190 天網座戦 その1
【糸操術】
《龍王糸操術》 拘束した対象を限定に最も強力な単体攻撃
《龍馬糸操術》 何本もの糸を同時に放射し触れた対象を強制拘束
《飛車糸操術》 束ねた糸で非常に強力な単体攻撃
《角行糸操術》 糸を針のようにして強力な貫通攻撃
《金将糸操術》 半径4メートル以内の対象を糸で拘束する
《銀将糸操術》 束ねた糸で強力な単体攻撃
《桂馬糸操術》 一定時間、魔物や人間や人形を糸で操る
《香車糸操術》 糸を針のようにして貫通攻撃
《歩兵糸操術》 束ねた糸で単体攻撃
(金+香or角の複合が可能)
「――え」
合羽女の膝蹴りを受けて悶えていたアロマは、頭上から合羽女がこぼした小さな声を聞き取った。
それは、何か有り得ないものを目にした時に出るであろう、困惑と恐怖の声。
「どうして……!?」
そこに、焦燥が加わる。
合羽女が目撃した、ここにいるはずのない男は、降りしきる雨の中を静々と歩いていた。
「――どうしてって、何がだ?」
「…………!」
男の声を聞いた瞬間、アロマの目が大きく見開かれる。
それは、間違いなく、一年以上も前からずっと、彼女が恋焦がれていた声。
「何故お前がここにいる!? 今頃は自宅でッ――」
「鯵釣り行こうと思って」
「はぁ!?」
セカンド・ファーステスト――合羽女が最も出くわしたくなかった人物だ。
合羽女は、明日の天網座戦が控えているにもかかわらず何故こんな雨の中釣りに行こうと思い立ったのか、だとしても何故こんなところに来ているのか、そもそもどうやってこれから釣り場に行こうというのかと、一気に噴出したツッコミを瞬時に飲み込んで、興奮状態のまま言葉を続けた。
「ふざけないでよッ……計画が台無しじゃないッ」
ぶつぶつと、独り言のように吐き捨てる。
「いっ……!」
アロマの手首が強く握りしめられ、アロマは思わず悲鳴をあげた。
合羽女の力はかなりのもののようで、その手首は赤く腫れあがっている。セカンドは「やめてやれ」と一言、声をかけた。
「…………」
そこで、ニィ――と、合羽女は嫌らしく笑う。
「ちょうどいい、紹介するわ。こいつは“人質”。お前、明日の試合、負けなさい」
「なるほどそういうことか」
「あら、理解が早くて嬉しいわ」
「嫌だと言ったら?」
「……こいつの指の爪、一つずつ剥いでやる」
「怖っ」
セカンドが眉をひそめて嫌そうな顔をすると、合羽女はグイッとアロマの腕を引っ張り上げ、後ろに三歩後退する。
直後、セカンドの後方からファンクラブの女子生徒六人が現れた。
「――え゛!?」
流石と言うべきか、六人全員が、その後ろ姿だけで合羽女と対峙する男の正体を目ざとく見抜いたようで、驚喜の顔を見せる。
しかし、今はそれどころではない。副会長が拉致される瀬戸際なのだ。
「せ、セカンド様! アロマさんが連れ去られそうなんです! 力を貸してください!」
「あっはは! ほんっと馬鹿ねぇお前ら! 無理よ無理! いくら五冠でもこれだけの人数を護りながら戦えるわけないでしょ!?」
合羽女が笑いながら懐から取り出したのは、短剣。
彼女ほど攻撃力の高い者なら、スキルを使わずに短剣を急所へ突き刺しただけで、HPとVITの低い魔術師である彼女たちにとっては致命傷になりかねない。
一見して、人数有利の場面……だが、しかし。
注視すべきは人質。今、この場において、それは七人へと増えたのだ。
「おおっと! 逃げようなんて思わないことね。お前らが一歩でも動いたら、こいつの首がパックリ割れるわよ」
