245 時が止まって、妻とガキと。
ゴルド・マルベル:皇帝
クリアラ・マルベル:皇妃
メルソン・マルベル:皇女・姉
ライト・マルベル:皇子・弟
ナト・シャマン:マルベル帝国将軍・近衛騎士長
シガローネ・エレブニ:マルベル帝国宰相
スピカ・アムリット:マルベル帝国の占い師
セラム:メルソンの狗
ジョー:セブンに洗脳されている衛兵
オリンピア:皇子付き近衛騎士・セブンの側近
「セブン! 遅いぞ! 何してたんだ! シチュー冷めちゃったじゃないか!」
「すまん、ちょっとな。そして温め直してくれ。俺は冷めたやつは嫌だ」
「もうやってる!」
ライトはぷりっぷり怒りながらもシチューを温め直してくれている。
折角なら美味しく食べたいし、ライトとしても折角なら美味しく食べてほしいのだろう。
「ちょっとって、何かあったのか? さっきから廊下が騒がしかったけど」
シチューをかき混ぜつつ、ライトがそんなことを聞いてくる。
うーん、何から話したもんかな……。
「まず皇帝に呼び出されて、そしたら皇帝はスピカに洗脳されてて、俺もスピカに洗脳されそうになって、スピカを捕まえる前にあいつの影の洗脳を解いて」
「待って。いきなり過去最高にわけがわからない。え、何? 父上が、洗脳? スピカに!? は!? ちょっとって何!? セブンちょっとの意味知ってる!? 説明して!」
そこからか、面倒くせえな。
「そこからか、みたいな顔するな!」
げっ、バレてる。
ライトはシチューをかき混ぜるのも忘れて、俺の話に食いついてきた。
「シチュー焦げるぞ」
「いや、もうそろそろ食べられ……って、今はそんな場合じゃ!」
「じゃあ食べながら話そう」
「……あー、もうっ!」
後頭部を三往復ほどわしゃわしゃと掻いて、シチューを火からおろすライト。
二人分の皿にてきぱきとよそって、刻んでおいたパセリを一つまみ振りかけた。
さあさあ、お待ちかね。ライト特製ホワイトシチューだ。
特に何も聞かれることなく、俺のテーブルにはライスが置いてある。対するライトは焼いたパンのようだ。
どうせお前ライスなんだろ? とでも言うかのようなラフな配膳。いやまあ、正直どっちも同じくらい好きだよ。シルビアとユカリにはいつも「お前マジか……」みたいな顔で見られるが、エコとラズは良き理解者である。
「あ美味っ」
「早っ! 早いよ、口に入れてから感想までが」
「そんくらいわかりやすく美味いって。自分でも食ってみろ」
「え? う、うん」
シチューはとてもよくできていた。
ライトも俺に続いてスプーンを口に運ぶ。
「あ、確かに……我ながらだけど」
思っていた以上に美味しかったようで、その顔がほっと和らいだ。
それから数分、料理について話しながら、ライトと夕食を楽しむ。
「それにしても随分落ち着いてるな?」
「いや、セブンのせいだから」
俺の皿が空になった頃、そんな風に切り出してみると、ライトは呆れ顔でそう返してきた。「おかげ」ではなく「せい」なのがライトらしいな。
「じゃあとりあえず要点だけ言っておこう。お前の父親は、スピカに長いこと洗脳されていたようだ。洗脳魔術というスキルで、本人の意思とは無関係に服従させられていた。それがどれほどの期間で、どんなことをさせられて、何が変わってしまったのかは、これから本人に聞いてくる」
「洗脳魔術……もしや父上は、二年前から洗脳されていたんじゃ?」
「どうしてそう思う?」
「僕に異様に冷たくなったのが、二年前なんだ。思い返せば、その頃から帝国の政策は様変わりして、シガローネは宰相にされ、母上は幽閉されている。そうか、そういうことか! 二年前というのは、ちょうどスピカを占い師として帝国城に迎え入れた頃じゃないか……!」
ライトはスプーンを手放し、椅子を鳴らして立ち上がると、わなわなと震えながら拳を握った。
――かと、思えば。ふっと力を抜き、俺の方を見る。
「……まあ、僕が慌てても仕方がないか。セブン、お前に任せるよ」
「!」
おいおい、おいおいおい! なんだよライトおい! お前めちゃくちゃ成長したなあ!
