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なろう小説にはあまりない一風変わった作品だと思います。
末永くお付き合いいただけると幸いです。
「店はお前に任せるよ。
今日からお前が店長代理だ」
開いた口がふさがらない。
いやいやいやいやいや。
ばあちゃんの無茶振りや思いつきの発言は確かにいつものことだ。
だが、今回は冗談にもならない。
「ボケたのか? ばあちゃん」
「バカなのか? お前は」
いつも通りの素晴らしい返しだ。
うん、ボケてはいない。
俺は一度大きく深呼吸をし、座って茶を啜っているばあちゃんに諭すように優しく、ゆっくりと言ってやる。
「何言っているんだよ、ばあちゃん。
分かってんだろ? 俺はまだ高校生だぜ?
勉強もあるし、来週は中間試験だ。色々と忙しい。
店長代理なんてできるわけがないだろう」
「大丈夫だ、多分。数字に関わるような難しいところはあたしがやるから、
お前はただ店を回してくれりゃあいいんだ。
難しいことを言っているわけじゃない」
ばあちゃんは包帯でぐるぐる巻きに固定され、動かすことのできない右足をさすりながら、にやりと笑みを浮かべ、続ける。
「ただ、大通りにできちまった馬鹿でけぇショッピングモールの所為で経営はかなり厳しい。
今月なんとか利益残さねぇと銀行からの融資は止められるだろう。
そうなると、もう店を畳むしかねぇが……まぁ、お前ならなんとかなるよ。多分」
「いや、ならねぇよ!!」
思わず我慢できずに激昂してしまった。
やっぱボケてるぞこのばあさんは!
要所要所に入る「多分」がより一層不安を掻き立てる。
やれやれ、ここで一回呼吸を整え、状況を整理しよう。
俺の名前は新藤勇人。
筋トレが趣味のごく普通の17歳。高校2年生だ。
両親は共に出張で海外暮らし。
このばあちゃんの家には高校入学と同時に世話になっている。
ばあちゃんの家――
つまり今俺が住んでいる家は2階建ての古い一軒家だ。
そして、1階部分をリサイクルショップとして構えているのだ。
リサイクルショップ――名称『あげいん!』。
その日の授業が終わると、大抵俺は寄り道をすることなく「あげいん!」で働くのが日課となっていた。
人手が足りていないのは知っていたし、年老いたばあちゃんにあまり無理をさせるわけにはいかない。
ほぼ毎日店で働いていたし、店のことはまぁ大体のことは把握し、理解しているつもりだ。
だが、店長代理だと?
はっきり言って、全くできる自信がない。
アルバイト気分で働いていたやつを急に店長として働かせて成功するか?
そんなもの火を見るよりも明らかである。
勿論、ばあちゃんが店長代理を俺にやれと言い始めたのには理由がある。
怪我――骨折である。
階段を踏み外し、右足骨折。
とてもじゃないが店にでることはできない。
本来なら入院した方がいいのだが、頑固なこの老婆はそれを拒否し、今ここにいる。
「商店街のみんなに助けてもらうってのはどうなんだ?」
「あげいん!」は昔ながらの老舗が多い地元商店街の中心に位置している。
商店街組合の人は全員がばあちゃんとは顔なじみの人である。
こういう危機的状況ではみんなが助けてくれそうなものだが。
「無理だね」
「どうしてだよ。組合の人たちみんな優しくて、いい人だろ。
きっと助けてくれるよ」
ばあちゃんは大きく嘆息すると、俺の目をまっすぐと見据えて、凛とした声で言った。
「いいか、勇人。よく覚えておけ。
人を助けてくれるのはいい人でも、優しい人でもない」
「じゃあ、誰だよ」
ばあちゃんとにやりと広角を上げ、言った。
「そりゃあ、お前決まっているだろう。
力のある、人間さ」