ファンクラブの女子生徒たちは、合羽女の一言で、攻めることも逃げることもできなくなった。
足手まといだ。よりによって、敬愛するセカンドを邪魔してしまっている。彼女たちは、何も考えず無防備に追跡してしまったことを俄かに後悔した。
「あ、貴女……一体、何が目的なの……?」
不意に、手首の痛みに顔を歪めながら、アロマが口にする。
合羽女は、しばしの沈黙の後、こう答えた。
「……全ては、プリンス様のため。プリンス様に愛していただくため」
陶酔しているような、蕩けた声だった。
空気が一瞬にして凍り付く。
ドン引きだ。路地裏にいる全員が、この合羽女は頭がおかしいのだと直感した。
……ただ、セカンドだけは、どうにも様子が違う。
彼は「へえ!」と一言、興味深そうに、こう続けた。
「女にここまで言わせる男なら、さぞかし凄いんだろうなあ?」
セカンドの視線は、合羽の女ではなく――上。
屋根の上に潜む、合羽の男へと向けられている。
「こっちを見なさい! 首に刺さるわよ! ほら、早く明日負けると誓いなさい! 誓え!」
「まあまあそう焦るなってー」
牙を剥き出しにする合羽女と、突如として何故か上機嫌になったセカンド。
この状況でどうしてそんなに明るい声を出せるのか。
アロマにとっては、合羽女の狂い様よりも、首に突き付けられている短剣よりも、そちらの方が余程気になって仕方がなかった。
そして、セカンドは、更に意味不明な言葉を口にする。
「――よし、じゃあ、プレ天網座戦と行こうか」
* * *
《桂馬糸操術》
一定時間、魔物・人間・人形などを糸で操るスキル。
この時、操られている側のステータスは、操っている側の80%のステータスが適用される。
……雨のせいで、糸は非常に見えにくい。だが、合羽女の洗練され過ぎた動きでハッキリとわかった。屋根の上の男が、この合羽女を《桂馬糸操術》で操っているとみて間違いない。
全く、期待させてくれる。
【糸操術】では、STRは上がらない。つまり、80%のステータスで魔術師の手を軽く握るだけで捻挫させるようなSTRとなれば、それなりに他のスキルを上げているということの証左。
その上で、肝心の【糸操術】の研鑽も怠っていないと感じた。ここまで綺麗に他人を操作できている《桂馬糸操術》は、なかなかお目にかかれない高等技術である。多分、屋根の上の男は、桂馬以外も腕が立つのだろう。
さあ、というわけで、プレ天網座戦の始まりだ。
「アロマ、VITは?」
「さ、38」
ということは、えーと大体……
「プリンス君、STR200~250くらいかあ」
「!?」
初めて、屋根の上の男が動揺を見せた。
あれがプリンス君で間違いなさそうだ。
さて、攻撃の手は緩めないぞ。
「AGI400前後、SP750前後、となるとDEXは400~500の間でどう?」
移動距離と移動速度、その緩急、《桂馬糸操術》九段における使用中のSP消費量と、行動を止めたタイミング、それらによってぼんやりと浮かんできたAGI・SPからどのような成長タイプでどのようなスキルをどのように上げているのか大まかに予想し、おおよそのDEXを導き出す。
ぴたりと言い当てることはなかなか難しいが、経験からくる“勘”でなんとなーくわかってしまう。
「458か?」
「!?!?」
どう? ピタリ賞? そのようだね。
【糸操術】の火力は、主にDEXが影響している。せっかく秘密にできていたDEXが暴かれたということは、すなわち、手札が一枚減ってしまったということ。なかなか痛いでしょ?