「セブン。一つ頼んでもいいか?」
「おう、なんでも言ってみろ」
「父上は、洗脳の影響で、僕に冷たくしていたのかどうか……」
と、そこまで言いかけて、
「いや、やっぱり、いいや」
ライトは俺への頼み事とやらをやめた。どうしてか吹っ切れたような顔をしている。
「なんだよ、いいのか?」
俺が聞くと、ライトは両の手のひらをサッと上に向けるジェスチャーをして、口を開いた。
「確認したところで、何も変わらないと思って。僕は、僕の道を行くと決めた。父上や姉上からの評価に執着する必要は、もう、ないんだ」
いや、ガチでどうしちゃったんだよ。ここ数日で成長し過ぎじゃないか?
俺が目を丸くしていると、ライトは察したのか、くすりと笑ってこんなことを言ってきた。
「セブンのおかげだよ。気付いてなかったのか?」
「……一本取られたな、こりゃ」
本気で料理人を目指すというわけではなさそうだが、日々のささやかな料理に楽しみを見出すことが、彼の精神的な成長に繋がったのだろう。
なんだか、胸が熱くなるな。
「それで、問題のスピカはどうしたの?」
「ああ、牢獄。お前の親父以外にも、錯乱したスピカとか洗脳されていたスピカの影とかメルソンが連れてきた殺し屋とかが出てきてなんやかんやてんやわんやすったもんだあったが、全部俺がなんとかしておいた」
「す、凄いな。それが本当だとしたら……今日一日、大変だったな、セブン」
「いや、全て一時間くらいで巻き起こったことだ」
「……もう慣れたけどさぁ、僕がシチュー作るより短い時間で解決するのやめてくれない?」
俺のせいでやたらと落ち着き払っているライトが、ジト目で呆れるように言った。
まあまあ、いいじゃない。早いに越したことはないさ。
「ご馳走様」
俺は食後の紅茶を飲み終えて、席を立った。そろそろ約束の三十分が経過しようとしている。
「さて、結局今日も残業か」
ぐーっと伸びをして、一言。
すると、ライトがやれやれといった風に口を開く。
「でも書類が溜まってる時よりは元気そうだよ」
まあね。
「シチューのおかげだな」
「嘘つけっ」
二人して、自然と顔が綻んだ。
「――セブンよ。そちには、なんと礼を言ってよいかわからぬ」
俺が皇帝の部屋にお邪魔するや否や、皇帝は開口一番にそう言って、頭を下げた。
「このゴルド・マルベル、最大級の感謝と敬意をもって、必ずやそちに報いると約束しよう」
これ以上ないほど誠実な態度だ。
皇帝が頭を下げるなど、滅多なことではない。恐らくは、この場に俺とカサブランカしかいないからこそ下げられた頭だ。そう易々と下げてよいものではないことは、俺もわかっている。
「まず、余が洗脳された時期だが……目星は付いている」
「洗脳魔術は相手の肉体に触れた状態で発動すれば必ず成功します。陛下は体の何処かを触られているはずです」
「そちは、カサブランカと言ったか。うむ、そちの言う通りだ。二年前のことよ、帝都一の占い師カールトンが“稀代の占い師”と絶賛し、どうしてもと推薦してきたスピカに、余は興味を持ち、謁見を許した。その際、手相占いをすると言うスピカに手のひらを見せてしまったのだ。思えば、あの瞬間から洗脳は始まっておった」
帝都一の占い師カールトン。皇帝が帝都一と認めるくらいだから、相当に高名な占い師なんだな。
