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「まぁ、これで少なくともしばらくの間はいつもよりは客が入るでしょー」


 確かに看板は綺麗かつ豪奢になり、周りの商店街の店舗とは一線を画する外観になった。

 費用はどうしたのか。

 どうやって一晩で工事完了まで漕ぎ着けたのか。

 疑問は残るけどな。


 だけど。


「俺が言うのも少し変な話ですけど、

 この外観と店内のギャップが少し大きい気がするんですよね」

「そうだねぇ。すっごいギャップだよね」

「……」

「あげいん改め、Againになったことでお客さんは期待を持って、お店に入るでしょう。

 でも、中身が今まで変わらないがらくたショップだったらどう思うでしょうーか?」

「き、期待はずれって思う……かもしれません」


 Againの発音やがらくたというフレーズにイラっとしながらも、正直に答える。


「そうだよね。『裏切られた。もう、こんな店には行かねー』そう思われても仕方がないよね。

 でも、さすがの私でも一晩でこのガラクタどもを処分して、売れる商品に入れ替えることはできなかったわけで」

「じゃあ、どうするんです?」


 鞠井さんは指をパチンとならす。

 すると驚いたことに店の前に止められていた高級外車から、

 ザ・執事といった風体の男が現れ、ダンボール箱を積んでいく。

 5箱ほど積まれたところで執事が鞠井さんに何やら耳打ちすると、

車に乗りそのまま乗り去っていった。


「なんすか、今の人」

「君には関係ないよ」


 そう言う彼女は少し寂しそうだったのが印象に残った。


「そのダンボールは?」

「開けてみればわかるよ」


 嫌な予感を感じながらも、恐る恐るダンボールを開ける。


「これはセールPOP?」


 POP(広告)とは主に商店などに用いられる販売促進のための広告媒体である、w○ki参照。


「次の一手を打つためにもこのガラクタは処分しなくちゃいけないからね」

「まぁ、セールをやるのはいいにしても、半額ってのはやりすぎなんじゃ」

「店長代理。今は黙って私の言葉に従っていただきたいものだねぇ。

 文句は明日君の言う条件――通常の売上の2倍を取れなかった時に好きなだけ言えばいい」

「わ、わかりましたよ。やればいいんでしょ、やれば!」


 とは言ったもののダンボールの量の多さに圧倒される。


「開店まであと3時間ちょっとありますけど、2人でこのPOPを店内中に貼るのは大変なんじゃないですけね?」

「君は何か勘違いをしているようだねぇ。

 やるのは君ひとりだ。私はやらないよ」

「は?」

「おばあさまから聞いたよ。君の趣味は筋トレなんだってね? 自分の体を虐めるマゾヒストってわけだ。マゾなら辛いことはむしろ快感でしょ。汗かいて、頑張ってダンボールを運んでくれたまえ」


 あんたは全国の筋トレマニアを怒らせた。


「まぁ、一人でできないと言うならアルバイトの子でも呼び出せばいい。

君に人望があればの話だけどねー」


 実に愉快そうに鞠井さんは言った。

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