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あめうらら  作者: あんかけらーめん
めろでぃ、あるいは崩れ行く日常
3/8

もーにん

 

 朝です。


 目が覚めました。窓から日の光が差し込んできます。雨はやんだようです。


 隣を見ると、カエルちゃんがいました。すごい寝相で、掛け布団を全部はぎ取って、自分のもののようにしてしまっています。どうも寝たりない気がするのは、そのせいでしょう。


 自然と、ため息が出ました。彼女はやはりここにいました。きっと夢じゃないのでしょう。


 時計を見ると、七時半でした。もうすぐバイトに行かなければいけない時間です。


 布団を出て、大きく伸びをしました。カエルちゃんもおきたようです。


 朝ご飯を食べます。食パンを二つ取り出して、トースターに入れます。


 両方にバターをよく塗って、片方は私が食べ、もう片方はカエルちゃんの口に突っ込みました。トーストを何度か落としそうになったところを見るに、カエルちゃんはまだ眠そうでした。


 着替えて、したくをして、家を出ます。家にカエルちゃんだけにしておくのもなんだか心配だけど、つれて行くわけにもいきません。テーブルの上に何枚か食パンを置いておいて、おなかがすいたら食べるように言いつけました。


 バイト先は、このアパートから歩いて20分程度の所にあります。バスで行くともっと早く着くけど、もったいないからそんなことはしません。


 雨上がりの道は、湿った匂いや、もわっとした空気に包まれていました。そんな雨上がりの風景を、私は嫌いではありませんでした。空気のほのかな温かさに包まれて、私はいろいろなことを考えさせられました。バイトのこと、過去のこと、そしてもちろんカエルちゃんのこと…


「あっ」


 曲がり角を曲がるとき、ぼうっとしてしまっていたためか、人にぶつかってしまいました。


「すいませんでした!!」


 頭を下げました。


「あっ、いや、そんなに謝ることは…」


 そういわれて、顔を上げました。相手は眼鏡をかけた、ぼさぼさの髪の男の人でした。白衣を着ているところを見ると、お医者さんか、何かの研究をしている人のように見えます。


「僕の方も不注意でしたから」


 優しそうな人で良かったと、心から思いました。もう一度軽くお辞儀をして、その場を立ち去ろうとす

ると、


「あっ、ちょっと」


 引き止められました。なんでしょうか。


「貴方、これから駅の方へ行くのですか?」


 バイト先は駅の近くにあります。うなずきました。


「なるほど…、一応ですが、気を付けてください」


 いったいどういうことでしょうか。よくわからなかったけど、彼はすぐにどこかへ行ってしまいました。


 追いかけようかとも思ったけど、結構時間がぎりぎりだったので、バイト先へ急ぐことを優先しました。


 ドアを開けます。ちりんちりんと、ベルの音がします。


「水森さん、おはとうございます」

「店長、おはようございます」


 彼女はこのカフェの店長さん。年齢は四十歳くらいと聞いたことがあるけど、二十代に見間違えられることもあるくらいの、若くてきれいな人です。だいぶ年下の私にもちゃんと敬語を使ってくれる、とてもいい人です。


 このカフェは店長と、時々手伝いに来てくれる彼女の夫さんや妹さん。あと、お昼くらいからパートに来てくれる子と、それに私。それが従業員のすべてです。こじんまりしたところなので、これくらいの従業員の数でも、足りないということは全くありません。


「じゃあ、準備しましょうか」


 あと一時間くらいで開店です。私たちは準備を始めました。


 このカフェは、店長が料理を担当して、私が接客を担当します。お昼ごろは、そこそこ忙しくなりますが、それ以外はあまり人は来ません。だから、みんなのんびりとしています。


「水森さん、お昼休憩入っていいわよ」


 一段落ついたので、あとはパートの子に任せて、お昼休憩に入らせてもらいます。


 お昼休憩では、店長のまかないが食べられます。今日のまかないはパスタでした。店長のパスタは、すごくおいしいのです。とてもありきたりな言葉だけど、おいしいものはおいしいのです。


 パスタをフォークでくるくるして、口に入れようとしたその時、


 悲鳴が聞こえました。


 店の外からでした。

 フォークを口に突っ込むと、とりだして、テーブルの上に置きました。悲鳴の方へ行くことにしました。


 カフェのドアを開けて、外へ出てみました。


 そこには、巨大な怪物がいました。ドリーマーのようでした。周りからは、たくさんの悲鳴が聞こえました。怪物は、周囲のものを、見境なく、飲み込んでいました。

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