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 ブリにおいかけられたあと、きせつはすっかりすすんで、あたたかくなりました。

 すいめんにうかぶユリカモメも、光かがやくたいようがきもちいいのか、ひなたぼっこをしています。

「お日さまが、あたたかいね~」

 そんな海にかこまれて、お魚さんたちも大きくなりました。

 そして、シラスさんとお魚さんがあつまって、

だいじなおはなしをしているようです。

「シラスさん。じつは、おはなしがあるんだ・・・」

 と、お魚さんがいいます。

 よほど、だいじなことなのか、しんけんなかおをしているお魚さん。

「うん?、おはなしってなに?」

 そのおはなしをきくシラスさんの方は、あたたかい日々がうれしいのか、のんびりとしたようすでへんじをします。

「あっ、ぼくらのなまえはカタクチイワシにかわったよ。シラスが大きくなるとカタクチイワシになるんだ」

 と、いうシラスさんのすがたは、ぎん色と青色になって、大きなお口をした魚になりました。

 そして、お魚さんの方は、白い体がはい色にかわって、りっぱなせびれやむなびれも生えて、少しだけ大人になったかんじがします。

「きみたちのなまえは何?」

 と、きくカタクチイワシさん。

「えっ、分からないよ」

 お魚さんのなまえは、今もお魚さんみたいです。

「そうか、きみたちも大きくなったから、なまえがかわったと思ったんだけど。まあ、ぼくらのなかまは海にたくさんすんでいるから、自分のなまえが分かるけど、きみたちはお水のしょっぱくないところからきたから分からないのかもね」

 海で生まれて、海でそだつカタクチイワシさんも、お魚さんたちのなまえは分からないらしいです。

 そして、だいじなはなしというのは、そのお水のしょっぱくないところにかんけいする話です。

「ぼくらはもうすぐお水のしょっぱくないところへもどらなくてはいけないんだ」

 なぜか、たいへんな思いをしてたどりついた海から、たまごのときにすんでいた川にもどるといいます。

 それは、ずっといっしよにいたカタクチイワシさんもおどろくことでした。

「えっ。なんで?、ここにいればいいじゃないか」

 と、ビックリしながら、カタクチイワシさんはききかえします。

「ぼくらも、ここにいたいけど。お水のしょっぱくないところがよんでいるんだ」

 その、お魚さんのせびれがピクピクうごいています。

 今すぐにでも、川にもどらなければいけないとかんじているのかも知れません。

「そうか・・、きみたちは大きくなったら、すむところがかわるのかも知れないね」

 もともとが、川で生まれたのに、海でくらしているのですから、また川にもどるひつようがあるのかも知れません。

「ざんねんだけど・・、しょうがないよね」

 と、カタクチイワシさんが言います。

 そして、お魚さんが言います。

「でも、また会えるさ」

 おわかれしても、また会えることを信じるカタクチイワシさんとお魚さん。

「うん。きっと、また会える」

 そして、さいごにカタクチイワシさんが言います。

「少しのあいだ、おわかれだ。少しのあいだだから、さよならは言わないよ」

 その声は、かなしくきこえますが、ともだちでいることを、しんじるきもちがつたわります。

「うん・・・」

 と、返事をして、お魚さんはカタクチイワシさんのそばからはなれていきます。

 さみしいけれど、今日でいっしよにくらしたともだちとはおわかれ。

 そして、もうすぐ川をのぼります。

 おたがいをつよく信じるカタクチイワシさんとお魚さん。

 とおくはなれてしまいますが、いっしよにすごした時間はけっしてかわることはありません。

(またね、カタクチイワシさん・・・)

 と、心の中で言葉をのこして、お魚さんたちは川に向かいます。


 そして、川の入り口では、同じように生まれた所にもどるお魚さんたちがあつまって、すごく大きなむれになっています。

「おすな、おすな。川にのぼる前にけがをしちゃうぞ!」

「しょうがないだろ!。大きくなったみんながあつまってるんだ!」

 お魚さんたちと同じように、からだがはい色にかわったなかまが、川の近くでひしめきあっています。

「たくさんいるね」

「みんな、ぼくらと同じ川にかえるのかな?」

 そうです。川に入り口にあつまったお魚さんたちは、同じ川で生まれたなかま。

 いままでは、広い海に散らばってくらしていたため、たくさんのなかまに気が付かなかったのです。

 少しだけ大人になった今、みんなと共に生まれた所にもどります。

 そして、いよいよ、川をのぼりはじめました。

「みんな、どんどんのぼれ!」

「ながれにまけるな!」

「だいじょうぶさ、もう子どもじゃあない!」

 ながれにさからって、川をのぼるのはすごくたいへんです。

「うわ~!、ながされるぞ!」

 川の入り口は、なみと川のながれがまじるため、ひじょうにきけんです。

 その力に負けて、海におし返されるなかまもいます。

「でも、だいじょうぶだ!。また、のぼればいいんだ!」

 水のながれに、まきこまれながらも、多くのお魚さんたちが、がんばりながらおよぎつづけます。

 そんなようすを、見ているものがいます。

「あっ、今年もたくさんやってきたな」

 その声のぬしは、ほそいハサミをした長いうでをのばしながら、石の下から出てきました。

 「うん?、何だ?」

 いきおい良くおよぐお魚さんに、あぶなくハサミが当たりそうです。

「あぶない!、だれだ?」

 長いうでをよけながらも、ハサミのもちぬしに声をかけます。

「おっと、ごめんよ。わるぎはないんだ、ハサミが長くてな」

 出てきたのは、川の入り口に住むテナガエビさん。

「気を付けて、登って行くんだぞ!」

 ハサミのうでと同じように、長いひげをもつテナガエビのおじさんが声を掛けてくれました。

「ありがとう!。テナガエビさん」

 川にもどって、初めての出会い。

(でも、ぼくたちが川をのぼることを知っていたみたいだぞ・・・)

 テナガエビさんが言った、今年もと言うことばは、前の年とその前の年もお魚さんたちが川をのぼっていったのを知っているということ。

 やっぱり、お水のしょっぱくないところへもどるのは、お魚さんにひつようなことみたいですね。

「よ~し!。がんばって、のぼっていくぞ!」

 川で生まれて、海でくらしたお魚さん。

 でも、まだ自分の名前も分かっていません。

 それでも、また川にもどることで、何かを知ることを信じて、せいいっぱいおよいでいきます。

 がんばれ!、お魚さん。

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