太陽に一目惚れしたひまわり
これはまだ、地球ができて間もない頃のお話です。
何もなかった地球に、神様は太陽を作りました。それから海と川を作って、森を作りました。それでも何か足りません。
神様は頭を捻って考えて、そしてようやく気づきました。
「そうだ、色が少ないからだ!」
その通り。
青と水色だけの海と川、茶色い幹に緑の葉っぱをつけるだけの木では、どうにも物足りなかったのです。
それに気づいたら神様は、早速色のあるものを作ることにしました。
「緑だけではない、明るい色の植物を作ろう。小さくて可愛い物がいい」
そうして花が作られました。
ピンクのチューリップ、真っ赤なバラ、青いアジサイ、紫のスミレ。川と森だけだった世界は、すっかり色とりどりになりました。
出来上がった世界を、空から神様は満足気に見つめます。
「ふむ、いいな。次は黄色いのを作るか」
そう呟いて、神様は小さなものを落としました。花を作る元となる小さなエネルギーの塊、種です。
黒と白のしましまの種は地面に落ち、ほんの一瞬でにょきにょきと育って立派な花を咲かせました。真ん中は茶色く、その周りを黄色の花びらが覆う花。現代ではひまわりと呼ばれる花です。
「よし、上手くできたな。後はこの一輪を元に、同じ種類の物をたくさん作るか」
そう言って神様は出来上がったひまわりに右手をかざし、左手にしましまの種をたくさん作ります。
さて、ここから先は神様ではなく、このひまわりの視点に移ります。なぜかって? 面白いことがわかるからですよ。
地面に落ちたひまわりは、あっという間ににょきにょきと生えて見事な花を咲かせました。それからすぐ、上からぽかぽかと温かい光が降り注いでくるのに気づきます。
なんだろう?
ひまわりは上を向いて、そして衝撃を受けました。
——なんて綺麗なんだろう!
それは、さんさんと輝く太陽でした。
それはとても力強くて、キラキラと輝いていて、目も眩むばかりに明るくて、それでいて自分たちに降ってくる光はとても温かくて、そこにいるだけで強烈な存在感を放つものでした。
とにかくとても綺麗だったのです。ひまわりは思わず見惚れてしまいました。
すごく綺麗だ。そして力強くて、でも優しく温かい。
もうひまわりは太陽から目が離せません。力強さと優しさを兼ね揃えた太陽に、ひまわりはすっかり夢中になってしまいました。
見ればいつの間にか、周りにはたくさんの兄弟がいます。彼らもみんな太陽のことを見つめていました。
みんなもこの太陽さんに夢中なんだ。
綺麗な太陽のことをみんながわかってくれていて、ひまわりはとても嬉しくなりました。
ふとどこからか「あれ、なんかみんな太陽の方を向いてるけど……まあいいか」という声が聞こえた気がしましたが、ひまわりは気にせずに太陽を見つめていました。この綺麗な太陽を、ひまわりはずっと見ていたかったのです。
太陽に一目惚れをしたひまわり。
このひまわりが元となって今のひまわりが作られたからこそ、現代でもひまわりはずっと太陽の方を向いているのです。
ちなみにヒマワリの花言葉は「憧れ」「あなただけを見つめている」「愛慕」「熱愛」など。どれもこのひまわりにぴったりですね。