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あめうらら  作者: あんかけらーめん
めろでぃ、あるいは崩れ行く日常
2/8

あ らゔ しゅぷりーむ

 カエルちゃんは、ここに存在しているはずのない娘です。だとすると、これは夢でしょうか。カエルちゃんは、やはり雨に濡れてきたのか、びしょ濡れでした。私は、心の中の驚きや疑問をとりあえず押しのけて、タオルで体を拭いてあげることにしました。着替えもさせてあげました。カエルちゃんには私のTシャツはぶかぶかでした。


 一通り終わったので、状況を整理します。おかしいことがたくさんあります。まず、私の前に、いないはずの人が立っています。そして彼女は、幼い姿のままです。たぶん、あの時から変わっていないのだと思います。どういうことなのでしょうか。


 いちばん簡単な解釈は、これが夢だということです。でも、こんなにリアルな夢があるのでしょうか。雨の音も、この1Kの間取りを構成する家具たちも、全部がくっきりと感じられます。


 あるいは、彼女は幽霊なのでしょうか。何らかの目的で、私に会いに来たのでしょうか。


 それならば、きっと私を呪いに来たのだろうと思いました。


 目の前にいる、カエルちゃんを見つめてみました。彼女は笑顔でした。再会した彼女は、なぜか笑顔以外の顔はしないようでした。それは、いわゆる社交のための笑顔ではなく、心からの笑顔のように見えました。


 カエルちゃんに聞いても、何も答えてくれませんでした。というのも、彼女は今言葉が話せないらしいのです。うめき声くらいとかならあげられるようだけど、意味のあることは発しませんでした。でも、私の言葉の意味は分かるようでした。何かをお願いすると、非常に従順に動いてくれました。


 時計を見ると、夜の十一時を過ぎていました。もう寝てしまおう、と思いました。何かを考えても、頭がこんがらがるだけだし、寝て起きたらすべてが解決している、なんてこともあるかもしれません。


 布団を敷きました。布団は一つしかなく、私はカエルちゃんと一緒に寝ることにしました。


 電気を消して、布団に入りました。暗闇の中の天井を見つめて、いろんなことを考えました。


 どうも、私はカエルちゃんとの再会を、存外にすんなり受け入れてしまっているようでした。別れ方が別れ方なだけに、もっと気味悪く思っても仕方のないはずなのに、です。


 きっと、あまりにありえないこと過ぎて、今だ実感がわいていないのでしょう。あるいは、私は、あの日に気が狂ってしまって、何もかもに無感動になったのかもしれません。


 布団の中で、カエルちゃんの体温がほんのりと感じられました。私は彼女の小さな体を、起こさないようにそっと、抱きしめてみました。それは、特に意味のない行為でした。

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