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泣いた春山さん 1

真冬(まふゆ)ー!いつまで寝てんだよ!もう授業終わったぞ?」

「……え?馬路かよ」


(みや)にゆさゆさと揺さぶられて、俺は勢い良く立ち上がった。反動で、椅子ががたんと大きな音を立てる。慌てて時計の針を見て、驚愕した。


「もう六時間目も終わったのか?」

「ああ、お前が寝てる間にな。地理の時間からぶっ続けでずっと寝てただろ?」


机の上に散らかったノートには、汚く大きな『地理』の文字。

ああ、やってしまったか、と急いで部活の用意を始めた。


終礼も終わってしまったらしく、クラスメイト達は、ぞろぞろと教室から出て行く。俺は反射的に、斜め前の席に目をやった。


--良かった。まだ、残っていた。

彼女は、友達と楽しそうに話しながら、帰りの支度をしているところだった。

鞄にぶら下がっている、ピンクのクマ。きっとあのキャラクターが好きなのだろう。筆箱も、確かあのキャラクターだった。


彼女の名前は、春山未来。俺の中では、春山さん。


春山さんは、人よりも髪が茶色い。

たぶん、染めているとかじゃなくて、地毛だろう。腰まで伸びた長い髪は、ふわふわしている。所謂、ゆる巻きってやつだろうか。前に、姉ちゃんがやっていた。


春山さんは、人よりも目が大きい。

今も、その大きな瞳で、友達の顔をじっと見つめている。そして、時折、目を細めて笑っている。その度に、長い睫毛がふさふさと揺れる。


春山さんは、人よりももてる。

2組の奴らが、春山さんファンクラブを作ったと言ってはしゃいでいたのを覚えている。彼女がもてるのは、何となく理解できる。


春山さんは、人よりも頭が良い。

授業中に寝ているところは滅多に見ない。今日だって、恐らくずっと起きていたのだろう。俺が寝ている間も。


でもガリ勉系ではないな。かといって、スポーツ系でもない。クール系っていうのも違うし。ああいうの、何て言うのだろう。


「癒し系?」


思わず、声に出してしまったらしい。宮は、黒縁の眼鏡で俺を見て「癒し系が何だって?」と聞いた。


「や、別に何でもなくて……。あ、そうそう。俺は何系男子かなーと思って」

「真冬が癒し系?それは絶対ないない。うーん、暑苦しい系?熱血?」

「暑苦しいって何だよ」


そんなことを話している間に、春山さんは友達と出て行ってしまった。

俺は、何となく、その後姿をしばらく見つめていた。しかし、宮が早く部活に行こうと急かすので、いつまでもぼんやりとはできない。


初めて同じクラスになった女の子。春山未来。

彼女はいつも、何を考えているのだろう。

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