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おっさんジュエルウィッチーズ  作者: めくりの
一章
4/6

共闘

「大丈夫か?」

 

 オパールウィッチがダイヤウィッチとエメラルドウィッチに声を掛ける。


「ええ、何とか」


「あなたもジュエルウィッチ?」


 エメラルドウィッチの問いにオパールウィッチが頷く。


「色々あってな。昨日からジュエルウィッチやらしてもらってる!」


 オパールウィッチがそう言った時、地面から頭を引っこ抜いたラブリーシがオパールウィッチを見て大声を上げる。


「アーッ!お前、昨日の!」


「お前、生きてたのか。昨日はやりすぎてすまんかったな」


 オパールウィッチの謝罪にラブリーシが困惑する。


「はあ?私は敵だぞ。敵の心配してどうするんだ」


「いや、お前、気絶してぶっ飛んでったじゃん」


 オパールウィッチの言葉にラブリーシが顔を赤らめる。


「優秀な先輩に回収してもらったわ!ていうかあんたのイカレパンチのせいで大目玉くらったんだから、責任取ってもらうわよ!」


「あの子と随分仲いいみたいだね」


 エメラルドウィッチが会話に聞き耳を立てる。


「大喧嘩じゃないですか。そんなことより、エメラルド。あの黒いジュエルウィッチが昨日ルビーを助け、街を壊滅状態にした人物で間違いないわ」


「会話でなんとなく想像ついたよ。キョダイ―シも一切動かないし、ワルイ―シ団と何かつながりがあるのかもね」


 ダイヤウィッチとエメラルドウィッチが顔を見合わせる。


「キョダイ―シ!ぼさっと突っ立ってないで顔面乱反射ド糞味噌アバズレどもをぶっ殺せ!」


 ラブリーシの命令に、キョダイ―シがビクッと身体を震わせて咆哮を上げる。


「どんな育ちしてたらド糞味噌とか言えるんだよ......」


 キョダイ―シの尻尾の攻撃を蹴りではじきながら、オパールウィッチが呆れる。


「あの子口悪ッ!」


「悪い子だねー」


 ダイヤウィッチとエメラルドウィッチも攻撃の余波を受けないように飛び上がりながら驚く。


 オパールウィッチがダイヤウィッチに尋ねる。


「首の付け根にある黒いのをぶち抜けばいいんだよな!」


「そう、でも生半可な力では無理!」


「分かった!」


 オパールウィッチが天井まで飛び上がり、足をつける。そして思い切り天井を蹴ってキョダイ―シのハートジュエル目掛けて脚を伸ばす。


 キョダイ―シもハートジュエルを壊されまいと、長く硬い首をオパールウィッチの方へ伸ばしてキックの勢いを相殺しようとする。


 オパールウィッチのキックとキョダイ―シの頭が激突し、ひときわ強烈な衝撃波が空気を震わせる。


『周りに気を遣いすぎた、生半可な威力に......!』


 「ジュエル・トゥワイスシュート!」


 ダイヤウィッチとエメラルドウィッチがキョダイ―シのハートジュエルに強烈なキックを叩き込む。


 キョダイ―シの首、ハートジュエルの周りにヒビが入りだす。その様子を見たラブリーシが慌てだす。


「うそぉ、キョダイ―シ、もっと気張りなさいよ!」


 突如ラブリーシの後ろにワープホールが出現し、誰かが顔を覗かせる。


「あんた、またドジったの?」


 いきなり声を掛けられて驚いたラブリーシが慌てて振り返る。


「メ、メチャー様⁉」


 ワルイ―シ団の幹部であるメチャー・ワルイ―シがキョダイ―シを見て、呆れたように言うが、オパールウィッチを見てすぐにラブリーシの襟首を掴んで、彼女をワープホールに放り込む。


