嘘をついた午後
「今日のあなたの運勢は最高です」
私はそう伝えた。だけどそれは嘘だった。
目の前にある彼女のホロスコープは、正直に言うと最悪な時期だった。
金星と土星がぶつかり合い、水星は逆行中。何をしても、裏目に出やすい配置だった。それなのに彼女は明日、初めて絵本を出版する。「本当ですか!」彼女の瞳は輝いている。
「すごく不安で不安で…でも最高という言葉が聞けて頑張れそうです」
「応援しています」笑顔を作った。
彼女が帰ったあと「はあ…」私は胸の奥からため息を吐いた。占い師が嘘をつくなんて、私は最低なことをした。
家に帰り、スマホを見ていると、彼女のSNSに目が入った。
「ついに明日発売。占い師さんに背中を押してもらいました。その言葉を信じて、進みます」
私は画面を1度閉じた。胸が締め付けられる感じがした。
1週間後。
「先生!」の声と同時に扉が開く音がした。
彼女は新聞の切り抜きを握り締めていた。
「絵本の重版が決まったんです!」
「あの日先生が最高と伝えてくれたからです。その言葉が私の自信に変えたんです」
私は何が起きているのか正直よく分からなかった。
彼女が帰りもう一度ホロスコープを確認した。
その時、私は気づいた。確かに凶角は多い。だけど木星だけが、創造性の部屋で輝いていた。
私はこの一点の光を見落としていたのだ。
占いは全体を見る。でも時にはたった一つの光だけを信じることも必要なのかもしれない。
「私、嘘ついていなかった」
安心と共に静かに笑みがこぼれた。
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