57 あんこ
ちょっと長め。
死闘が終わり。
密かに、俺は感動に打ち震えていた。
あんこが喋っている……!
これはテイム成功に勝るとも劣らない衝撃だった。
つい先ほどまで、彼女はプログラムされた行動パターンを繰り返すただの魔物でしかなかった。それがどうだ、テイムした瞬間からまるで魂を得たように動き出したではないか。
何が起きた? 違いは何だ? やはりテイムか? それとも「あんこ」だからか? 謎だらけだ……。
すると、ずっと黙って考え込む俺に痺れを切らしたのか、あんこがおもむろに口を開いた。
「――主様。嗚呼、主様。私はこれより、何ものをも屠る矛となりましょう。何ものをも遮る盾となりましょう。私の全てを主様に捧げとう存じます。ですからどうか、この身朽ち果てるまでお傍に置いてくださいまし」
跪いた姿勢から恭しく頭を下げる。
内容はさて置いて、まるで“前々から用意していた”ような熱のこもったセリフ。俺はふと気になって聞いてみた。
「お前の願いに応える前に一つ質問がある。お前の自我は、意識はいつからあった」
「はい。もう何百年も昔からございました」
「では何故あのような行動をとった」
「決して抗えぬ力……神の力によって操られておりました」
「なるほど神の力ねぇ」
意識がありながらも戦闘においては自由な行動がとれなかった、ということか。なんとも不憫な話だが……ただなぁ、テイムされた瞬間にあんこの記憶が改ざんされた可能性も捨て切れないな。「何百年も前から自我があった」という記憶が何者かによって後から付け加えられた可能性だ。この世に存在する多くの魔物に元から自我があると考えるよりはそちらの方が幾分か合理的な推理だろう。
……まあ俺が考えたところでどうにもならない問題っぽいからここで考えるのを止めておくことにする。テイムできた暗黒狼はたまたま自我を持っていた、今はそれでいい。
「あんこ」
「……? ……っ! はい!」
「俺はセカンドだ。覚えておけ」
「はい! 永遠に!」
「行くぞ」
「畏まりましたっ!」
いきなり名前を呼んでみる。あんこは一拍置いてから声を弾ませて頷き、すっくと立ち上がった。なかなか頭の回転が速い。
身長は俺より少し低いくらいの長身。尻尾をブンブンと振り、頭上の耳はぴこぴこ、普段の微笑をたたえて落ち着いた顔は今や満面の笑み。その妖艶な大人の色香に似合わない子供のようなはしゃぎっぷりに、俺は思わず笑った。
「帰り道は任せていいか?」
「~~~っ! うふふ、お任せを!」
仕事を頼むと、あんこは頬を紅潮させて蕩けるような笑顔を見せる。嬉しくて堪らないといった様子であった。
そうか。あんこにとって“外に出る”のはこれが初めての経験。それもウン百年越しだ、嬉しくないワケがないわな。この喜びようも頷ける。
うんうんと一人納得して、アイソロイス地下大図書館を後にした。やはり外の景色が気になるのか、あんこはきょろきょろと興味深げに辺りを観察しながら俺のすぐ後ろを付いてくる。
俺は例の安地に張っていたテント一式を回収してから廊下に出た。
図書館前の廊下は「ブラックゴースト」と呼ばれる強力な魔物の巣窟となっている。一体一体がしっかりした強さのうえ、群れで襲ってくるためかなり厄介だ。
と、早くもあちらさんにターゲットされた。その数5匹。ソロなら少々キツイ数だがまあ問題ない。俺はまだこちらに接近されていないうちに何匹か削っておこうと考え、ミスリルロングボウに手をかけて――
「……嗚呼」
瞬間。あんこが目にも止まらぬ速さで移動して、ブラックゴーストたちの前に立ち塞がった。身体を暗黒に溶かし、影から影へと瞬間移動するスキル――《暗黒転移》だ。
「なんと愚かな」
あんこは糸のような目を更に細めて、優しく微笑みながら言う。
そして、おもむろに右手を突き出し……ブラックゴーストの頭部と思われる部分をむんずとわし掴んだ。
「お死になさいな」
黒き霧の奔流。紛うことなき《暗黒魔術》だった。まさか!
