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「もう少しで、卵を産む場所だ」

 アユさんたちは、なかまを心配しながら進みます。

「みんな、大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

 みんなではげましながら、川を下るアユさん。

「でも、ちょっとこわい」

 大人になって卵を産むのは、初めての事ですから、本当はこわいな気持ちもあるのでしょう。

「こわくはないさ」

「みんな、いっしょにいる。そして、みんなで未来につなぐんだ」

「うん!」


 そして、卵を産む所に着きました。

「よ~し、じゃあ。みんな、いくよ」

「うん!」

 お母さんアユのとなりに、お父さんアユがよりそって、川底の石に卵を引っ付けていきます。

 一面に黄色く小さな卵が産み付けられて、キラキラ光る川底。

「わぁ!、きれいな卵がたくさん」

 と、言うのは、通りかかったフナさん。

 こうして、無事に卵を産む事が出来たアユさんたち。

 でも、なぜか、すがたは見えません。

 卵を産んだ後のアユさんはどこへ行ったのでしょう。

 すると、少し川を下った所に、何かが浮かんでいます。

「はぁはぁ、ちょっとつかれたよ」

 水面に浮いているのは、卵を産んだ後のアユさん。

 何だか、とても苦しそうです。

「みんな、大丈夫か?」

「ちょっと、苦しいよ」

 そんな様子を見ていたオイカワの子供が声をかけます。

「アユさん、大丈夫か?」

「ありがとう。でも、ぼくたちは死んでしまうみたいだ」

 そう、アユは卵を産んだ後に、死んでしまうのです。

「みんな、がんばったね・・」

「うん、がんばった・・」

「いままで、色々な友だちとあった。ぼくらは死んでしまって会えなくなるけど、卵から子供が産まれたら、友だちと会えるよね・・」

 このアユさんたちと、同じように産まれた子供たちは、川を下って海に行くのです。

 そうすれば、お別れしてきた友だちとも、きっと会えるはず。

「みんな、ありがとう」

「うん」

 こうして、なかまとのお別れをして、一匹づつ水の中にしずんでいきました。

 そして、最後の一匹が、

「じゃあ、ぼくもお別れだ・・」

 と、しずかに、息を止めていきます。

 でも、何か音が聞こえます。

【パシャパシャ】

 何でしょう?。

 パシャパシャという水の音が聞こえてきます。

「だれか、来ました・・」

 もう、泳ぐ元気も無いアユさんも気づきました。

 そばに見えるのは、人間のお母さんと小さな子供。

「お水の中はあぶないから気を付けるのよ」

 と、お母さんは言います。

「うん、でも、アユさんが苦しそうだし、最後にお話をしたいからがんばる」

 と、子供は言います。

「・・・、だれですか?」

 アユさんは、最後の力をふりしぼって聞きます。

 その足元を泳いでいたコトヒキの子供が言います。

「きっと友だちだよ。アユさんにお別れの言葉を言いに来た友だちだよ」

「そう、ぼくもお友だちだよ」

 と、言う、人間の子供は最後のお友だちです。

 そして、ずっとアユさんを見てきて、お別れのあいさつに来たのです。

 そう、最後のお友だちは、この話を呼んでくれたあなた。

 あなたは、アユさんをやさしく手に乗せて、話しかけます。

「アユさん、がんばりましたね。ずっと、おうえんしていましたよ。卵から産まれて、お父さんとお母さんになるまで、いっしょうけんめいにがんばりましたね」

 お話の中に出て来た、アユさん、ドジョウさん、カタクチイワシさん、アブラハヤさん。そして、たくさんの生き物たちは、みんなのお友だちです。

 あなたと、ずっとお友だち・・・。

「ゆっくり、ゆっくりお休みなさい。小さな、小さなお友だち」

 と、最後に言葉をかける子供。

 そして、アユさんは、返事をします。

「ありがとう・・」

 そして、ゆっくりと川の底へと沈んでいきました。


 後に、残された卵は水の中で、今もキラキラ光っています。

 そして、

「ぼくはだれ?、お父さんとお母さんのおかげで、ここにいるよ」

 と、卵は思います。

「でも、お父さんとお母さんって、何だっけ?」

 卵はなぜ、川の中にいるのか分かりません。

「ぼくって、何だっけ?」

 そう、産まれたばかりで、自分の事も良く分からないのです。

 でも、一つだけ知っている事があります・・。

「でも、お父さんとお母さんはやさしくて・・、ぼくはお父さんとお母さんが大好きなのは知ってる・・」

 そして、卵から出る時をまっているのです。


 こうして、お魚さんたちの物語は終わりです。

     











 

 そうして、ゆっくりと水の中にしずんだアユさん。

 おや、そのアユさんを小さなカニがつついています。

 そのカニはモズクガニの子供。

「これは、ぼくたちのごはんだよ・・」

 そう、アユさんが小さなプランクトンを食べていたように、今度は小さな生き物のごはんになっていくのです。

 そのカニさんも、命が終わった後に他の生き物たちのためになっていくのでしょう。

 こうして、色々な生き物同士がつながっていくのです・・・。


 これで、本当にアユさんたちの冒険はおわり。

 小さな生き物たち、ありがとう・・・。


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