「それで間違いありません。私が彼女と出会ったのは、彼女が奴隷の使用人として仕えていた“ピアニシモ家”です」
「……奴隷。うむ、そうであったな」
モーリス商会のフィリップさんが話していた通りのことがカサブランカの口から出てきた。あの人、確かな情報で商売しているらしい。俺の中でフィリップさんの好感度が1上昇した。
「はい。私はおよそ二年前、暗殺の依頼を受けるためピアニシモ家を訪れた際、給仕にやってきた彼女によって迂闊にも手を触られました。その瞬間から洗脳され、私はピアニシモ家の当主を病死に見せかけ暗殺しました。元より黒い噂のあった家です。相続で揉める中、前当主の不正が次々に明らかとなり、ほどなく取り潰されました。その後、私は彼女と共に占い師カールトンの元を訪ねたのです」
「余に繋がったな」
「ええ。私を洗脳した時より既に、彼女の目的は陛下の洗脳にあったのだと思います」
「で、あるか」
「占い師カールトンもまた、洗脳されております。彼は、自身の後継者はスピカ・アムリット以外にいないと口にし続け、時には新聞社まで巻き込み彼女の偉大さを宣伝し、その結果、陛下への謁見が実現するまで一月とかかりませんでした」
「余も覚えている。当初は、まだ若いのに凄い占い師がいたものだと呑気に考えていたが……よもやこのような裏があるとは」
えげつない話だ。スピカはそのピアニシモ家で途轍もなく酷い扱いを幼少からずっと受け続けていたと、フィリップさんがそう言っていた。まずは当主を殺してやろうと考える動機は、揃い過ぎているほどだろう。
……なるほど。スピカが《洗脳魔術》を習得できた理由がなんとなくわかった。
「暗殺術を持つ奴隷から攻撃を三百回受ける」という習得条件。彼女が幼少から暮らしていたピアニシモ家は、それほどに酷い環境だったんだな。
いや、しかし……十年以上をそこで過ごしているのに、たったの三百回で済むだろうか? そうだとしたら、スピカはもっと早くに《洗脳魔術》を習得しないだろうか? もっと他に習得の方法があるんじゃないだろうか?
そう、たとえば――スピカ・アムリット、彼女は女公爵ルシア・アイシーンの隠し子であり、彼女の死と同時に《洗脳魔術》を引き継いだ、という可能性だ。
あくまでも俺の予想である。だが……ああ、そちらの方が、俺はまだ納得できる。ウィンフィルドが言っていた、ルシアが何処かで使っているはずの一回。それはもしかして、スピカに使ったのではないかと、俺は不意にそう感じてしまったのだ。
今回の件でハッキリしたではないか。万全の洗脳対策は、一度洗脳を受けてしまうこと。もしもルシアがスピカを愛していたのならば、スピカが幼いうちから対策を施しておくというのも有り得ない話ではない。何故ならルシアは、ユカリのことも結果的に守っているのだから。
ルシアはスピカを政争から遠ざけるべく、モーリス商会を使って帝国へと送ったのではなかろうか。
そして、こう洗脳した。「《洗脳魔術》のことについて忘れろ」――と。
成長タイプは遺伝する。ノヴァの一件でそれは明らかだ。であれば、《洗脳魔術》のようなNPC固有のスキルも遺伝するのではないか? スピカは、生まれながらに《洗脳魔術》を習得していたのではないか?