「は……?」
思わず声が出る。半笑いで。俺は目を疑った。しかし眼前の事実は覆らない。ブラックゴーストたちのHP残量が1になっている! こいつ“使える”のか!? ぶっ壊れ魔術を……!
直後。バシャッ――というような軽い音と同時に、先頭のブラックゴーストの頭部があんこによって握り潰された。
オイオイそりゃ一体何のスキルだ? と考え、すぐに思い当たる。“爪”攻撃だ。人型でもできたのか……。
「来たれ影杖」
あんこは黒衣に付着したブラックゴーストの残骸をさらりと払いとってから、余裕たっぷりに《暗黒召喚》を行う。
召喚したのは『影杖』――まるで闇そのもののような深い黒色をした長杖だ。俺はもう嫌というほど戦ったからこそ分かるが、この杖は非常に厄介この上ない武器である。何故って、とにかく「手数が多い」のだ。すなわち《暗黒魔術》との相性抜群。残りHPが1で彼女の千手観音のような【杖術】を全て躱し切るなんざ、まさに生きた心地がしないと言える。
……なんだろうこの気持ち。これまでさんざっぱら苦労させられたこの極悪鬼畜コンボが、味方になった瞬間にクソほど頼もしく感じる。「やっちゃってくだせえ姐さん!」と応援したいほどだ。
とか何とか考えている間に、ブラックゴーストたちが一斉にあんこへと襲い掛かった。
「うふっ!」
あんこは影杖をひゅんと振り――地面へ、ドスッと打ちつける。影杖の特徴は「影を攻撃してもダメージ判定となる」こと。あれは《銀将杖術》だ。前方広範囲への強力な攻撃。それも地面の影へ向けて。
4匹のブラックゴーストは一撃で葬り去られる。当然の結果だった。《暗黒魔術》を受けて残りHPが1しかないところへ回避の難しい影への広範囲攻撃。圧倒的だ。戦いにすらなっていない。これは非常に効率的で計算された戦略と異常にハイレベルな能力による狩りである。
いやぁー……なんだこれ。ヤバイぞ。ヤバすぎる。
何がヤバイって、そりゃ全部ヤバイが、中でも《暗黒魔術》がグンバツにヤバイ。まさか使えるとは思っていなかった。勿論だが、前世のあんこでは使えなかった。だってHPを強制的に1にする魔術だぞ? 確実に“ゲームバランス”が崩れる。
だが、そんな「ぶっ壊れ魔術」が使えてしまっている。つまりだ、今世のあんこは前世のあんことは明らかに違っている。意識から戦略からスキルから何から全て。
…………強すぎない?
「……よくやった。素晴らしい」
俺は若干の戦慄とともにあんこを褒めた。
仕事後の余韻に浸っていたあんこは即座に振り向き「勿体なきお言葉です」と一礼する。実に従順。嬉しくなっちゃうね。
さて、それじゃあちょいと確認させてもらおう。前世と今世の違いとやらを。
「あんこ、お前のステータスを見るぞ」
「はい、どうぞご覧になってくださいまし」
一言断りを入れると、あんこは影杖を仕舞って俺に身を寄せてきた。少し……いやかなり近い。そしてでかい。いや、今はでかいとかどうでもいい。でもでかいものはでかい。くっ、でかいぞ。とにかくでかくてでかい。
…………。
ああ、納得した。“制約”が増えている。《暗黒魔術》は「自分より弱い相手にしか使えない」という条件が追加されていた。そしてクールタイム、これが3600秒もある。1時間1回制限。うーん、それでも十二分に規格外なスキルだ。
加えて《虚影》のクールタイムも40秒から300秒に伸びていた。確かに3秒間無敵を40秒に1回使えたら強すぎる。
