255 猫いいわ、可愛い子ね。
シルビア・ヴァージニア:元女騎士のポンコツ金髪弓術師
エコ・リーフレット:筋肉僧侶のかわいい猫獣人(かわいい)
ユカリ:元奴隷の毒舌ダークエルフ鍛冶師メイド長
ラズベリーベル:元聖女の関西弁
アカネコ:クソ真面目ミニスカ侍
プリンス:元天網座で空気の読めないモテたがり男
リンリン:元プロゲーマーで世界五位のアウトドア眼鏡男
「プリンス前天網座ですか? 一体なんのご用件で?」
ユカリは俺がプリンスと何をするのか気になるようで、わりと食いついてきた。
「人探しを頼まれていた。ちょうど帝国で見つけたから、会わせてやろうと思ってな」
「なるほど。朝から向かわれますか?」
「できれば」
「では今から使いを出しておきます」
「ありがとう」
プリンスは、リンリンさんが見つかったら会わせろと八冠記念パーティの時にかなり真剣な顔で言っていたから、優しい俺はすぐに声をかけてやろうと思ったわけよ。
まあ、あいつが再び会いたがっている理由なんて大体わかっている。とても褒められた理由じゃない。むしろ。
……いや、それもリンリンさん次第って感じだけどな。最後まできちんと面倒見るっていうなら、俺としては大歓迎である。
ただ、リンリンさん、なんだかもうメヴィオンはうんざりって感じだったからなあ……そこだけ心配だ。
とは言いつつ、一戦くらいは付き合ってもらうけれどもね。
「ところで……ラズ」
「? どしたん、センパイ?」
俺は、晩メシ後の紅茶を楽しみながらソファでゆったりしているラズに声をかけた。
いずれ来るだろう時に備えて、前々から依頼していた品。ラズならば既に手に入れているはずだ。
「例のブツは」
「! そうそう、ええのん入っとるよ~」
やはりな。
ラズはニッコリ笑って、インベントリから一台の“パルムズカム”を取り出した。手のひらサイズのデジタルビデオカメラだ。
「これか! マジで小型のいいやつじゃん。何処にあった?」
「ビターバレー辺境伯が秘匿しとってん。遠回しに、貸してもろてええか~聞いたら、タダでええよ~言うとったわ」
「辺境伯って、スチームかよ。それじゃあ……」
「セカンド卿によろしくお伝えください、やって」
これで「貸し一」ってか。怖いな。
しかしスチームのやつめ、こんなに大事な“アーティファクト”を独り占めとは、なかなか抜け目のないやつだな。
「む……? セカンド殿、それは一体なんのアイテムだ?」
俺がパルムズカムの電源を入れてモニタ部分を無駄にパカパカさせていると、シルビアが興味津々に尋ねてきた。
「よーし、シルビア。じゃあここに向かって、何か面白いことを言ってくれ」
「むっ、面白いこと?」
「ぁあああああああ早く!!」
「ええ!? ちょっ、な、ななっ、なんっ、何、にゃにを!?」
「カット!」
いいのが撮れたぞ。
「きゅ、急に言われても無理だ……」
「そんな落ち込むな。十分面白かった」
「何?」
「これを見てみろ」
俺はシルビアの隣に移動して、パルムズカムをいじり、先ほどの録画を再生した。
『――な、ななっ、なんっ、何、にゃにを!?』
すると、目を回してあたふたするシルビアの映像と音声がパルムズカムから流れる。可愛い。
「なぁ!? ……ん、だ、これはっ?」
「パルムズカム。まあつまり動画を撮影してそれを見れる機械だな」
「動画だと? 写真が動いているのか?」
「写真は知ってんのか」
「うむ、馬鹿にするな。写真くらい知っている」
「じゃあ簡単だ。こりゃあ、写真を超連続で撮って、超高速でパラパラめくってるだけだ」
「なるほど……? しかし凄い原理だな。こんな小さな機械にそれほど複雑なものを詰め込めるのか」
「まあ不思議だよなあ。ただマインの使ってたマイクの方がもっと不思議だがなあ」
「むぅ、私にはマイクよりもこのパルムズカムの方が不思議に思えるな」