ゆえに、ルシアはスピカに《洗脳魔術》を忘れるよう洗脳をかけ、王国から遠ざけたが……何かの拍子に洗脳が解け、スピカは《洗脳魔術》の使い方を思い出してしまった。
……俺のぶっ飛んだ妄想かもしれない。だが、辻褄は合ってしまう。
それに、何より、俺がそうかもしれないと感じている理由は――スピカが手にたくさんつけていた指輪。
ルシアもそうだった。濃い化粧も、色とりどりの宝石も、着飾る服の趣味も、俺の知っているNPCルシア・アイシーンとよく似ていた。
――その結果が、これか。
なんだか、やるせなくなる。
深い愛情から行ったことなのかもしれない。我が子を安全な場所へと、せめて生きていてほしいと、断腸の思いで生き別れたのかもしれない。
だが、実際はこうなった。スピカは歪んだのだ。誰にも救えないほど強く、複雑に――。
「…………」
この推理、皇帝とカサブランカには、黙っておこう。今後、《洗脳魔術》については、あまり話すべきではない。その誘惑に抗えない者も、世の中にはいる。
今この会議の場で大事なことは、彼女の生い立ちではなく、彼らの過ごした二年なのだ。
「ふぅ……帝国はこの二年で酷く変わったものだ」
皇帝は瞑目してやや俯き、ため息をついた。そりゃあ、ため息の一つや二つ、つきたくもなるだろう。
ところで、スピカは今までに何人洗脳している? カサブランカと、占い師カールトンと、皇帝と、俺と、リンリンさんで、五人か? いや、俺は結局かからなかったから、四人か。ちょうどウィンフィルドが予想していた上限回数だな。
「余はシガローネを宰相にしてしまった。娘ばかりを贔屓し、息子を冷遇してしまった。妻を幽閉してしまった。二年もだ。あまりにも長すぎる。ああ、思い返せば……愚行ばかりだ」
額に手を当て、俯いたまま後悔を口にする皇帝。
「……バルにも援軍を送らず見殺しか。あの時、シガローネに出撃さえさせていればな」
おっと、バルだと? それはかつてキャスタル王国にいた帝国の狗、バル・モロー宰相のことか?
「バル、とは?」
「セブンは知らぬか。まあ無理もない。バルとは、余の旧友である」
「旧友……」
「キャスタル王国中枢へと潜り込み、第一王子を担ぎ上げ傀儡にし、国を掌握する計画であったが、志半ばにして討たれたのだ」
間違いない。バル・モローの話だ。
「元より、計画の遂行が難しいようであれば帝国へ帰ってこいと命令していた。連絡も頻繁に取り合い、計画は上手くいっていた。だが、二年前からは……」
チーム限定通信。確かにあいつは使っていたはずだと思っていたが、ウィンフィルドは「可能性は少ない」と言っていた。軍師がそういうのなら、本当に可能性は少なかったのだろう。
なるほど……二年前までは、使っていたんだ。皇帝が洗脳されてからは、バルからの一方通行となっていた。だから俺が「連絡手段があるのだろう?」とバル・モローを煽った時、やつは黙りこくるだけだったのだろう。
「バルは深入りし過ぎたのだ。ああ……そうか、ようやく気付けた。シガローネの言っていた通りだ。裏の手など使わず、真正面から叩くのが帝国のやり方であると。あやつは余が洗脳されていた間、なりたくもない宰相となってからも、ずっと変わらずに余を正そうとしてくれていたのだな……」
皇帝は反省したのか、ようやく俯いていた顔を上げた。
「そして、そちだ。そちがいなければ、余はどうなっていたことか。セブンよ、そちとシガローネは、余が洗脳され、どうしようもない時であっても、誠心誠意、尽力してくれた。改めて礼を言う。ありがとう……!」
本当に感謝しているんだろうなあ、この人。俺は潤んだ瞳の皇帝から再び礼を受け取った。
「陛下。一つ気になることがあります」
「おお、なんであろう? なんでも申してみよ」
なんだか答えてくれそうな空気になったので、気になっていたことを聞いてみる。
「何故、スピカはメルソン殿下を優遇し、ライト殿下を冷遇し、皇妃陛下を幽閉し……ええと、その」
「気にするな、申せ」
「はい。何故、陛下のことを“お父さん”と呼んでいたのかと」
「……それか」
皇帝は途端に厳しい顔をする。
いやでも、これは気になるでしょうよ!
ちょっとヤバイかなと思ったけど、好奇心が勝ってしまったんだ。怒らせてないといいんだが……。
「カサブランカ。そちはもう、察しはついているな」
「はい」
すると、皇帝はおかしなことに、カサブランカへと話を振った。
カサブランカもまた、何故か頷く。
なんだ? 単なる父娘プレイじゃないのか?