他にも《暗黒変身》のクールタイムがなくなっていたり、《暗黒転移》と《暗黒召喚》のクールタイムが60秒に設定されていたりと、スキルにちょこちょこと修正が加えられていた。
前世と比べると全て上方修正である。テイム前と比べると《暗黒変身》以外は全て下方修正である。これがどういう意味か。「テキトーではない」のだ。非常に考え抜かれた調整と言える。
で、だ。
俺は確信した。
神がいる。否、製作者がいる。
何処の誰なのか、一体どんな奴なのかは見当も付かないが、確実に「存在する」ことだけは分かった。メヴィオンに似たこの世界のバランスを保つため、大なり小なり苦心してくれている。テイムされた暗黒狼の保有スキルに“この世界向けの”修正を加える程度には。
……ありがとう、と言いたい。ここは最高の世界だと。俺の夢を叶えられる場所を用意してくれたことへの感謝しかない。もし会えるのなら、いつか菓子折り持って挨拶にいこう。それがいいな。
「如何でしょう。主様のお役に立てますでしょうか?」
なんてなことを色々と考え込んでいると、あんこは何か不安に思ったのか上目づかいで聞いてきた。そういやステータス覗いたまんまだったわ申し訳ねえ。
「100点満点中5000点くらいだ」
「まあ!」
「嘘、100万点くらい」
「嗚呼、嗚呼、主様。あんこは嬉しゅうございます」
誤魔化しついでに冗談を言うと、あんこが俺の胸にしなだれかかってきた。ん、ン……!? で、でけぇ……ッ。
「――――あら」
あんこが冷たい声をあげる。同時に俺も気が付いた。
不意をついて、背後から3匹のブラックゴーストが襲来する。どこかに隠れていたわけではない。一定時間経過による“湧き”だ。しまったなあ、ちと浮かれすぎていた。
敵の接近にいち早く気付いたあんこは名残惜しそうに俺から離れると、自然体な微笑み顔のまま《暗黒召喚》を発動した。
闇の中から黒炎とともに召喚されたのは、身の丈の倍はあろうかという大槍『黒炎之槍』だった。
こんな長物を軽々と振り回すのはあんこくらいなものだろう。その禍々しい異形の柄と装飾は見る者全てに死を思わせ、穂先では黒炎が悠久に燃え盛り、決してその刃を目にすることはできない。
槍とは主に刺突を目的とした武器だが、あんこの場合はこれを“大きく振る”ことで「最強」と化す。何故か。それは槍を振るうと必ず黒炎が噴き出すからである。大きく振れば振るほど黒炎は広がるのだ。異常に長いリーチと、近付く隙を与えない広範囲への黒炎攻撃。ただでさえ申し分ない威力だというのに、そこへ【槍術】スキル分の攻撃倍率が上乗せされる。まさに「最強モード」と言っても過言ではない無双の強さである。
「邪魔立てするか、この私を」
怒気を孕んだ声色で、ふと気付く。どうして今、あんこは最強たる黒炎之槍を出したのか。
彼女は何故かキレていた。それも微笑んだまま。なんだそれ。ブチギレて最強武器持ち出してんのに顔は微笑んでいる。うーん器用なやつだ。しかし何に対して怒っているのだろうか? 会話を邪魔されたからというただそれだけの理由なら、流石に沸点が低いと言わざるを得ない。
そして――次の瞬間。いつの間に準備していたのか、あんこの《龍王槍術》が発動し、前方に暗黒の業火が迸った。
「ワーオ……」
