん、良いな。実に良い。昔を思い出すな」

「うむ。とは言っても半年ほど前だが……何だか遠い昔のような気もするな」


 他愛のない会話をして、笑い合って、面白おかしく買い物して、昔のように宿屋一階の酒場で楽しく酒を飲んだ。


 やっぱり、シルビアとはこんな感じの男友達のような付き合いが向いている。




 ……と、そう思っていたのだが。


 二人で飲んでいるうちに段々と良い雰囲気になり。

 シルビアの猛烈なアピールが炸裂しまくり。

 あれよあれよという間に。


 俺たちは、二階へとその場所を移すことになった――


< 続きはWEBで! >


お読みいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
男友達とヤれる つまりセカンドは┌(┌^o^)┐ホモォ...
おーいまたやんのかww 暗黒狼編で命賭けるほどのゲームへの執着と維持をみせてくれた時とか、とにかく世界一位に返り咲く為に奔走するセカンドが好きだったのに 直前まで男友達のような付き合いが向いてる思うて…
[良い点] 自分の記憶では雷電2回目。先生、男塾好きなんすね [一言] ユカリには負けてられないってことか お陰で女性陣が積極的過ぎる さすがにエコやウィンフィルドまで参戦してこないとは思うが
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