「彼女は、ずっと……幼い頃に得られなかったものを追い求めておりました」
「!」
幼い頃に得られなかったもの。
それが、父親だと言うのか?
「彼女の精神は、子供です。子供のまま、時が止まっているのです。到底、真っ当な成長ができるような環境では、ありませんでしたから」
「余には、ずっと甘えていた。今日はこれを頑張ったから褒めてほしい、今日はあれが嫌だったから聞いてほしいと、幼い娘が父親に甘えるような態度であった」
「対して、己を地獄へと追いやった母親という存在を憎んでいます。ゆえにクリアラ皇妃陛下を幽閉するに至ったのです」
「メルソンには、同情があった。自分のように父親のいない思春期を過ごさせるのは良心が痛んだのであろう。対するライトには、嫉妬があった。二年前はまだ十四歳、余に甘えておった頃だ。加えてあの生意気な性格、スピカはそれに腹を立てていた。これ見よがしに、余を独り占めしたかったのであろう」
「陛下の掲げる実力主義を平和主義に転換したのも、そうして戦争を怖れ徹底的に回避していたのも、“お父さんのいる豪華絢爛な生活”を維持するという、ただそれだけの理由でしょう」
「うむ。バルへ援軍を出さなかった理由も、シガローネを将軍から宰相として戦略に口出しさせぬようにしておった理由も、何もかも上手くいっている今の生活を守るためであろうよ」
「豪華絢爛な生活は、奴隷生活の反動でしょう。戦争は、怖かったのでしょう。セブン閣下に執着したのは……恐らく、あれが彼女の初恋だったのでしょう」
…………そうか。
二年間、スピカの最も近くにいた二人が言うのだから、そうなんだろうな。
「そう、でしたか」
ああ、なんだかなぁ……誰が悪いとか、悪くないとか、あまり考えたくはないが。
これは……酷いとしか、言えない。
「セブンよ。そちがなんと言おうと、余はスピカを極刑に処する。この意思は変わらぬぞ」
「いえ、同情しているわけではありません」
「では、その顔は、一体何を申したがっておる?」
「ただ……」
ただ。
「死ぬほど胸糞悪ィだけです」
「……で、あるか」
静かに瞑目して頷く皇帝も、俺と同じ気分のようだった。
俺は、スピカの生い立ち、《洗脳魔術》に纏わるルシア・アイシーンについての推理をしてしまったからこそ、このような気分になっている。それと同じように、皇帝もまた、スピカと本当の父娘のように接してきた二年間があるからこそ、このような気分になっているのだ。
カサブランカの表情は、流石はプロの暗殺者と言うべきか、ぴくりとも動いていない。だが、その心の内は、ひょっとすると俺と皇帝よりも酷いものかもしれない。彼女は、実の妹を殺されていると言っても過言ではないのだ。
「そろそろ、終わりましょうか」
非常に陰鬱な空気になったので、俺は解散を提案した。
「で、あるな」
皇帝は頷き、立ち上がりながら口にする。
「では、明日の朝、全臣下を集め、余の口から真実を伝えるとする」
全て話すのか。もし他の国でこんなことが起きたら、殆どの国が隠蔽すると思うが。まあ、それも帝国らしいっちゃらしいなあ。
「セブン、カサブランカ。今日は本当によくやってくれた。ゆっくりと休むがよい」
「はい」
皇帝の感謝の言葉をまた聞いて、俺とカサブランカは部屋を後にした。
「待て、セブン」
が、何故か俺だけ呼び止められる。
「どうしましたか?」
「うむ。今のうちに伝えておこう。明日のことである。そう、まさに明日だ」
皇帝は一歩近付き、俺の目を真っ直ぐに見て、口にした。
「――余の盃を受けよ」
「…………は?」
脳がフリーズする。
盃? 何それ? なんで?
様々な疑問が湧く中、皇帝は畳み掛けるように、こう言い放った。
「親子の盃であり、継承の盃である。セブンよ、そちは余の息子となり、次代の皇帝となれ――」
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