第一話 魔王と悪魔 ~時には天使
「あ~あ、かったるい。どうして俺はこんなのに呼ばれなきゃいけねーの?」
ダルそうな顔で愚痴を言うこの少年。彼は魔王族代表のユーマである。
「それはあなたが魔王族で一番暇だから、ですよ。」
少し呆れた様子で理由を説明するは天界の使いの者、天使族のジェリーである。
「そして何?暇だから〔あくりょー等のじょーかさぎょー〕をしなくちゃいけないのかよ?」
「そうです、としか私は言えません。そもそも問題を起こしたのはそちらの魔界ですから、そちらで責任をとるべき、とお偉方は言っています。」
説得するような言い方で話すジェリー。
「おいゼリー。」
「ジェリーです。」
「集合場所にはどれくらいなんだよ。かれこれ三時間は歩いたんだぜ。遠すぎだろ。」
「あなたは歩いてないじゃないですか。ずっと巨大な蜘蛛に乗ってるじゃないですか。」
ジェリーがフワフワ浮きながらユーマが乗っている生き物を指差す。
「ならあれですね。神様の力で裏技を使いましょう。」
「裏技?」
~二時間後~
「着きました!!」
「……。」
ユーマはあまり深く聞かない事にした。
「では、私はここまでですから、後は中に入ってあと二人をお待ち下さい。」
そういうとジェリーは空高く舞い上がり、どこかへ飛んでいった。
「さて、入るか。お前は魔界に戻れよ。」
巨大蜘蛛は黒い煙に包まれて消えた。
それを見送った後、ユーマは集合場所と言われた天界の建物の中に入っていった。
天界の建物内。そこはやけに広く、空調もしっかりしてるのに、少しボロかった。そして部屋のど真ん中に、《ここで待て》と書いてある看板があった。
「なんかもう…色々ボロいな…。予算少ないのか?」
「それはほとんど、勝手な魔王族のせいなのです。」
説明口調で現れたのは、クールガイの字がよくあてはる紳士のような男。彼は悪魔族代表である。
「初めまして。わたくし、悪魔族代表のパーソと申します。」
「おう。俺は魔王族代表ユーマだ。ところで、二つ聞きたい事がある。」
「何でしょうか。」
「ここがぼろいのが、俺ら魔王族のせいだって言ったよな。それはなんでだ。」
「簡単に説明するとですね…。」
魔王族のだらけた政治
↓
魔界が荒れる
↓
天界が復興のために神の力を使う
↓
魔界に力を集中するため、天界の世界維持がおろそかになる
↓
結界が弱く、ここもボロい
「と言った具合です。」
丁寧にパーソが説明する。
「ぐっ!!き…効かねーぞ…。」
苦しそうにしながらユーマは耐える。
「魔王族がもっとしっかりしてれば…。やれやれです。」
嫌味のように言うパーソ。
「ぐはっ!!!!……つ…次の質問だ…。」
なんとか耐えきり、もう一つ質問するユーマ。気持ちも切り替え、深呼吸したのちに言ったセリフは
「お前って、本当に男か?」
ピキンッと周りの空気が一瞬凍りついた。
「ユーマさんは、わたくしがオカマだとおっしゃりたいのですかな?」
「そうじゃなくて、お前は一瞬だけ女の気がしたんだけど……」
「………!!!!」
ドス!!
不意にパーソに一蹴りいれられ、身悶えるユーマ。ユーマは、パーソは意外と短期なんだなと気付くのだった。
「わたくしはっ!!!男だーー!!!!!」
静かだった建物内は、魔王族と悪魔族により一気に騒がしくなった。
続く
第一話を読んでいただき、ありがとうございます。
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まだまだ、小説については素人なので、参考になる一言などをお書き込み下されば、幸いです。