プロローグ
・・・深い深い森の中。人が立ち入る事を禁じられたその森の中で、まず一つ____それから立て続けに何発もの銃声が聞こえた。撃ったのは黒いローブを着た、狩人装束の男達だった。
「・・・ッチ、なんてすばしっこいヤツだ!」
「こんな森の中をよく動き回れますな・・・」
ざっと数えても30人は下らないその集団・・・言うなれば『密猟者』達はそれぞれが猟銃を手に持ち、数時間をかけてある一つの存在を追っていた。
「【ナンバー0】が居たぞ!」
「よしそのまま包囲、追い詰めて捉えろ!」
彼らが追っているのは一人の『人間』・・・齢16程の、若干天然パーマが入った黄緑色のロングヘアーにエメラルドの瞳を持つ少女だ。
患者用の白い服を着た彼女、【ナンバー0】はとある施設の『被験体』であり、彼女をじわりじわりと追い込む【密猟者】は逃げ出した被験体を捕らえたり『処理』するための兵士であった。
「もう観念するんだな、おとなしく『施設』に居ればこんなことにはならなかっただろうに・・・」
「・・・ッ!」
兵士に周りを殆ど囲まれたその少女はリーダー格の傭兵を一瞬睨むと、唯一の退路である後方、森の木々に紛れ込むように身を隠す。
「射撃開始」
「____ッアアアッッ!?」
瞬間。その木々を『猟銃』の銃口から飛び出した数十条もの光線が貫き、爆発させた。あたり一面に葉などの様々なものが舞い上がり、目をくらませる。・・・そして収まった時、そこには全身を光線で貫かれ、瀕死になった『少女』が倒れていた。
彼女、【ナンバー0】がしっかりと気絶している事を確認した『密猟者』リーダー(45歳 男)は部下達に『被験体を回収する』指示を出した。即座に少女は、ろくに手当をされないまま、部下達が持ってきた『棺』に放り込まれ、厳重に蓋がされた。
「・・・撤収!」
「「「ハッ!」」」
こうして、施設から逃げ出した少女はまた『檻』に入れられてしまったのであった。
***
爆発した地点から更に奥。よろよろと動く一つの人影があった。____先程『密猟者』に捕らえられた筈の少女、【ナンバー0】だ。
「・・・っふざけんじゃないわ、明らかにオーバーキルじゃない!」
怒りの感情を顕にする【ナンバー0】。先程の銃撃の瞬間に、特技の一つで、分身である『身代わり』を生み出して囮とする事で、密猟者の手から見事に逃れたのである。
「あー・・・しんどい。けどここで倒れたらマジで死ぬ。というか今まさに死ぬ」
ただし『身代わり』は自身の生命力を削って生成するため、本体である彼女にはかなりの負担が掛かってしまう上に先ほどの銃撃で左肩から二の腕にかけて大きな傷が出来ており、正直【ナンバー0】の身体は限界をとっくに超えていると言ってもいい。
「目が霞む・・・」
傷む左腕を必死に庇いつつ、ノロノロと進む『ナンバー0』。やがて彼女は森の先が明るくなっているのに気づき、「森の出口かもしれない」と期待しつつペースを上げて歩き続けた。
「・・・うん、ダメだこれ」
だが、そんな淡い期待を持って出た先は『崖』。どうやら崖の真下に洞窟があったらしく、重低音を響き渡らせながら大量の水が滝となってそこから遥か下の、数百メートルはあるであろう滝壺へと落ちているのを間近で確認した彼女は、思わずそんな事を呟く。
・・・かくいう彼女も、崖から落ちている最中であった。
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崖 /
______/
トンネル
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「変な重低音がしたから何だろうと思って覗こうとしたのが失敗だったかなあ」
覗くときに身を乗り出し過ぎたのか、足場が崩れて空中に放り出された【ナンバー0】は驚愕や恐怖諸々を通り過ぎ、逆に冷静になっていた。
尚、今は空中で体勢を安定させており、飛び降りるような体勢をとっている。
「まあ、幸いにも大量の水がクッション代わりになりそうだし、後は運次第!
____絶対に生き抜いてやるわ!」
瞬間。滝壺へと衝突した【ナンバー0】は、その衝撃により意識を失ったのであった・・・。
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※この小説は朝霧浩之の著作物になります
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