第二話
監獄から連れ出されてしばらく王都の中をおぶわれて移動した頃、前方数十メートルに魔物が現れた。
本来ならば王都の中に魔物が現れるなどあり得ない事だけれど滅びてしまった以上仕方がないかな。
そしてメートル法が今でも使われているかは分からないけれど。
魔物が見えると私をおぶっていた冒険者が私を近くの物陰に下ろして何か言っている。
言葉は分からないがおそらく危ないから戦闘が終わるまでここにいるようにという事だろう。
微かに頷くと彼女は安心した顔をして私の頭を撫でた。
子供だと思われているのだろうか?
まあ見た目は子供だから仕方のないことかも知れないが。
そういえば背が小さいことでよくからかわれた事もあったな。
彼らがどの程度の実力の持ち主かは分からないけれどさっき見えた魔物相手なら並の実力以上が有れば五分以内に倒せるだろう。
私はその間に少しリハビリをして体を動かせるようにしないと。
初めに手を動かしてみようと思ったけれど殆ど動かない。
筋肉が硬直しているのだろうか?それとも神経を使っていなかったせいだろうか。
しばらく体を動かそうと思ったことも無かったから仕方がないかも知れないが、不老不死の人間でも動けなくなるという事は新しい発見だ。
不老不死の人間は病気をしないしどんな怪我をしても直ぐに治ってしまうし、水や食べ物を取らなくても動けなくなる事は無いからね。
しかし怪我などと同様に筋肉の硬直や神経も本来ならばすぐに治るはずである。
とても長い間同じ体勢のままだったからその状態が通常の状態となってしまったのだろうか?
まあ確かに神様も不老不死の人間が数百年以上同じ姿勢のまま動かないでいるなんて考えないものね。
そんな考え事をしていると冒険者が戻ってきた。
どうやら戦闘が終わった様だ。
考え事をしていたからどの程度の時間で倒したのか分からなかったが。
私はもう一人の女性の冒険者におぶわれた。
どうやら交代で私を背負うらしい。
いずれ背負ってくれたお礼を何かしらしなければいけないね。
その後は特に何事もなく王都から出た。
正門はどうやら崩れて通れないらしく正門の近くの城壁に空いた穴から出た。
世界一を誇った城壁が大きく崩れたり穴が空いるのには少し驚いた。
戦争の影響や経年劣化あるとしても私が強化魔法をかけたからそう易々とは壊れないはずなのだけれど。
よほど強力な攻撃を受けたのだろう。
かけた強化魔法もほとんど残っていない様だし。
王都の外は鬱蒼とした深い森だった。
見たところ王都に繋がっていた街道は森に飲まれてしまっている。
彼らはどうやって王都に来たのだろうか?