シルビアにとってはそうらしい。いやでも、スピーカーもなしに音声がデカくなるマイクの方が摩訶不思議なのは確定的に明らか。よって俺の勝ち。
「……と、ところで、その、さっきの動画は消せないのか?」
俺が勝利の余韻に浸っていると、シルビアは顔を赤くしながらそんなことを聞いてきた。
あたふたが動画に残されると思っていなかったから、恥ずかしいんだろう。
「嫌」
「セカンド殿! 私は消せるか消せないかを聞いているのに、嫌というのはどういうことだ!」
「あっ、しまった。つい」
「消せるんだな!? ではすぐに消してくれ!」
「嫌だ。可愛いから残しておく」
「か、かわぁっ……!?」
俺の不意打ちで、シルビアの顔がゆでだこのように赤くなる。打てば響くとはこのことだな。
「なあなあ、センパイ。ほんでそれ、なんに使うん?」
耳まで赤くなっていくシルビアの様子を見てニヤニヤしていると、ラズがそう尋ねてきた。
何に使うか、か。そりゃ決まってる。
「試合を撮って記録しておく」
「せやろなあ……ちなみに、何位のどなたはん?」
ラズは、既になんとなくわかっているような感じで、こっそり小声で聞いてきた。流石、鋭い。
まあ、俺が試合映像を残して研究しなければならない相手など、相当に限られてくるからなあ。
「アオさん」
「嘘やろ!? 五位やん!」
「今はリンリンさんと言うらしい」
「こ、これまた可愛らしい名前やな……」
傲嬌公主。世界ランキング第五位の強豪ランカー。最高レート2670のプロゲーマーだ。
この世界では、リンリンさん……か。いや、なんかこれは略称だった気がするが、まあいい。彼もサブキャラでこちらへと転生し、「リンリン」と名乗っているのだ。
リンリンさんは現在、帝都西の海岸沿いにあるログハウスで暮らしているはずだと、メルソン・マルベルがそう言っていた。
会いに行かないわけがない。そして、試合しないわけがない。更に言えば、試合を記録しておかないわけがない。
間に合ってよかった。ラズには感謝のしるしに何かプレゼントをあげないとな。
「よし、じゃあラズ。撮影係で同行してくれ」
「おっしゃ! うちに任しとき!」
あ、そうそう。もう一つおまけに――
「皆。動画、期待しておけ」
――誰にも見せないわけがない。
明くる朝。リビングのソファには、黒髪に紫色のメッシュの入った革パン革ジャケのスカしたバンドマンみたいなイケメンが、偉そうに腰掛けていた。
間違いない、プリンスだ。
いや、まあそれはいいんだが……早過ぎる。まだ朝メシ前なんだけど。
「……早いよ。とりあえずメシ食おう」
「てめぇーが朝っぱらから僕を呼びつけたんだろ!?」
いや知らん。ユカリだろ。
「まあいいじゃん。メシ食おうメシ」
「チッ……相変わらずむかつく野郎だな、てめぇー」
お前こそ相変わらずカルシウム足りてなさそうだな、と言いかけてやめた。朝からうるさくすると皆に怒られる。
「で、なんの用だよ?」
プリンスはユカリが運んできてくれた美味しそうなモーニングプレートに目もくれず、本題を急ぐように言った。
「マナーがなってないな坊主」
「僕の方がてめぇーより年上だ!」
そういえばそうか。
「マナーがなってないな年上」
「うるせぇー!」
あー、いい。いいね、プリンス君。それでこそプリンス君だ。
俺はプリンスを無視しつつ、エコと声を揃えて「いただきます!」をして、ベーコンエッグをバタートーストと一緒に一息でぺろりと平らげる。
「些か無作法に御座います師よ」
背筋がピンと伸びているアカネコに、一瞥とともに怒られた。
だって腹減ってたんだもの。
「……チッ」
プリンスは俺たちが食べる様子を見て腹が減ってきたのか、舌打ちを一つ鳴らしてから食べ始めた。
湯気の立つコンソメスープから口に付け、「あちっ」とやってから、二度目の舌打ち。こいつ舌打ちが癖なのかな。
「リンリンさんが見つかった」
「ブッ――!?」
おっと、タイミングが悪かったか。申し訳ねえ。
「ゲホッ! てめぇー! クソ! 狙ってただろ!」