「無視するなセカンドッ! 刺すわよッ!」
なんだ、今いいところなのに合羽女がうるさい。
「なあ、多分だけどさ、俺の軍師が、人質をとって負けを要求するとしたら、こうする」
「は?」
「一人殺して、後はだんまりだ」
「……!」
そもそも、お前らは殺意なんてない。害意すらどうだか。「人質ごっこ」がしたかっただけだろう。
「――それは、大当たり、かな」
「おい、神出鬼没だな」
「セカンドさん、あるところ、軍師もまた、あり、だよっ」
突然どこからともなく現れたウィンフィルドが、そう言ってきゃる~んとウインクした。クールな長身美女がそんなことしてみろ、ヤッベェぞ。
そしてさらにヤベェのが、ウィンフィルドめ、今度は俺の耳に顔を近づけてこしょこしょ話ときた。
さて、どんな面白い話を聞かせてくれるんだろうか。
「ね、プリンスくんって、自分で点けた火を、自分で消したかった、ぽくない?」
「…………あっ」
うわ、そういう……。
え、じゃあ何か。自分の女に協力してもらって、自作自演していたわけ? 自分で作ったピンチに、自分で颯爽と駆けつけて、アロマたちにイイトコ見せようとしてたと?
「……何ゆえ?」
「あー……」
尋ねてみると、ウィンフィルドは言いづらそうに口を開いた。
「モテたかったん、じゃ、ないかなあ」
「納得」
あ~。そういうやついるわ~。自分が一番モテてないと気に食わないってやついるわ~。
「うん……だが、プリンス君、恥ずかしがることはないぞ」
一気に見る目が変わった。
「気にするな。そういうやつは強いって、俺よく知ってるから」
そう、そうなのだ。そういうやつほど、変な強さがある。
何故かって、嫉妬かなんか知らないが、ちょっとしたファンの獲得、あわよくば更にモテたいという、そんなちんけなことに、ここまで努力できる人間なんだ。
動機は不純で、方法はひん曲がっていても、努力は努力。つまりプリンス君は、人生におけるありとあらゆる場面で、時間と労力を惜しまずきちんと努力できる人間なのである。
モテるために【糸操術】が得意だって、いいじゃないか。重要なのは、その執念で如何にのぼり詰められるかだ。
「ぷ、プリンス様を、馬鹿にしてッ……許せないッ!」
「してないしてない。むしろ褒めていた。というかいい加減その手を放せ」
アロマがかわいそうなので、そろそろ解放してやろう。
「放すわけないじゃない! こいつは人質よ! 助けたければ負けると誓え! そしたら明日、返してやるわ!」
「話にならねえから手ぇ出すけどいいか?」
「やってご覧なさい! その瞬間、こいつの首が――」
「あ、そう」
「!」
俺が一歩踏み出すと、合羽女は左足を引いて短剣を持つ右手に力を入れた。おいおいマジで刺すつもりかよ。プッツンしてやがる。
でも、なるほど、プリンス君ったら考えたなぁ。合羽女を動かしている《桂馬糸操術》の糸を断ち切ろうにも、雨のせいで視界が悪く正確な場所がわからない。かと言って糸があるだろう合羽女の頭上付近を広範囲に攻撃できるスキルとなれば、準備完了から発動まで時間がかかる。
方法はいくつかある。【弓術】で合羽女の右腕を肩ごと吹き飛ばすか、《変身》の無敵時間を利用して合羽女をアロマもろともダウンさせるか、それとも、あんこ大先生にお願いするか。
確実なのはあんこだが、しかし「プレ天網座戦」とか言ってしまった手前、【糸操術】しか使いたくないところ。
じゃあ、こうしようか。
「馬鹿がッ! 当たらないわよ、そんなもん!」
俺がインベントリから取り出した糸を前方へと伸ばした0.3秒後、合羽女はアロマの体を盾にして防御しながらその首を掻き切らんと右手に力を込めた。
「きゃっ!」
悲鳴をあげたのは、女子生徒の一人。
明らかに、短剣が刺さった。そう思わずにはいられなかったのだろう。
しかし――
「……ぐ……ッ!?」
「へ……?」
ぶるぶると、右手の筋肉に力を入れるあまり、震える合羽女。
対して、わけがわからないという顔で、合羽女の短剣をふわりと摘んで押さえるアロマ。
「桂馬糸操術がご自慢なんだろう? 実は俺も自慢なんだ」
これ見よがしに腕自慢してやろう。
短剣をグイと内側にひねり、ガラ空きになった脇へ右手を沿わせながら飛び込み、くるりと合羽女の背後まで回り込む。短剣を持つ手首を握り、保持したまま左手を裏側から肘にあて、右向きに回りながらしゃがむと……。
「一丁上がり~」
ドサリと、合羽女はなすすべなく地面へうつ伏せに倒れ、ぽろりと短剣を落とした。
この状態で右手首を持ったまま立ち上がり、肩を踏んでおいてやれば、身じろぎ一つ取れない。
うーん、久々にやったが、相変わらず素晴らしい糸捌き。我ながら惚れ惚れするね。
「な、な、何、を……ッ」
何をって、俺がアロマを《桂馬糸操術》で操っただけだ。
アロマが自発的に動いているように見えただろう? 操っているように見えないくらい、自然な動きだっただろう? 反射神経、動体視力、空間把握能力、操作技術、どれをとっても文句のつけようがないだろう?
