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海でくらして、しばらくたちました。
たどりつくまでに、たいへんなおもいをした海ですが、そんなくらしにもなれて、お魚さんたちは、ちょっと大きくなっているようです。
今は、りゅうぼくの下からはなれて、大きな石がたくさんあるところが、お魚さんたちのおうちです。
そんなある日、お魚さんたちは自分たちとよくにている魚とであいます。
「きみたちはだぁれ?。ぼくらとにている」
と、お魚さんがききます。
すると、きかれたお魚さんがこたえます。
「ちがうよ、きみたちがぼくらとにているんだ」
「ぼくらがきみたちに、にてるのかな?。ぼくたちは、きみたちがぼくらににていると思う」
「そんなことはないさ!。きみたちがぼくらににているのさ」
おたがいに、にてる、にてると言っています。
ちょっとおもしろいですね。
でも、たしかによくにています。
お魚さんたちは真っ白い体をしていて、もう片方のお魚さんも真っ白い体をしていますが、からだのよこにくろい点がいくつかあります。
ほんのすこしだけ、ちがうお魚さんたち。
「でも。まあ、いいか。にてるから、きっとなかまだね。ともだちさ」
何だか、ともだちができたようです。
その、あたらしいともだちのなまえは何かというと、シラスさんって言います。
「きみたちは、どこからきたの」
と、シラスさん。
「お水のしょっぱくないところからきたよ」
と、お魚さんはこたえます。
「ふうん?、ぼくらはずっとお水のしょっぱいところでくらしてる。ここは、良いところだよ。とってもひろいし、ごはんもいっぱいある」
ずっとお水のしょっぱい海でくらしているというシラスさん。
そのシラスさんがいうように、海にはごはんがいっぱいあるせいか、川にはいなかった大きな魚がたくさんいます。
まずは、体に白黒のしまがあるイシダイさん。
平べったい体をグイグイうごかして、大きな石のあいだをおよいでいきます。
そして川で出会ったコトヒキさんも、おとなになったすがたでおよいでいます。
こどもではなく、おとなのすがあなのですから、ごはんをたくさん食べて大きくなったのでしょう。
だから、海はとっても良いところなのかも知れません。
そして、すいめん近くをユラユラゆれながら進むスナイロクラゲさん。
大きな石の上ではクマドリイザリウオさんがのんびり。
その近くにはモグモグと海草を食べるサザエさん。
みんな、幸せそうです。
やっぱり、海はとてもすごしやすいところなのでしょうか?。
ええ、きっと。お水がたくさんあって、ごはんがいっぱいなのですから、きっと良いところなのでしょう。
「でも、たまにおっかないやつがくるよ・・・」
と、シラスさんが言います。
「おっかないやつ?」
初めてきく(おっかないやつ)ということば。
それが、気になるお魚さんがきき返します。
「おっかないやつって、何?」
「何って、それはもう、おっかないやつさ」
などと、おっかないやつのはなしをしていると、
「あっ!、きた!」
その、おっかないやつがやってきました。
「おっかないやつだ!」
いち早く、気づいたシラスさんが、みんなに知らせます。
「みんな、にげろ!」
シラスさんたちはおおあわて。
「にげろ、にげろ!。おっかないやつだ!」
そのおっかないやつは、大きな体をうごかして、お魚さんたちの方に向かってきます。
「ごはん、はっけん!」
と、いうことばを言いながら、近づいてくる大きな魚。
その、おっかないやつの正体はブリです。
おなかをへらしたブリはお魚さんたちをたべにきたのです。
どんどん向かってくるブリ、そのお口は大きくひらいています。
「おなか、へった!」
お魚さんたちを食べる気まんまんのブリ。
せっかく、あたらしいなかまができたのに、食べられたらかないません。
早く、早く。にげて、お魚さんたち。
「うん!、にげるよ!」
小さな体をひる返して、ブリからはなれるシラスさん。
「ぼくらも、にげるよ!」
と、お魚さんたちもシラスさんのあとをおいかけていきます。
とっても、およぎがはやいブリから、お魚さんたちはにげることができるのでしょうか?。