「すまん、わざとじゃない」
これは帝国旅行の間に気付いたことだが、どうも俺は会話の主導権を握ると相手の反応を見たくなる癖があるようだ。
試合と会話をごっちゃにしているがゆえの悪癖だろう。
いや、でも、反応を見たくなる相手っているよな? 俺にはいる。特にシルビアとプリンスとライトの三人は、太鼓とシンバルとトライアングルくらい響くから好きだ。
「チッ……まあいい。で、リンリン先生は今何処にいる?」
プリンスは布巾で口を拭うと、前のめりに尋ねてきた。
いいぞ~。なんだか敵のアジトに乗り込む刑事みたいだ。
「帝国だ。ヤサも割れてる」
「……僕にもわかるように言え」
「……住んでる場所はもうわかってるって意味だ」
「へぇー」
なんか……いまいち締まらんな。
そうだ、プリンスのやつ、反応はいいけど空気が読めないんだったか。
「プリンス、お前はどうかそのままでいてくれ」
「は?」
誰かさんに教わるのはいいが、決して自分を見失ってはいけない。
すぐムキになる空気の読めない自己中で自己愛の強いお前にこそ、お前の色が出せるんだ。その色が、最後の最後、お前に力を与えてくれる。ここぞという大一番の武器になる。
でもな、そういうことは、誰も教えちゃくれないんだ。そして、誰かに教わっちゃいけないことなんだ。
リンリンさんと再会し、お前は多分、せがむんだろう。過去に吸った、あの甘い蜜をもう一度と、強請るんだろう。
それだけなら、駄目だ。ただコツを聞くだけでは。
だが、リンリンさんが、最後まで責任を持って導いてくれるなら……大アリだ。
「じゃ、頼みに行くか」
俺はエコと一緒に「ごちそうさまでした」をしてから立ち上がり、あんこを《魔召喚》しながら、ラズに目配せをする。
ラズはパルムズカムを片手に準備万端のようだ。
よし。では、いざリンリンさん――。
「――ここがリンリンさんのハウスだ」
朝メシ食ってすぐ出発したからか、かなり早めの到着となった。具体的には朝の十時だ。場合によってはまだ寝てる可能性もある。
俺たちは海岸沿いの防砂林の奥にある立派なログハウスを見上げ、暫し沈黙した。
いや、正確には、俺とラズが躊躇した。
なんだか入り難いのだ。そこそこの知り合いだからというか、まあまあな旧友だからというか、なんというか。暫く会っていない幼馴染のような感じの気まずさがあった。
「ここか。リンリン先生ぇー! 邪魔するぜぇー!」
……いや、流石だわプリンス君。何がとは言わないけど。
玄関の鍵は開いていて、プリンスは躊躇なくずかずかと乗り込んでいく。
よし、結果的に助かった。俺とラズは便乗して、プリンスの後に続いてログハウスの中へと入った。
そこには――
「んはぁ~よしよしよしよし! パォちゃん散歩行きたいの~? パォちゃん散歩行くの~? はぁああ~可愛いねぇパォちゃんねぇ~! よーしよしよしよし! 尻尾ふーりふりふりふりふり! んんんんんんん~!! んあ~可愛い! ん可愛い! 可愛い! 可愛いねぇ!? 可愛いねぇ~!? あー可愛っ……」
――恍惚の表情で黒毛のラブラドールレトリーバーに頬ずりしながら可愛い可愛いと連呼する眼鏡男の姿があった。
「……………………」
猫っ可愛がりだ。犬だけど。
こんな人だったっけ、アオさんって……。
「リンリン先生! リンリン先生!」
「あかんて! そっとしとき!」
究極に空気の読めないプリンスが突撃する。
「!!!?」
ラズが必死に止めたが、残念、リンリンさんは俺たちに気付いてしまったようだ。
「………………み、見ました?」
「バッチリ」
「……いや、違うんです」
「違わへんやろなんも……」
俺の即答とラズのツッコミで、リンリンさんはもう誤魔化せないと悟ったのか、「し、失礼」と一言、洗面所と思しき場所へ逃げていった。
「待とう。俺たちが悪い」
「は?」
「ええから、ええから」
「お、おい……」
