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「ここがアブラハヤさんが言っていたお水がすごくながれているところか」
と、言う、お魚さんたちがたどりついたのは小さな滝。
今まで見てきたアオサギやブリよりも小さい滝ですが、少しだけ大人になっただけのお魚さんたちには、とても大きな水のながれに見えるのかも知れません。
「すごいお水だ」
やっぱり、すごい水のながれみたいです。
「のぼれるかな?」
のりこえるだけでも、たいへんそうな滝。
「でも、がんばってのぼらないと」
そう、のりこえなくては先に進むことはできません。
「うん、のぼろう」
とても早い水のながれですが、じっとしていても、進めなくては先に向かう事は出来ません。
それを知っているお魚さんたちは、つよい水のながれにさからいながら滝に近づきます。
そんなようすを見ている生きものがいます。
「魚さんか・・・、たいへんそうだな」
と、言うのは、川の近くに生える草むらの中にいるタヌキさん。
そして、草むらの上にある道にならんでいる六じぞうさんも声をかけます。
「・・・・、がんばるんじゃぞ・・」
そして、水の中に目を向けるとカワニナさんがいます。
「ここをのぼるには、ぼくみたいに石とかに引っ付かないと、ながされちゃうよ」
そんなカワニナさんは平べったい足を石に引っ付けて、クルクルとした貝がらを背負いながら、コケをたべています。
しかし、お魚さんたちには石にはりつくための足はありません。
「でも、元気におよげば、のぼれるかもね」
と、もう一度、カワニナさんは言ってくれます。
「うん、そうするしかないみたいだ」
そうして、滝の方に向いてから、しっぽをうごかしはじめたとき、カワニナさんたちとはちがう声がきこえてきました。
「がんばれ、がんばれ!。お魚さん」
「ここをのぼればもうすぐつくよ!」
と言う、声がきこえます。
「?・・」
その声は滝の上からきこえてきますが、だれがしゃべっているかは分かりません。
しかし、きこえてくるのは、おうえんしてくれる声です。
「よ~し。滝の上にも、ぼくらのともだちがいるみたいだ!」
きっとおうえんをかしてくれるのは、カワニナさんたちのような、しんせつな生きものにちがいがありません。
「じゃあ。みんな、行くよ!」
「おうっ!」
みんなのおうえんをもらって、滝へと向かうお魚さんたち。
「しっぽをたくさんうごかすよ!」
「おうっ!」
みんながげんきいっぱいに返事をします。
「ジャンプをするんだ!」
と、言って、滝の真ん中くらいまで、ジャンプする子。
「およげ!、およげ!」
上から落ちてくる水に押されながらも、しっぽをたくさんうごかす子。
色々な方法で、先にすすもうとするお魚さんたち。
「よいしょ!、よいしょ!。みんな、およげ!」
めざすところへ向かうためにおよぎ、滝の上でおうえんしてくれるともだちのためにがんばります。
そうしている内に、滝の上までちかづき
「やった、のぼれたぞ!。一番のりだ!」
さいしよの1ぴきがのぼりおわました。
その子にこえをかける生きものがいます。
「やったね!。もっともっと、のぼっていけるよ!」
それは、おしりの先がピカピカ
光るホタルさん。
そして、もう1つの声をかけてくれていたのは、ハグロトンボさん。
「もう少しで、大きな川につくよ!」
黒くてとうめいな羽をうごかしながら、おうえんしてくれます。
そんな声を聞いているうちに、次つぎと滝をのりこえた子があらわれます。
「みんな、来た来た!」
「のぼれて良かったね!」
滝をこえたところは、川のはばも広くなって、水のながれもゆっくり。
「何だか、いいにおいがするよ」
がんばってたどりついた所は、きもちが良い所みたいです。
もうすぐ、目指していたばしょに着くのかも知れません。
「なつかしいかんじがするね」
「よ~し。きっと、もうすぐだ!」
そうして、広くなった川を、みんながそろっておよぎます。
そして、とうちゃく。
「みんな、ついたよ」
「ここが、あたらしいお家だ」
とおい海からはなれて、たどりついたのは大きな川。
「たいへんだったね」
「うん、つかれたよ」
アオサギにつかまりそうになり、のりこえる事もたいへんな滝をのぼり、それでもアブラハヤさんやカワニナさんたちに助けてもらったおかげで、ようやくつきました。
「ここは何だか、たまごの時にいたところみたいだ」
「うん。にているね!」
とても、うれしそう。
大きな川は、たまごのころにいた所に、にているそうです。
子どものときにくらしたなつかしいばしょは、うれしいことがたくさん。
このばしよでお魚さんたちは、もっともっと大きくなっていきます。