表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/44

第39話 淫乱コンビ!?



「ちょっと待て!お前、今なんて言った?」


 ニアが青ざめた顔でセラを問い詰める。

 カナデに至っては完全に硬直している。


「……だから、男性と交配して子孫を残す。カナデの魔力と、適切な遺伝子があれば可能」


 再度同じことを言うセラ。どうやら聞き間違いではなかったようだ。


「えっと……つまり誰かと結婚して子供を作るってか?」

「……そう」

「吸血鬼の男と?」

「純血の吸血鬼は私だけ。だから人間とでも……」


 待て待て待て。いくら何でも唐突すぎる展開だ。

 吸血鬼の血を濃く受け継いだカナデが他の種族との交配で子孫を作るというのか。


 俺とニア、そして爺さんの目は当然カナデに向かった。


「わたしじゃないよ!?」

「いや、カナデ以外に選択肢はなかっただろ。今の流れだと」

「違うよ!わたしはただ協力するだけで結婚とか子供とかそんなの……!」


 カナデが必死に否定する。

 つまりなんだ、こいつはろくに説明も聞かずにセラに同情しただけの無鉄砲だったということか?


 ……アホか。


「心配ない。魔力さえ貰えれば交配は私がする。カナデは協力者」


 セラなりに配慮してくれているようだが、根本的な解決にはなっていない。

 どちらにしても誰かと子孫を残すという事実に変わりはないのだ。


「あ、あのさセラ……それって誰でもいいの?」

「条件はある。最低でも魔力量が一定レベル以上あり、吸血鬼と相性が良くて遺伝子も安定してないとだめ」


 それはまあなんとも普通の……いや普通じゃないか。


「じゃあセラが選ぶのか?」

「……理想はある」

「どんな奴だ?」


 セラがじっと俺を見つめる。

 まさか……と思った瞬間、カナデが割って入った。


「わ、わたし協力する!血じゃなくて魔力なら大丈夫だと思うし!」

「……良いの?」

「うん!ついでにセラのお婿さんも探してあげるよ!」


 何を言ってるんだこのアホは。

 だが、セラは意外にも喜んでいる。


「ありがとう……カナデ」

「じゃあ決まりだね!どこに住んでるの?わたしも行くよ!」


 カナデがセラの手を握る。爺さんとニアは呆然としている。

 もうアホらしくてついて行けん。

 

「一日半もあればつく。眷属達が待ってる」

「わかった!必要なものがあれば持っていこう。何かあるかな?」

「カナデがいれば十分」

「そっか。じゃあ早速準備するね」


 もうどうにでもなれ。

 この無自覚なアホと幼女吸血鬼のコンビに巻き込まれないよう祈るしかない。


「おいおい、オレまだぜんぜん飲み込めてないんだけど……」

「あれに混ざりたいか?ニア」

「……勘弁してくれ」


 ニアが力なく答える。俺も同感だ。爺さんも諦めたように溜息をついていた。

 どうやらカナデの暴走を止めることはできないと悟ったらしい。


「俺は寝るわ。カナデ、よくわからんけど吸血鬼の未来の為に頑張れよ。応援してるぞ」

「ミ〜ナ〜ト〜さぁ〜ん?まさかカナデちゃんを一人で吸血鬼の里なんかに行かせるつもりじゃないですよねぇ?」

「そのつもりだが?」

「へー……そう。わたしの頼みは聞いてくれないんだ……へ〜」


 笑顔で睨んでくる。またこのパターンかよ……。


「可愛い可愛い幼馴染が異種族との問題に巻き込まれてるんですよぉ?ここは一緒に行って見守ってあげるのが男じゃないかなぁ?ねぇ?」

「そんな性欲の塊の淫乱コンビと同行なんてお断りだ。自分で何とかしろ」

「だーれが淫乱なのかなあ!?しかも性欲の塊って何!?わたしにどんなイメージ持ってんの!?」


 カナデが拳を握って怒鳴り散らす。ニアはどうやらツボったようで爆笑している。


「カナデ、彼の協力は必要」

「うん、でもなんか珍しい。いつもならすぐOKしてくれるのに」


 そりゃ何が悲しくて子作り現場なんて観劇しないといけないんだ……せっかくの休日が台無しにも程がある。


「それ以外に彼をその気にさせるには?」

「えっと……利害の一致、かな。でもミナトにとってメリットはないと思うんだよね」

 

