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Lost Story -ロストストーリー-  作者: kii
第14章 日常(12月〜3月)
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第117話 風は気ままに舞う

 12月18日、水曜日。

 如月ミオは、いつものように学校に登校し、いつものように授業を受け、いつものように友達と昼食を取り、いつものように午後の授業を受け、そしていつものように友達らと共に帰宅した。


 なんて事ない日常。数日前に起きた非日常など、彼女の中では既に夢物語とかしていた……かに思えた。




「特に変わった様子は無い?」


 放課後、とある教室にてレイタとヤヨイ、そしてハヅキはサヤからミオについて聞かれていた。

 ミオとはクラスメイトであるサヤから見た限りでは、本人に特に変化は見られない。

 しかし、他の人の前では、1人の時は違う顔を見せているのではないかと今回、レイタとヤヨイ、そしてハヅキに事情を聞いているのだ。

 しかし、3人の返答はサヤの期待通りのものではなかった。

 サヤと同じく気にはしてるが、本人に特に変わった様子は無い。

 事件前と後で変化が見られたのは、事件後最初の登校日である月曜日のみ。それも、朝出会った時だけで直ぐに表情は戻ったという。

 加えて、それを見たのはハヅキのみだった。


「うーん、やっぱ考え過ぎかなー」

「そんな事は無いと思うけどな」

「でも、ここまで表に出てこないとね」

「そうか? ミオちゃんの性格を考えたら別におかしな事でもないと思うんだけどな」


 「私も、そう思う……」

 そう小さな声で答えたのはハヅキだった。それに、ヤヨイも同意する様に首を縦に振る。


「私もそうだと思うよ。ミオちゃん絶対に無理してる」

「皆が言うならそうなのかも……でも、だったら私たちに出来る事ってなんだろ」

「うーん、つか、リオちゃんはどうなんだ?」

「それは、先生がやってくれるって」

「先生がね……まあ、いいか。問題はミオちゃん……」

「そういや、リュウ君見かけないけど、もう帰っちゃった?」

「多分そうじゃね? 終礼終わったら直ぐ出てったし」

「ふーん。まあ、今はミオちゃんか。正直、時間に任せるという手もあるけどね」

「時間が解決できるものにも限度があると思うけどな」

「まあ、それはそうだけどさ……」


 背中で友人が弾け、またその亡骸を直接見たのだ。本来なら、学校に出てくる事すら厳しいだろう。


「話してる限りじゃ、何も気にしてない感じなんだけどね」

「そうだな。事情を知らなかったら、何かあったようには見えない」

「うーん、下手に傷口に触るのもねえ……」

「そうだよね。でも、正直そういうのを知ってるからミオちゃんと話してるとこっちまで辛くなってくる……」

「まあ、俺らが悩んで暗くなってもしゃあねえし。多分、俺らはいつも通りにミオちゃんと接する事が1番いいんじゃないか」


 その言葉に、他の3人も頷き返した。

 傷口は下手に触ってはいけない。場合によっては放っておくのも有りである。

 4人は、一先ずいつも通りにミオと接する事にしたのだった。






 冷たい風が吹く中、友人と別れたミオは1人、人通りの少ない道を歩いていた。

 何も無い舗装された道。無難で地味なアパートに囲まれた道。彩りを与える樹々さえも今はその色を失っていた。


 彼女の進む先に明かりは無い。厚い雲で覆われた空は灰色をより濃くし始める。


 深い深い心の底まで覗きそうな、その沈んだ瞳は何を見ているのか。それは、誰にも分からない。


 現実味の無い現実は、彼女にとっては夢のようだった。

 紅も茶も赤も黒もモノクロになった。今はまだ、それに色を戻す方法には出会っていない。


 もし、それに色が戻ったら?

 そう考えれば、今の彼女は爆弾を抱えているようなものだろう。


 風は流れに添い吹き続ける。

 風は何ものにも当たらず吹き続ける。

 終わりは何処か。まだまだ先か。それとも直ぐそこか。


 風は何も考えず、気ままに吹き続ける。

次回予告


「俺は、結局どうして欲しいんだ?」

 冬休み明け、始業式の日に自身の能力が消失した事を友人たちに告白するリュウ。明るく振る舞う彼だが、その内はある2つの感情の狭間で揺れ動いていた。


次回「無能力者」

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