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Lost Story -ロストストーリー-  作者: kii
第9章 日常(12月)
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第95話 能力を極めし者

 『アビリティマスター』

 アビリティマスター(スキルマスターとも呼ばれる)とは、能力者が自身の能力を完璧に使いこなしている状態をいう。 使いこなせているかどうかの判断は、年に2回行われる実技試験にて判断される。






 12月6日、金曜日。

 『アビリティマスター全員と友達になる』を今年の目標に掲げている如月ミオは、その事について相談するため昼休みにレイタのいるA組の教室を訪れていた。


「友達になりたいのに、アビリティマスターにどんな奴がいるか知らないと?」

「うん!」


 レイタの呆れ声に、ミオは自信満々に返す。


「あ、でも、一二三(ひふみ)マモル君とハジメ君とマドカ君以外だけどね」


 一二三マモルは、SCM総隊長でありカナエの兄。

 氷界(ひょうかい)(はじめ)は、C地区のアビリティマスターであり現在暴行事件を起こしたためSCM地下の更生施設に入っている。

 ちなみに、ミオと彼らを合わせてアビリティマスターは8人いる。


「じゃあ、取り敢えず名前と所属地区についてだな」


  そう言って、レイタはノートにアビリティマスターの名前と所属地区をすらすらと書いていく。


 No.1、北A地区、一二三真守(まもる)

 No.2、北D地区、押重(まどか)

 No.3、南A地区、常上(とこうえ)賢一(けんいち)

 No.4、南E地区、鴨川(かもがわ)美智(みさと)

 No.5、北D地区、如月美緒(みお)

 No.6、北C地区、氷界一

 No.7、南F地区、セリス・ミードラス

 No.8、北B地区、彩張(さいばり)鈴蘭(すずら)


「ん? ナンバー?」


 横で見ていた、リオが質問する。


「学生が勝手に付けた強さ順だな」

「強さ順かあ……やっぱ、マドカ君って強いんだね」


 メモをまじまじと見つめミオが答えた。


「ミオちゃんは5位だね」

「うーん、強さには自身があったんだけどな」

「タッグトーナメントで負けたのがダメだったんだろ。まあ、タッグで判断するのもどうかとは思うけども」


 で、とここでレイタは話を戻す。


「誰から会いに行く?」

「そうだね……オススメとかある?」

「オススメって、どうせ全員と会うんだろ?」

「まあ、そうなんだけどね。だからこそ、誰にしようか迷うわけでさ」

「じゃあ、同性からってのはどうだ?」

「同性……セリスちゃんとミサトちゃんとスズラちゃんだね」

「いや、スズラは男だ」


 「えっ! そうなの!?」と驚いたのはリオの方だった。


「まあ、マドカって名前の男子もいるわけだしな」

「……それもそっか」


 レイタの言葉に、あっさりとリオは納得する。

 

「まあ、でも南地区の方々に関しては、あんまいい話は聞かないんだけどな」

「いい話?」

「ミオちゃん、いい話が無いってことは悪い話があるってことだよ」

「ああ、そういうことか」

「……まあ、そうなんだけど。で、その悪い話ってのが特に常上絡みなんだよな」

「もしかして、また氷結魔みたいな?」

「まあ、似たようなもんだな。こっちは、簡単に言えば不良だが」

「不良でもアビリティマスターになれるんだね」

「そりゃそうだよ。だって、私でもなれるんだよ?」

「ミオの言うとおりだよ。要は、運と才能と努力。この3つさえあれば、あとは何もいらない」


 意外といっぱいいるんだね、とリオ。

 レイタの言う通り、アビリティマスターには努力だけではなれない。しかし、才能だけあってもなれず、また2つともあってもなれない場合がある。

 この点から、アビリティマスターは2つに分類が可能であり努力型と才能型に分けられる。

 とはいえ、2タイプに分ける意味はあまりない。

 ちなみに、ミオは才能型。マドカは努力型である。


「話を戻すけど、女性陣2人に関しても常上に比べたらともかくだが、あんま評判は良くないらしい」


 レイタの言葉にも、「ふーん」とミオはあまり気にしてない素振りで答え続ける。


「不良だとか問題ありだとか、そんなのは関係無いよ。そういうのがあっても、私は関係無く友達になりたいし」


 その真っ直ぐな言葉に、レイタとリオは「らしいな」と頬を緩める。


「じゃあ、先ずは南地区だな」


 うん! ミオは力強く答えた。






「ちなみに、通り名ってのもあるんだぜ」

「へえ、どんなの?」


 No.1、一二三真守『絶対強者』

 No.2、北D地区、押重円『雷神』

 No.3、南A地区、常上賢一『一方殴打』

 No.4、南E地区、鴨川美智『怒りの妖精』

 No.5、北D地区、如月美緒『空間を操る者』

 No.6、北C地区、氷界一『氷結魔』

 No.7、南F地区、セリス・ミードラス『幻泡使い』


「スズラ君は?」

「スズラのは聞いたことないな。まあ、この中じゃ一番地味だから」

「ふーん。で、私は『空間を操る者』か」

「こういうのは、誰が名付けたんだろうな」

「ほんと誰がつけたんだろうね」


 と、ここで昼休みの終わりのチャイムが鳴ったので、「じゃあ、今日はありがとう」とミオはアビリティマスターの名前が書かれた紙を持ってリオと共に教室に戻って行った。

次回予告


「開花の時は近い」

 物語は、現在から過去へと巻き戻る。


次回「ソウグウ」

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