リンリンさんを追いかけていきそうだったプリンスを力尽くで制止して、俺たちはリンリンさんのメンタル回復を待った。
帰ってきたのは、それから十五分後のことであった。
「リンリンさん。すみませんでした、突然」
「ほんま、堪忍な。こいつが考えなしに突っ込んでってん」
「ぐぇっ」
俺とラズは、プリンスと一緒にリンリンさんへ頭を下げる。
不法侵入、ダメ、ゼッタイ。
「いいです。大丈夫。気にしてない」
リンリンさんは、なかったことにしたようだ。オッケー、俺たちもそれに合わせよう。
「ところで、なんの用ですか? セカンドさん。プリンスも一緒で」
話題を逸らすように、いきなり核心へと迫るリンリンさん。
オッケーオッケー、合わせます。
「こいつがもう一回リンリンさんに会いたいって言うんで、連れてきたんですよ」
「プリンスが」
リンリンさんは「へぇ」と興味のなさそうな顔でプリンスを見る。
プリンスはリンリンさんと正面から向かい合うと、俄かに真剣な顔をして口を開いた。
「リンリン先生」
「別にオレは先生じゃない」
「いえ、僕にとっては先生です」
「あ、そう」
普段のプリンスからは信じられないような、しっかりとした丁寧語。
一方、リンリンさんの返事は冷たい。プリンスを面倒くさがっているような感じだ。
「リンリン先生。僕にもう一度、糸操術を教えていただけませんか」
そして……言った。
予想通りの言葉。プリンスは、強請った。リンリンさんにせがんだ。
もう一度、あの甘い蜜を吸わせてくれ――と。
「あ?」
「で、ですから、もう一度、僕に糸操術を――」
「冗談。オレ、何も教えてない」
「いや、教えてくれたじゃないですか! 松明戦法とか! 龍ノ髭とか!」
「そんなの、聞かれたから答えただけだが」
「!?」
…………やっぱりなあ。
ツンデレ戦法など、天網座戦においては常識もいいところ。リンリンさんには、プリンスに【糸操術】を教えているつもりなど全くなかったのだろう。
「じゃ、じゃあ……僕にはもう、糸操術のことは」
「オレ知らない」
「っ……!」
あーあ。フラれちゃったねえ、プリンス君。
まあ、リンリンさんの気持ちはわかるよ。“コツ”だけ聞いてこようとする有象無象、プリンス君もそのうちの一人だと思ってしまうんだろう?
きっとリンリンさんは、この世界に来てから、人に何かを本気で教えた経験がない。だからプリンスに教えたがらない。
俺は、シルビアやエコに教えていて、気付くことができた。彼女たちは、真剣だ。いつだって一生懸命だ。そう、教え甲斐の塊なのだ。
「用事はこれで終わり? ですか?」
リンリンさんは早く犬の散歩に行きたいようで、話を切り上げようとしてくる。
まあまあ、ちょっと付き合ってくださいよ。
「あと一件だけいいですか、リンリンさん」
俺が言うと、リンリンさんは「うっ」という顔で、浮かした腰を椅子に戻す。
嫌な予感がしているんだろう。残念、正解だ。
「俺と一試合、お願いしますよ。一試合だけでいいんで、ホント」
「…………う、うーん……」
凄まじく嫌そうな顔をされる。
いや、仕方ない。嫌がられることを承知で頼んでいるのはこちら側だ。
ただ、すまんけども……この機を逃したかねーのよ俺も。
「フラれたら付き纏っちゃうかも」
「!!」
ボソッと囁く。
「メンヘラか!」
ラズの鋭いツッコミを受けつつも、俺は必死だった。
こんな機会、もう滅多にないかもしれないのだ。必死にもなるさ。
「……まあ、一試合だけなら」
「よっしゃ!! そしたら、俺が勝ったらプリンスを弟子にしてやってくださいね」
「あ゛!?」
「俺が負けたらプリンスは弟子にしなくていいです」
「おい! てめぇー! 何勝手に決めてんだ!」
土壇場でするりと新たな条件を追加する。よし、見事に決まった。
しかし、予想外にプリンスが納得いってない様子だ。何故? 俺が勝ったらお望み通りリンリンさんの弟子になれるというのに、不服なのか?
