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Lost Story -ロストストーリー-  作者: kii
第10章 key and three doors(memories of the past)
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第100話 ケッセイビ

 教室に入って感じた違和感は2つ。


 1つ目は、教室内の視線。

 2つ目は、知人の反応。


 その違和感に耐えられなくなったカズハは、鞄を机に置き直ぐにリュウイチ、アカネの居るA組へと向かった。


「ありゃ? マリアスちゃん?」


 A組には、リュウイチの席に座り顔を俯かせているマリアスも姿もあった。

 彼女がここに来た理由は、当然カズハと同じである。


 そんな彼女とは対照的に、明るさを感じさせる表情で教室に入ってきたカズハに気づき、リュウイチは声をかけた。


「ここもか」


 彼の元に小走りで向かい、カズハは呟いた。

 先ほどまで居た教室とほぼ同じ視線。それは、4人を確認した後、逃げる様に消えた。


「ってことは、カズハもか」

「うん。まさか、ここまで壁作られるとは思っても見なかったよ」


 腕を組み、ザッと辺りを見てからカズハは続ける。


「ちょっとした有名人だね」

「そうだな……」


 そう返しつつ、リュウイチは思考を巡らせる。

 先々日から考えていた、"壁"を払う方法。

 しかし、この予想以上の壁の厚さから彼は当初考えていた作戦を変えようかと思い始めていた。

 当初、考えていた作戦では壁を作っていない層を取り込みつつ、徐々に崩していく予定だった。だが、彼自身が身を持って感じてるように、現実は壁を作っている者が多すぎたのだ。

 『不登校になる程』

 このことから、この状況を想像できなかった彼にも問題はある。だが、ここまで巨大になってしまった壁を想定するのは中々難しいだろう。


――でも、本当に全員がそういう人間なのか?


 今にも泣き出しそうなマリアスを慰めるアカネの横で、彼は腕を組み考える。

 壁を作っているのは一部。他は、そこまで怖がっていない可能性。少なくとも、2人の友人は無理矢理その感情を殺して接するのでは無いだろうか?


「なあ、ちょっといいか」


 各々、適当な所にやっていた視線を発言主のリュウイチに移す。


「この状態を打破する作戦があるんだ」

「打破するって、みんなが作った壁を取っ払うってこと?」

「そう。時間はかかるし、労力もいるだろうけど……一番手っ取り早い方法」

「なになに? 勿体ぶらずに教えてよ」

「『問題解決屋』だよ」


 その単語に、他の3人はクエスチョンマークを頭上に並べる。


「問題解決? 何それ?」

「何でも屋。つまり、学園のトラブルバスターだよ」


 それが、壁を取っ払う事とどう関係があるんだ? と質問したのはアカネだ。


「つまり、1人1人と向き合って、危険じゃないってわからせるんだよ」

「ふーん、そのためのトラブルバスターか」


 分かったような口振りのカズハ。しかし、他の2人は依然として意図が分かっていない。

 そんな2人の様子を見て、カズハは説明を始める。


「話し合って危険じゃないって理解させるよりも、実際にトラブルバスターとして行動して理解させた方が早いって話だよ」

「そういう事。そりゃ、話し合って理解してもらえればそれに越した事はない。でも、難しいだろうからトラブルバスターという活動を通じて理解してもらおうってわけ」


 2人の説明に、ようやくアカネとマリアスは話を理解する。

 だが、ここで思いついたようにアカネは言葉を返す。


「でも、トラブルバスターは依頼者がいないと始まらないだろ? そこはどうするつもりだ?」

「そこは、まあ少数派に期待するか。無理なら、SCMとか先生の手伝いをするか、でどうだ?」

「……それなら、いいか」


 少々納得がいかない様子のアカネだが、その少々がなにか分からないためこれ以上反論はしなかった。

 その反応を見て、次にリュウイチはマリアスの方を見る。


「マリアスはどうだ? その、嫌ならもっと別の方法もあるんだけどさ」


 その言葉に、マリアスは迷うこと無く即答する。

 カズハと自分のために考えてくれた方法。賛成しない理由が無かった。


「じゃあ、決まりだな。……えっと、先ずはSCMに言うべきか?」

「えっ? 部活にするの?」

「一応、公式の活動にしといた方が依頼者来るかなと」

「それもそっか」


 でも、通るかなあ。と心配そうなカズハに、彼は自信満々に返した。


「大丈夫。一応、コネはあるからな」


 それに「へえ」と驚きとも関心ともとれる反応を彼女は返した。


「じゃあ、"4人で"行きますか」


 元気良く言ったリュウイチに続く様に、4人は視線に追われながら教室を出て行った。






 こうして、『問題解決屋』は無事に学校側に活動として通り結成される。

 そして、最初は苦難の連続ではあったが、結局リュウイチ予想通りに最初の1人が来れば、それに続くように生徒たちは4人の元を訪れ、気づけば学校内に誰一人としてカズハとマリアスの両名に壁を作る者はいなくなっていた。

次回予告


「待ちわびたよ、開花の時だ」

 物語は現代に戻り、種子たちは開花の時を迎える。


次回「ハナヒラク」

次回より新章開幕です。

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