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 川を下って行くと、大きな橋がありました。

 その橋は木で出来ていて、とても背の高い橋です。

 その下を通り抜けて行く、お魚さんたちですが、橋の上には人間の親子がいて、何かを話しています。

「お父さん、お母さん。きれいなお魚がいるよ」

 と、言うのは子供。

 川の中を指でさしながら、近くにいるお父さんとお母さんに話しかけます。

「あら、本当。何のお魚かしら」

 と、言うのは、お母さん。

 お母さんが見ているのはオレンジ色と少しの黒い魚。

 それを聞いていた、お父さんが言います。

「あれはアユだね」

 アユって、言うのは魚の名前です。

「アユ?、アユって、もっと灰色みたいな色じゃない?」

 そう、アユという魚は、大きな川に着く前のお魚さんたちのような色です。

「体がきれいなのは【こんいんしょく】と言って大人になったしるしなのさ」

 お父さんが言っている【こんいんしょく】とは何の事でしょう。

 それは、魚などの生き物が卵や子供を生むじゅんびが出来た時に、なかまに知らせるために色を変えた時の事です。

 川を下る前に、お魚さんたちの色が変わっていた事に似ていますね。

「この魚たちも、卵を生みに行くのさ」

「じゃあ、アユのお父さんとお母さんね」

 と、言うのはお父さんとお母さん。

「ふ~ん、お父さんとお母さんのお魚さんなんだ」

 と、子供はちょっとびっくりしています。


 それを聞いていた、お魚さんも、ちょっとびっくり。

「何か、ぼくらの事を見ているよ」

 橋の上にいる親子の事が気になるお魚さんたち。

「うん、わたしたちの事を言っているみたい」

「じゃあ、お父さん、お母さんってぼくらの事?」

「そうみたい・・?」

 ずっと、思っていたお父さんとお母さんが、自分たちの事だと聞いておどろいているのです。

 でも、まだ信じる事が出来ません。

 だって、自分たちは卵から生まれて、川から海に行った時も同じなかまといっしょにいて、色々なともだちが出来て、たくさんの事をおしえもらったのに、自分の名前が分からなかったのですから。

 とつぜん、アユと言う魚で、お父さんとお母さんになったと言われても信じることは出来ないのです。

 そんなようすを、土手の上で見ていたキジさんが言います。

「君たちはお父さんとお母さんなんだ。卵から生れて、子供になる。そして、大人になったら、お父さんとお母さんになるのさ」

 と、教えてくれました。

 でも、お魚さんたちは、もう一度だけ聞き返します。

「本当に?」

「本当さ。ぼくも、卵から生まれて、大人になったお父さんなのさ」

 と、キジのお父さんは教えてくれました。

「ぼくらがお父さんとお母さん?。じゃあ、アユって何の事?」

 アユと言うのは魚の名前ですが、だれの事を言っていたのでしようか。

「わたしたちの事みたい・・」

「ぼくらの名前がアユなの?」

「うん。きっと、そうよ!」

「でも、本当かな?」

 初めて知った自分の名前にも、ぎもんに思います。

 そのぎもんには、通り抜けた橋に止まっていたハトさんが教えてくれます。

「そうよ。アユは川で生まれて、海で育ってから、また川に戻るとなわばりをつくるの。だから、君たちの名前はアユなのよ」

 と、教えてくれました。

 でも、お魚さんたちは、

「本当に?」

 と、もう一度だけ聞き返します。

「本当よ。わたしたちは、ずっと橋に住んでいて、あなたたちのお父さんやお母さんたちのようすを見てきたのですから」

 そんな風に教えてくれたのは、ハトのお母さん。

 そうして、お魚さんたちは橋の下を通り抜けて行きました。

 そして、お魚さんたちは思います。

「ぼくの名前はアユ!。そして、お父さんだ!」

「わたしはお母さん!。そして、卵を生むの!」

 何だか、お魚さんたちは、うれしそうに見えます。

「うん!。うれしい!」

 お魚さんから、名前が変わったアユさんたちは、お父さんとお母さんとは何かを初めて知る事が出来たのです。

 そして、卵を生みに行きます。

 卵から生まれて、子供になって、大人になったので、卵を生むのです。

 お父さんとお母さんになったのですから。

 そんなアユさんたちを、川底で見てきたハゼさんも話しかけてくれます。

 「アユさん。がんばれ、がんばれ!」

 いっしょうけんめいに川を下るアユさんたちをおうえんしてくれます。

 そして、べつのハゼさんが言います。

「しばらくのお別れだね。ちょっと、さみしい」

 このハゼさんも、アユさんたちが、川を下る理由を知っているのでしょう。

 でも、お別れと言う言葉のいみはちょっと分かりません。

 そして、もう一匹のハゼさんは、

「でも。また、きっと会えるから大丈夫だよ」

 と、教えてくれます。

「ありがとう、ハゼさん」

 アユさんたちは、お礼を言ってハゼさんたちの横を通り過ぎて行きます。

 でも、[お別れだけど、きっと会える]と言葉は気になります。

 それでも、川を下って行くアユさん。

「うん!、大丈夫さ。ぼくたちはお父さんになったんだ。きっと、何があっても乗りこえていける!」

「そうよ。わたしもお母さんになったのだから大丈夫!」

 お魚さんたちは強くなったのです。

 それは、これから生まれてくる卵のために。

「そうさ!、ぼくたちは大人になったんだから大丈夫さ!」

 元気いっぱいに川を下るアユさんたち。

 そして、もうすぐ卵を生む所に着きます。

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