「はああああ!」


 三人から途轍もないエネルギーが迸り、キョダイ―シの首、胴体を粉々に打ち砕いた。


 ハートジュエルが一瞬光ったかと思うと、粉々に砕け散った。


 三人が息を切らせながら地面に降り立つ。ダイヤウィッチとエメラルドウィッチが足を抑えて座り込む。


「はあ、はあ、なんとか......なった」


「脚、治してあげるから......こっちおいで」


 エメラルドウィッチがダイヤウィッチの右脚に手をかざす。すると、淡い緑の光がダイヤウィッチの脚を照らし、癒し始める。


「完治までとはいかないけど、良くはなるよ」


「ありがとう、はあ」


「立て続けに強敵が現れるなんて、驚きね」


 今度は自分の左脚を癒しだしたエメラルドウィッチが目の前に散らばる残骸を眺めながら呟く。


 ダイヤウィッチも頷きながら、平然と立っているオパールウィッチに視線を向ける。


 額の汗をぬぐいながらこちらを向く。オパールウィッチが二人の所へ歩いてくる。


「さっきはありがとうな」


 オパールウィッチが二人に手を差し伸べる。二人は迷うことなくその手を取って立ち上がる。


「どうやって変身を?」


 ダイヤウィッチの問いかけにオパールウィッチが噓を吐く。


「拾ったんだよ、宝石を。そしたらびかーって光りだしてよ、そしたらかくかくしかじかで......」


「かくかくしかじかのところを詳しく!」


ダイヤウィッチがオパールウィッチに詰め寄る。


「いや、かくかくしかじかはかくかくしかじかで......」


 面倒になったオパールウィッチがダイヤウィッチの側をすり抜け、カオンモールの出口に向かって走り出す。


「逃げるな......って、脚はや!」


 ダイヤウィッチがオパールウィッチの脚の速さに驚愕する。


「お名前、聞けなかったね」


 エメラルドウィッチが残念そうにオパールウィッチの背中を見送る。


「へぇ、あれが新しいジュエルウィッチってわけね」


 瓦礫の陰に隠れて様子をうかがっていたメチャーがほくそ笑む。ラブリーシとかいう新人、大丈夫かと心配だったが、予想以上に新しい風を吹かしてくれている。


「取り敢えずチョー・ワルイ―シ様に報告しなければ」


 メチャーがワープホールに姿を消す。こうしてカオンモールキョダイ―シ襲撃事件は謎を残しつつも、解決を迎えた。





 都合よく人気のない場所で変身が解けた殊田は急いで避難所に向かっていた。


「いきなり変身させるなよ。多分正体はバレない方がいいし」


 殊田が誰にともなく呟く。あれだけ活躍しているジュエルウィッチーズでも、変身者の氏名は未だに公表されていないのだ。彼女たちは救世主、もし身バレでもすれば、平穏な人生を送ることはできないだろう。


「あ、いたー!」


 救護テントの前で伊織が手を振っている。随分とご立腹の様子だ。ここは元気いっぱい手を振って誤魔化そう。


 伊織がこちらに猛ダッシュする。


「幼馴染を心配させんじゃねぇ!」


 殊田の顔面に強烈な飛び膝蹴り。


「ごべぇっ!」






 その日の夕方、金剛と岡島はとある喫茶店にいた。昔ながらのカウンター席、向かい合わせのボックス席、オレンジ色の電気が店内を温かく照らしている。店の名は『ジュエラッテ』。


 金剛と岡島はカウンター席に座って、店主と会話を交わしていた。


「ニュースで見たよ、にしてもルビーと同じで、こっぴどくやられたんだねぇ」


 白髪交じりの黒髪を一本に束ね、右頬に痛々しい傷痕を残したおばさんがニヤニヤしてカップを洗いながら金剛と岡島に話しかける。


「それで知らない奴に助けてもらったんだな」


「そ、そうです。敵も強かったけれど、あの黒いジュエルウィッチもとんでもなく強かった」


 金剛がぽつりと漏らす。


「私たち、脚折れるぐらいの威力のキックでやっと倒せたキョダイ―シ、黒いジュエルウィッチは平然としてたんですよ。同じぐらいの威力のキックをして」


 岡島が少し身を乗り出して店主に言う。


「へぇ、そりゃとんでもないのが現れたな。会話は?」


「交わしましたよ~、さっきはありがとうって、おじさまの声で」


 岡島が言うと、金剛が目を見開く。


「そう!声おっさんだった。あの時はそれどころじゃなくてスルーしたけど、よく考えたら髪長かったし、ドレス着てたけどガタイおっさんだった!」


 店主が呆れる。


「お前らなぁ......この店のこと、教えたか?」


「教えるの忘れてた!なんせすぐに逃げられちゃったんで、えへへ」


 金剛が頭をポリポリ書きながら弁明する。店主がコップにジュースをついで金剛と岡島の前に置く。


「まあ、そいつがおっさんだとしたら、逃げるのも無理はない。おっさんが魔法少女やってるなんて世間にバレたら一生オモチャになるだろうしな」


「べ、別におっさんの正体をバラすつもりじゃないですけど.......」


 金剛が眉をひそめる。


「これから、共にジュエルウィッチとして戦っていく仲間の正体は知っておきたいですもん」


「ま、利害が一致しただけで仲間というわけじゃないかもよ~」


 岡島が笑いながら言う。


「え?昨日からジュエルウィッチやらしてもらってるとか言っといて、そんなことあります?」


 金剛がありえない、といった風に首を振る。


「明日、暇か?」


 店主が二人に尋ねる。


「うん」


「暇ですよ」


 二人が頷く。


「よし、明日の昼、ここに集まれ。紅井と蒼野あおのにも忘れずに連絡しておけよ」


「分かりました」


 金剛がスマホを取ってメッセージアプリを開く。


「にしても、紅井ちゃんの時と言い、今日と言い、敵に何らかの変化が起きてますね」


 岡島が首をかしげながら言う。


 あんなに強いキョダイ―シなんて、ジュエルウィッチとして戦っていた五年間で一度も見たことがない。


「お前らが成長するなら、向こうも成長するだろうよ」


 店主が遠い目をして呟く。


「紅井と蒼野、来れるみたいです」


 金剛が店主に伝える。


「分かった」


『全く、とんでもない奴が現れたもんだ。黒いジュエルウィッチ、お前は一体何者なんだ?』


 店主は心の中で呟く。そして、黒いジュエルウィッチを必ずこちら側に引き入れなければならない、と確信するのだった。

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