「てめぇーがリンリン先生に勝てるわけねぇーだろ! ふざけんな!」
「……はー」
ああ、なるほど。そういう心配。
「大丈夫だ。いい勝負できるつもりで来た」
「ハッ」
俺がそう言うと、小さくリンリンさんの笑い声が聞こえてきた。
一方、プリンスはまだ納得いっていないご様子。
「馬鹿、リンリン先生の怖さを知らねぇからそんなことが……いや、待てよ? ははーん、わかったぞ。てめぇーだって本当はビビってんだろ? だってよ、いつもは傲岸不遜なてめぇーが、リンリン先生には丁寧語だからなぁ!」
それどころか、謎は解けたとばかりに指をさしてきた。
ここまでされると流石にムカついてくる頃だが、プリンスが相手だと何故だか不思議と腹が立たないんだよなあこれが。そういうキャラだとわかっているからかな。
しかし……リンリンさんは違ったようだ。
「いいよな、気楽なもので」
「……え? 僕が、ですか?」
冷たく嘲笑うように口にする。
「気楽でいいよな、セカンドさんが人間だと思えているうちは……と、言ったんだ」
「!」
聞いてりゃあ、まさかの悪口かい。いや、ある意味、褒め言葉なのか?
「わかりました、やりましょう。ルールはどうします?」
そして、リンリンさんは、どうしてかヤル気になってくれた。
いいねえ。なんであれ、最高に嬉しいよ。
「決闘冠使用の一本勝負、致命傷HP1残し気絶の世界戦ルール。アリアリのマヌキで」
「マヌキ? ああ、なるほど」
俺がルールを宣言すると、リンリンさんはぽんと手を打った。
「帝国の時、レイスで化けてたんですか」
「お、正解です」
「いや、あの時ね、正直死ぬかと……」
「ははは、すんませんどうも」
互いに装備を整えながら雑談する。
「何言ってっか全然わかんねぇーよ」
「あー、世界戦ルールっちゅうのは、まあなんのスキルでも使ってええよ~っちゅうことや。アリアリっちゅうのは、変身アリ召喚アリのこと。マヌキっちゅうのは、召喚のうち、精霊はアリで魔物はナシの意味やな」
頭がハテナのプリンスには、ラズが解説してくれていた。
そうそう、そんで俺の使役魔物の三枠のうち一枠は、死んでしまったがレイスで埋まっていた。つまりリンリンさんは、マヌキと聞いて何故か考え、レイスの可能性に思い当たり、帝国城の廊下で会った時のことを思い出したわけだ。あのセブンの姿はレイスで化けていたんじゃないか、と。
魔物もアリの世界戦は、またいずれ、三対三ができる万全の状態で実現させたいね。
「さて、俺はOKです」
「オレもOKです」
……互いに準備が整った。
ラズは、三脚にパルムズカムを設置して、遠くから俺たちの試合が全て映るように調整してくれている。
そろそろだ。ラズが録画ボタンを押して戻ってきたら、彼女の審判によって、試合が開始される。
まだか。まだか。まだか。
待ち遠しい。待ち遠しい。待ち遠しい。
「お待ち遠さん。ほな、互いに礼――」
「――始め」
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