あーキモチィー。女の子たちと美女精霊の前でこの技術を披露できるなんて、最高だね。
「切っとこ」
アロマに短剣を拾わせ、合羽女の頭上にある糸を断ち切る。
瞬間、合羽女はぐたりと脱力した。気絶だ。桂馬の糸を切られるとこうなる。
「はっはっはー、スーパー・アロマ見参」
「あ、わ、ちょ、ええっ」
戯れに、カッコイイポーズをとらせてみた。
アロマは困ったような声を出しつつも、何故か顔を赤くして満更でもなさそうな表情だ。
「セカンドさん、あの、アロマって子、知り合い、なの?」
「第一宮廷魔術師団にいたアイリーさんの妹だ。特別臨時講師をやっていた頃、そういえばアロマ宛にサインを贈った記憶がある」
「ふーん」
王立魔術学校に潜入していた頃、スライムの森での野営訓練で班が同じになった女子生徒アロマ・ヴァニラ。こいつの案内のおかげで盛大に迷子になって結果的に暇を潰せたこともあり、珍しく名前を覚えていた。
つい今しがた、アロマとアイリーさんがよく似ていることに気付き、ふと「アイリー&アロマへ」と書いたサイン色紙のことを思い出したのだ。サインを書いていた時は気付かなかったが、きっと二人は姉妹である。
「……さて、プレ天網座戦は俺の勝ちだったな」
俺は屋根の上にいるプリンス君だろう人影を見上げながら言った。
残念だったね、プリンス君。お前、明日も負けるよ。
お前はこのプレ天網座戦が如何に大切だったか理解できていない。お前が俺に勝てるかもしれない万一の可能性を拾うとしたら、ここしかなかった。マッチポンプに失敗したからといって、人質をとっているお前の方がまだ有利だったんだ。それがなんだ、ステータスを言い当てられたくらいで動揺して、挙句に自慢の《桂馬糸操術》で負けて。精神的に満身創痍だろう? そんなんで明日勝てる方がおかしい。
「お家に帰って泣きながらファンのおっぱいでも吸ってな」
トドメだ。この場から逃げようと足に力を込めた瞬間を見計らって、できるだけ惨めに感じるよう言ってやる。
「…………」
合羽の男は、一瞬だけ、逃げ去る足を止めた。
今更、何を考えているんだろうか。
自分の女を放置して逃げようとしているやつのことだ、きっと碌でもない。
……だが。
「また明日~」
もし、万が一、億が一、プリンスという男が、この逆境を跳ね除けられるようなやつだとすれば。
明日、とても楽しめるかもしれない――。
* * *
「ありがとうございましたっ!!」
ひらひらと手を振って去っていくセカンドとウィンフィルドを、ファンクラブの面々は赤面で見送った。
最後のセリフは「風邪引くなよー」。
全員が「貴方様こそ!」と思ったが、口には出さなかった。
「副会長! 覚悟はできておろうな!」
セカンドが去り、第一声がこれである。
アロマ以外の女子生徒は、興奮状態にあった。
「今回の一件、三万文字のレポートにまとめて発表する義務があります」
「セカンド様に操られるとか……さぞ心地よかったでしょうねぇ?」
「スーパー・アロマ見参……この絶妙なダサさマジ愛おしい」
「というか名前覚えられてんじゃん……名前覚えられてんじゃん!」
「しかも名前呼ばれてたし! それにサイン!? 初耳なんですけどォ!?」
