五日間の片思い 2
その日から、放課後は特別な時間になった。
俺と春山さん、二人きりの係。
他の係は、主に教室の外で準備することが多かった。だから俺達は、教室で二人だけで過ごすことができた。
このチャンスを活かさない手は、ないだろう。
「じゃあ、プログラムの表紙のデザインを決めようか!」
「そうだね。体育祭っぽい元気な絵にしよう」
くっ付いた二つの机。向かい合わせに座っている春山さん。
ゆるふわの髪が、机に垂れる。窓から風が吹けば、彼女の香りが運ばれる。シャンプーとか石鹸の、優しい香り。母さんや姉ちゃんのとは違う、女の子の香り。本当は俺の肺いっぱいに入れてしまいたいけれど、このタイミングで大きく息を吸うのは不自然なので。ただ、この香りを忘れてしまわないように、胸に焼き付けた。
「……ふふっ」
彼女が急に口元を緩める。反射的に飛び出した心臓を、無理矢理に引っ込めた。
「春山さん?」
「優木君の絵って面白いね」
「……え」
戸惑う俺をよそに、彼女が紙を指差した。
そこに描かれているのは、正真正銘リレーをしている少年だが……。
「怪獣みたい」
……ま、いいか。
恥ずかしさが全身を駆け回ったが、ま、いいか。こうやって春山さんが笑ってくれたから。プラマイゼロだろう。
「中学の頃から、美術とか音楽とか苦手なんだよな」
「そうなんだー」
「春山さんは?何の教科が苦手だった?」
「体育。走るのとか遅いから。体育祭も不安なの」
「じゃあ、春山さんが競技してるとこ見てるよ」
「だめ。見るの禁止ね?」
「だめ」と言った彼女の口が可愛くて、シャーペンを握る力が強くなった。好きだ、と思った。
恋を自覚した後は、もうどうにもならない。どんどんどんどん、深く深く堕ちていくだけ。宮もそうだったんだろう。誰だってそうなんだろう。
--そんな、ぼんやりとした事を考えている時だった。
キーン、と音が響く。聞き覚えのある音。運動場の方からだった。
その音に反応した春山さんが、動きを止めた。