直撃した3匹のブラックゴーストは“一撃”で消滅する。たった一撃だ。えぇ……クリティカルが出たとはいえ威力がおかしい。なんじゃそりゃあ。《暗黒魔術》とかなくてもクッソ強いやんけ。
……ああ。薄々勘付いてはいたが、認めざるを得ない。現状だと、単純な能力だけ比べれば俺よりあんこの方が格段に強いだろう。恐ろしいことに。あんこが行動パターンの呪縛から解き放たれた今、もう一度戦ったら、もしかすると俺が負ける可能性がスズメの鼻くそ程度はあるかもしれない。そう、もしかすると。ひょっとするとだ。万が一ね。まあ勝つけど。
ただ。ただ! 忘れちゃならんのは、この恐ろしく強い狼は俺の配下だということ。俺の矛であり俺の盾。言わば俺の装備なのだ。そう、つまり、強ければ強いほど良いのだ。あんこが俺より強いのなら、今の俺はそのあんこをテイムしたことによってここに来た時の倍以上強くなっているということになる。実に素晴らしいことではないか! これで世界一位がぐぐーっと近付いたに違いない。だから全然悔しくなんかないもんね。
「よし、帰路を急ごうか」
「畏まりました主様」
俺はあんこの常軌を逸した強さにちょいとばかし嫉妬しながらも最終的にはなんとか平常心に持ち直し、アイソロイスダンジョンの出口へと向かって進んだ。
滞在4ヶ月。長いようで短かった。聞くところによると外はもう秋だという。あんこをテイムした後のこの晴れやかな気分で見る紅葉はさぞ美しかろうなあと、俺はそんなぼけたことを考えながら歩を進めた。
……なんつって、浮かれていた時がありましたよ。
俺は今回の件で学んだね。美味しい話には裏があるもんだ、と。
「うぅ……申し訳ございません……」
アイソロイスダンジョンの外に出て陽の光を浴びた瞬間、あんこは“へろへろ”になった。
自分で立って歩くのがやっとという状態である。
少し進んで木陰に入ると、瞬く間に元気を取り戻した。
条件は単純だった。全身が隠れる影ならば全力を出せる。陽光が少しでも当たると、当たった分だけ弱体化してしまう。服を着ていようが着ていまいが「体に陽光が当たっている」という事実が弱体化を誘発するようだ。
これはつまり、あんこは「影のある所でしか戦えない」ということ。夜中や屋内なら問題はないが、炎天下なら……諦めるよりないな。
うーん、なるほど《暗黒魔術》の代償がこれか。あー、すっごいイイトコ突いてくるなぁ……流石に予想外だった。まあ、しょうがない。それでも4ヶ月間の苦労を補って余りありまくる働きをしてくれることだろう。
あんこは現在、俺の影に隠れて共に歩いている。ほとんど背負っているような密着した体勢。全身が隠れずとも、少しでも隠れていれば歩行は問題ない様子であった。
「送還しなくても大丈夫か?」
「嗚呼、私を心配してくださるのですね。なんとありがたき幸せでしょう。ええ、主様のお陰で活力が漲っております。こうして身を寄せているだけで私は、私は……」
「俺の影と俺のお陰をかけてるのか? あんこは洒落が上手いな」
「うふふ……然様に意地悪なところもお慕いしております主様」
「…………」
なんかこいつはからかっても面白くない気がする。いや、よした方がいいと俺の本能がそう言っている。シルビアをいじるような感覚でいたら返り討ちに遭いそうだ。うん、怖いから金輪際あんこをからかうのはやめよう。そうしよう。というかさっきから背中にでかいのが当たっていてそれどころではない。こいつ結構スキンシップが激しいな。狼だからか?