「おまけに手首に手ずからポーションかけてもらっちゃってまぁ羨ましいったらないね」
そして、当のアロマは。
「…………………は…………はぅぅ……」
「ふ、副会長ぉ!?」
胸を押さえて、白目を剥きながら倒れた。
人生最大級のピンチに、現れるはずのない、一番大好きな人が現れた。それだけで、彼女はいっぱいいっぱいだったようである。
まさに、緊張の糸が切れた状態。
「……なぁ、どうするよこれ」
「うーん……どうしましょうねこれ」
路地裏に倒れ伏す女が二人。副会長アロマと、プリンス信者の合羽女である。
女子生徒六人は、だらしのない顔で気絶する副会長はさて置いて、合羽女をどうするか話し合った。
「セカンド様ならどうすると思う?」
「骨のあるやつなら試す」
「わかってるねぇ~お嬢ちゃん。でもそういうことじゃなくてだな?」
「面白いやつなら友だちになる」
「だからそういうことじゃないんだ今は」
「おっぱいの大きさ次第では口説く」
「大喜利じゃねえからこれ」
……最終的に、学校の寮へと連れて帰ることに決めた。
やれやれ――と。つい先ほど、ウィンフィルドの指示で彼女たちファンクラブの護衛についたメイドの一人が、人知れず微笑みを浮かべながら小さく嘆息した。
「それにしてもセカンド様って喧嘩強いよね」
「人質とろうとするやつなんて大したことないと思ってたけど、副会長の様子見てたら結構強かったみたいだし」
「あの、屋根の上にいた人が、プリンス天網座ってことでいいのかな?」
「セカンド様があそこまで確信もって言ってたんだから、間違いないと思う」
「加えてステータスまで見抜いてたしね」
「結構頭いいよねセカンド様」
「いやあれは野生の勘というかなんというか」
「あァ? 何? あたしに喧嘩売ってる?」
「お? なんだ? やろうってか?」
「ハイハイやめやめ」
ファンクラブの面々は、アロマを担いで運びながら、相変わらず姦しく帰っていった。
「……というか、プリンス天網座って」
「その話もやめよ。なんか……気持ち悪いから」
「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ」
暗い部屋で、ひたすら呟く男が一人。
「僕の方が凄いじゃん。僕の方がカッコイイじゃん全然。いやどう見たってさぁ。皆おかしいだろ。正当に評価しろよ。なんなんだよあいつ。あのクソ野郎のせいで全部台無しじゃん。気に入らねぇ。死ねよマジで。アロマも死ねよ。なんだあのクソ女。男に尻振ってメスの顔しやがって。売女が。なんでこうなる? あいつも機転利かせろよせっかく特別扱いしてやったのにクソ役立たずが。僕のファンならもっと頭良く行動しろ。ベラベラベラベラいらねぇこと喋りやがってムカつくなぁ。ほんとクソだわ。どいつもこいつもクソ。はークソクソクソクソクソクソ……」
束ねた糸をびゅんびゅんと振り回し、部屋中の物を破壊する。
男は、ずっとこうだった。
あの男が現れる前も、あの男が現れてからも、ずっと。
「あーあ、僕もう怒っちゃったもんね」
お読みいただき、ありがとうございます。
書籍版とコミカライズもよろしくね。