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第一話

今日も私の視界に入るものは冷たい石の壁と小さなベッドそして鉄格子とその先の廊下だけ。

もうどのくらいの時間が経ったのか分からない。

ここから逃げ出すことも考えた事はあったけれどそれは陛下のご命令を無視する事になる。

かといって私は死ぬことも年を取ることも出来ない。

変化の訪れない日々、することもなくぼんやり壁を見つめる。


幾人かの足音が聞こえる。

この監獄に人が訪れるなどいつぶりだろうか?

音が大きくなる、こちらの方に来ている様だ。

陛下が私をどうするか決めてそれを兵士が伝えに来たのだと思った。

けれどやって来たのは冒険者のような格好をした四人組だった。

冒険者達は最初私を見た時とても驚いたような反応をし、次に鉄格子を壊そうとした。

冒険者の内の一人が私に対して何か話しかけて来ているようだが、それは聞いたことのない言語だった。

私は主要国の言語はある程度嗜んできたつもりだったのだけれどまだ知らない言葉があるとは世界は広い。


冒険者達が鉄格子を壊し始めてから数分、ふと疑問に思った。

彼らがこんなにも大きな音を立てているのに何故兵士は来ないのか?

そもそも何故この監獄に彼らが入ってくることが出来たのか?

監獄の出入りを監視する兵士はいないのだろうか?

そう思った時ちょうど鉄格子が大きな音を立てて壊れた。


女性の冒険者が牢の中に入ってきて私を抱きかかえた。

ここから出では陛下のご命令を無視する事になると思って抵抗を試みたものの、

とても長い間身体を動かしていなかったせいか抵抗出来ずに持ち上げられた。

声も長い間出していなかったからかしゃべろうと思っても声が出なかった。

冒険者達は優しげな口調で何か私に話しかけているがやはり知らない言語で何を言っているのか分からなかった。

しかしこの人たちは悪い人間では無いと思った。


冒険者達は私をどこに連れて行くのだろうか?

そう考えている内に監獄の外に出た。


そこで私が見たものは植物に覆われた廃墟の街だった。

この監獄は端とはいえ王都の中にあった。

王都が廃墟になっているという事は国が滅びたという事。

どうりで彼らが警備の厳しいはずの監獄に入れたのも大きな音を立てても誰もこなかった事に説明がつく。

そして王都の様子を見るに人が居なくなって五百年は経っていそう。

所々に自然では無い壊れ方をした建物もあるから戦争でもあったのだろう。


しかし戦争があったのなら何故私は気が付かなかったのか、何故王都の人々の音が消えた事に気が付かなかったのか?

一体私は何年この監獄にいたのだろうか?


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