「これから船に乗って港町で一泊、翌朝から馬に乗って一日中移動だ。しばらく我慢してくれ」
「我慢だなどと、そんな。あんこは主様と共に過ごせてこの上なく幸福でございます」
身をよじらせながら俺の耳元で囁くあんこ。効果は抜群だ。ふと一人称が私の時とあんこの時とあるのはどういうことなのか気になったが、それを聞いたら更に激しいスキンシップが待ち受けていそうで怖くなり聞くのを止めた。
これから24時間以上こいつと二人きりとか……なんか心配になってきたぞ。ペホの町まで迎えに来てくれとユカリに連絡しとこうかな。
そんなこんなで。道中に一抹の不安を覚えながらも、俺たちはアイソロイスの島を後にした。
「情けないのう。我がセカンドの影に隠れて動けぬか、戯け」
「…………」
「無用の長物とはまさにお前のことよ。暗黒狼とやらは主人の背にもたれるしか能がないのか?」
「…………」
「ほれ、なんとか申してみよ。ええ? おい」
「ナントカ」
「貴様ーッ! 先輩であり精霊大王である我に対してなんたる物言い! 聞いたか我がセカンドよ! 聞いたか我がセカンドよ!」
「うるせえ大人しくしてろ!」
港町クーラからペホへの馬上で、気まぐれに《精霊召喚》したのが運の尽き。この世界での《魔召喚》と《精霊召喚》は競合しないかどうかなんてチェックしなければよかった。召喚自体は競合はしなかったが、召喚した二体が競合してやがる。
何がそんなに気に食わんのか、アンゴルモアはあんこに喧嘩を売り続ける。どちらが上か白黒つけようとしているのかもしれない。精霊大王のプライドというやつだろうか。
「何故我が叱られねばならん! 依怙贔屓だ! 精霊差別だ! 我がセカンドよ、叱るならばこやつであろう!」
「は、なんで?」
「こやつはつい昨日まで我がセカンドへ牙を剥いておったのだぞ! 許すまじ! 何か手酷い罰を与えるべきである!」
あー……なるほど。アンゴルモアが突っかかる理由がなんとなく分かった。あんこのことをまだ信用しきれていないんだな。
「私は既に主様の魂の一部。牙を剥くも剥かぬも主様の意のままで御座います。であれば、主様が主様ご自身を罰することなどおかしな話ではないですか」
「ぐぬうううう、ごちゃごちゃと屁理屈を!」
「しかし、そうですね。体罰という点では……大王、あなたに同意しましょう。主様、是非にこのあんこの首を絞めてくださいまし」
不意にあんこの手が俺の首へと伸びる。え、マジ……? 首を絞めてと言いながら俺の首を絞めにかかるとは、これ如何に。
「(ほらまたおかしなことを言い出したぞ。アンゴルモアお前がなんとかしろよ)」
「(なんとかとは何だ!?)」
「(ナントカだよ。お前先輩だろ)」
「(う、うむ、いや、しかしだな……!)」
「嗚呼、主様ぁ」
「(ウオオオはやくしろ!)」
あんこのスキンシップがとどまる所を知らない。かといって無下にできない。何百年も闇の中で孤独だったんだ、人肌恋しいのも分かる。若干、いやかなりイキスギているが。それに応えてやりたいという気持ちも少なからずある。ただ絶対に突破させちゃあならない防衛線というものもあるのだ。
「おお! 刮目せよ、紅葉が見事ではないか! 地下に閉じこもってじめじめと陰気臭い貴様はどうせ見たことがなかろう? またとない機会である。そら、行け行け。下馬して見て参れ」
ナイスだアンゴルモア。首から手が離れた。だがその煽りは必要なかった!
「……そうして私を主様から引き離そうという魂胆。いくら先輩といえど、お戯れが過ぎるというものです」
「で、あれば。どうする、ここで雌雄を決すか?」
「うふ。焼き殺されるか、裂き殺されるか。お選びいただきとう存じます」
「ハハハ、言うではないか後輩」
「何を言いますか。私は後輩ではない。何故なら今からその先輩とやらがいなくなりますから」
「……ほう。では、殺れるものなら殺ってみるが――」
――と、ここで《送還》した。2人とも。
最初からこうしときゃよかったわ。次にあんこを召喚した時のスキンシップが怖いが……一応、喧嘩の仲裁という大義名分があるから納得してくれることだろう。多分。アンゴルモアは時間をかけて落ち着いてもらうよりなさそうだ。
はぁ……ありゃ駄目だな。犬猿の仲だ。同時に召喚するのはなるべくやめた方がいいな。
それにしても物騒すぎる。限度ってもんを知らないのか。仲間内なのに本気で殺し合いをおっぱじめようとしてやがった。冗談じゃない。やっぱり精霊や魔物の死生観は人間とは全く違うな。
しっかしまぁ、あいつらがいないだけで快適快適。このままペホの町まで自由気ままな一人旅だ。いや、セブンステイオーと二人旅か? まあ何にせよ平和な旅だ。
……あーあ。次はいつ召喚しようか。今から胃が痛い……。
お読みいただき、ありがとうございます。