武田氏家臣団1
どんな能力を持った人間を、どのように配置し動かすか。組織のトップが頭を悩ませる課題である。姓名判断の視点で、歴史上の組織を例に解説してみる。
武田氏の組織のうち、武田信虎時代から晴信(信玄)、勝頼時代について、姓名判断の視点から分析してみる。武田氏の家臣団については、客観的な史料を欠くので、やむをえず『甲陽軍鑑』によった。GoogleWikipediaによると、有力な家臣は41名で、内訳は一門9名、譜代18名、他国14名である。
武田氏は、彼らを他の組織と同様に役割を与え、活動させた。その割り振りが果たして、彼らの天から与えられた能力に合っていたのか、能力を生かしていたのか、生かしていなかったのか、なぜ生かせなかったのかを、姓名判断の視点で検証してみよう。
(1)組織の全体像
人は城、人は石垣と呼ばれた武田氏家臣団の全体像を検証する。まずは姓名判断をして、41名の天命能力を精査しよう。
なお、一人で複数の天命能力を持っている場合があるので、各人数の合計と総数は一致しない。
(a)外交担当
9名。
内訳は、
一門1名、河窪信実。
譜代7名、馬場信春・内藤昌豊・原昌胤・三枝昌貞・小山田信茂・駒井政武・駒井昌直。
他国1名、原虎胤。
外交力は、内には対立緩和と統合を、外には周辺諸国大名との交渉をするべき天命能力である。現実の割り振りと果たして合致しているであろうか。
武田氏においては、当主信虎が外交力を持っていたが、晴信・勝頼は持っていない。その代わり、譜代7名が持っていた。戦国時代というが、リアルの戦いの大部分は外交交渉であり、それが決裂して初めて戦いとなる。命のやり取りを安易にしたくないのは、いつの時代でも同じということだろう。武田氏は、譜代家臣が諸国との外交に当たる体制だった。この日常的な地道な積み重ねで、信濃へ進出した。当主自ら外交力を持つ、織田信長や毛利元就、伊達政宗のような派手さはない。
(b)正義担当
6名。
一門1名、葛山信貞。
譜代2名、甘利虎泰・馬場信春。
他国3名、小幡信貞・横田高松・山本勘助。
正義力は、正しいことを様々な障害をはね除け徹底的に貫く天命能力である。妥協を許さないので、とかく独善に陥り人間関係に軋轢が生じることが多い。しかし困難を突破するには、不可欠の能力である。猛将と呼ばれることが多い。他国出身者を多く当てたのは、やはり軋轢を怖れたのであろう。
(c)基礎担当
5名。
一門3名、武田信繁・一条信龍・海野信親。
譜代1名、小山田信有。
他国1名、小幡憲重。
組織の下支えをする天命能力である。地味だが、いないと組織は砂上の楼閣と化してしまう。
武田氏は、この大事なところに一門が入っている。天命能力を十二分に生かしているといえる。