 二人で何やら相談し始めた。厄介なことにならなければいいが。


「私に任せて」


 意味深な事を言い出すセラ。無表情のまま俺に近づいてくる。


「……キミは何を求めてる?」

「は?」

「私は吸血鬼の未来。でも今のままでは無理。キミの協力が不可欠」


 セラの真剣な眼差しに言葉に詰まる。こいつは何を言ってるんだ?

 第一、最初はあんな強引にカナデを連れ去ろうとした奴が俺に協力求めるっておかしくないか?


「私の目的は答えた。次はキミが答えて。何を求めてる?」

「俺か?そうだな……」


 答えに悩む。転生してから、俺はずっと魔力の鍛錬に費やして来た。それはあのヤンデレ妹とのトラウマから解放される為。

 そして今、あいつはこの世界にいる。再び同じ過ちを繰り返さない為に──


「強さだな。誰にでも勝てる力。それが欲しい」

「なら利害は一致する。吸血鬼の魔力は強大。協力すれば更なる力を手に入れられる」

「カナデが?」

「違う。キミが」


 話が見えない。カナデと爺さんも困惑顔だ。ニアだけが面白そうな顔で見ている。


「吸血鬼の血と魔力、キミにはそれを提供する。引き換えに私たちの計画を手伝って」

「……本気か?」


 セラが頷く。その目には強い決意が宿っていた。


「本来、カナデのようなハーフや眷属を除いて吸血鬼と人の血は混ざることはない。すぐに魔力暴走を起こし、最終的には死に至る」

「物騒だな。俺に眷属になれと?」

「違う。キミには莫大な魔力量とそれをコントロール出来るだけの才がある。きっと成功する。私が保証する」

「確率は?」

「89%」


 まさかのほぼ九割。カナデの時より高い。


「血を入れる方向は?まさかとは思うが、カナデやセラと……」

「その通り。性行為による方法が最も確実」

「却下──」

「強制はしない。キミの望みを叶えるだけなら首を噛むか注射をすれば済む。ただし、確率は85%に低下する」


 セラの目は真剣だ。本気で俺と取引するつもりらしい。

 カナデの方に目を向けると、珍しく不安げな表情を浮かべていた。爺さんも同様だ。


「力を貸して欲しい。そうすればキミは最強になれる」

「最強……か」

「キミにとっても損な話じゃない。カナデの安全も確保される」

「……まあ、確かにな」


 強くなりたい。それは嘘偽りのない本心だ。

 エアハートでフレイアの父親が見せた魔力を超えた魔術。

 今後、あの力と対峙することを考えれば──。


「……分かった、同行はする。ただ、血を入れるかどうかは保留だ」

「ん。感謝」


 セラが小さく頷く。話が一段落するとカナデが嬉しそうな顔をした。

 一方のニアは微妙な表情だ。


「マジかお前……どんだけ脳筋なんだよ」

「悪いな。俺はそういう人間だ。爺さん、許可もらえるか?」

「……仕方ありませんな。カナデを預ける以上は、ミナト様にも責任を持って頂きますぞ」


 爺さんが諦めたように呟く。せっかくの連休を台無しにしたのは申し訳ないが……。


「そうだ。ニアはどうする?わたし達についてくる?」

「あ?行くわけねぇだろ。大体オレはこのガキに不意打ちくらってんだぞ!?んなヤツと旅とかありえねーだろ」

「ごめんなさい。でもあのくらいの攻撃は避けるべき」

「謝ってんのか貶してんのかどっちだテメェ!?」


 火花を散らす二人。爺さんが頭を抱えている。


 こうして、穏やかに過ごすはずだった俺の休暇は唐突に現れた無表情ロリ吸血鬼とこれまた唐突にハーフのことが発覚した幼馴染との奇妙な旅路へと切り替わることになったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