ありがとうございますっ!!
「ここにしましょう。
ここにはドラゴニオン王国の情報は一見すると少なく見えますが、どの世界にも諜報活動をしている者はいますし、情報は金になります。必ず情報を売っている奴がいるはずです。
一番ドラゴニオン王国から安全で一番、情報が少なさそうなところから攻めてみましょう。」
僕はそう言って師匠・魔神フー・フー・ロー様がテーブルに広げた地図上でドラゴニオン王国から一番離れた場所を指差すのだった。
師匠は僕に賛同するわけでもなく、否定するわけでもなく、ただ弟子達の中で唯一、自分の考えをもって位置を定めた僕の意見を採用するのだった。
そして、他の弟子たちには「もっと自分の意見を出せるように」と言う旨の苦言を言うのだった。
師匠にそう言われてションボリするミレーヌたちの気持ちもわからんでもないけど、その時、僕は師匠が僕の意見に賛同してくれたわけではないことが気になっていた。
だから、僕は師匠が爛れた行為をする寝室に入ろうとしたその直前に呼び止めるのだった。
「師匠!! お尋ねしたいことがありますっ!!」
その言葉に今晩、師匠の夜伽をすることになっている愛妾達が迷惑そうな顔をする。
「坊や。遠慮と言う言葉をご存じ?」
「いいですか?
私たちはヌー・ラー・ヌーとは違って数か月にわたってフー・フー・ロー様のお情けを頂戴していない濡れた蜜壺です。邪魔をするものではありませんわよ?」
「さぁ、子供はもう寝る時間ですよ?
それとも、一緒に混ざりたいのかしら?」
とんでもなく卑猥な苦情を受けた。こんな卑猥な苦情がこの世にあるのかと僕は顔をしかめたが、そんな愛妾たちに構うことなく、師匠は右手を上げて「よい。先に寝室でお前達だけで始めて準備していろ。」といって愛妾たちを制するのだった。
「まぁっ!! なんてひどいことを仰りますのっ!!」
「いいですわよっ!!
貴方様が入る隙が無いほど、先に盛り上がらせていただきますからねっ!!」
愛妾たちは、そう言って寝室のドアから破裂音がするほど激しく戸を閉めるのだった。
「お前のせいでえらい迷惑だ。
今夜は、眠れそうにないな。」
肩をすくめながら師匠は僕をからかうように笑った。
「で? ジュリアン。我が弟子よ。
聞きたいこととは何だ?」
師匠は、僕と二人きりになれるように屋敷のベランダに連れ出すと回りくどい事は言わずに率直に訪ねて来た。
きっと、師匠は本心では、愛妾たちとの時間を邪魔されたことで、若干の苛立ちを覚えている。僕も男だからわかります。だから、僕も回りくどい話は無しで、単刀直入に尋ねた。
「師匠。師匠は僕が決めた転移先にご不満があるのではありませんか?
隠していてもわかります。だって、師匠は、満足しているときは僕の頭を撫でてくれますから。
なのに、今回は異論を言うどころか賛同することもなく、他の子たちを説教するだけでした・・・・。
何がご不満なのでしょうか? 教えてください。
僕は成長しなくてはいけないのです。
どうか、神よ! 私を正しい道へお導きください。」
僕はベランダに跪き、首を垂れてお願いした。
そう。僕は嫌だったんだ。
他の子は間違った行動をしたから指摘されたのに、師匠はきっと僕に不満があるのに何も言ってくれなかったのだ。
僕はそのことに苛立っていた。要するに皆に嫉妬していたんだ。
それは長男が、親に優しくされる妹や弟にヤキモチを焼く感情に似ていた。僕は、師匠に父上の影を重ねていたのかもしれない。だから、正直。他の子たちが僕よりも可愛がってもらえるのは、ちょっと嫌だったんだ。
間違っているのに何も言ってもらえないのは、叱ってくれないよりもキツイ事だと僕はその時初めて知った。父上はスパルタ式でとても厳しかったけれども、僕を放置することはなかった。今の僕は、そのころの僕がどれだけ幸せだったのか理解できる。
だから・・・。師匠にも厳しく導いてほしいと思ったんだ。
そう思って、師匠に直談判して頭を下げたんだ。だというのに、師匠は、何も言わずに僕の頭を殴りつけたんだ。
ゴンって凄い音がしたよ? 僕は、地面に突っ伏した。
「何かと思えば、そんな幼稚なことかっ!!
私はお前の神であり、師匠であり、父でもあるが、それは他の弟子たちにも言えることだっ! 他の子供たちも私にとっては大切な存在であるっ!!
それを自分だけが可愛がってもらえてないと思って、駄々をこねに来たんだなっ!?
そんなことで私と愛妾たちの楽しいひと時を邪魔したのかっ!! バカ野郎めがっ!!」
最後の一言が師匠の本音だと思うけど、僕は、師匠に感謝の言葉を述べる。
「ありがとうございますっ!!」
「・・・え? 殴られて・・・・ありがとうございますは違うだろ?
こっわ・・・・。」
師匠は若干、引いている感じもしたが、それでも僕の質問の答えを話してくれた。
「いいか、ジュリアンよ。俺は神であるゆえに、お前に全てを答えるわけにはいかんと話したはずだ。
お前の答えがあまりにも歪であるなら、前もって直すこともあるだろうが、それでもお前の考えた末の意見であるならば、俺はそれを聞き入れよう。
先に言っておくが、お前の答えは正解とはいいがたい。故に今回の未来は、若干、厳しいものとなるであろう。しかし、それは修行次第で乗り越えられる困難であるし、お前を成長させる試練としては問題が無い事なのだ。だから、私は何も言わない。助言の必要ないことだと感じたからだ。」
師匠は、話すだけ話すと、頭から出血する僕に回復魔法をかけて直してくれた。
そして、僕に手を差し伸べて抱き起すと、「その困難に打ち勝てるように、これから数日のうちにお前を急成長させる訓練を行う。地獄の特訓だと覚悟しておきなさい。」と、怖いことを言うのだった。
「さぁ、ジュリアン。話はここまでだ。
俺は、可愛い娘たちにたっぷりとお仕置きをしてやらねばならん。
これ以上、邪魔はするな。」
貴重な時間を割いてまで僕にそう説明してくれた師匠は、立ち去りながらそう言うのだった。僕はその背中に深々と頭を下げたのでした・・・・。
翌朝から、師匠が言った厳しい訓練が始まった。
訓練の内容は至極簡単。師匠の愛妾たちと模擬戦を行い、勝利することだった。
ちなみに師匠の愛妾たちは、どれも異界の高位の存在。誰もがミュー・ミュー・レイ並みの精霊騎士やヌー・ラー・ヌーと同じく精霊貴族だった。
そんな高位の存在と模擬戦を行い、勝つことが、僕の試練だった。
メチャクチャだ。僕は生き残れるだろうか?
「お前が今後戦っていく相手は、精霊のような高位の存在となる。
だから、模擬戦闘を行い、生き残る強さを身につけてもらわねば困るのだ。
ハッキリ言って、今のお前は私の神文の加護もあって、既に人間の息を超えつつある。水狂の魔剣士グー・グー・ドーと同等レベルでもない限り、お前の相手ではない
しかし、今、お前に求められているのは、それ以上の領域の強さだ。故にお前は、この訓練を乗り越えてもらわねば困る。」。※水狂の魔剣士グー・グー・ドー。17話参照。
僕は師匠から訓練の意味を説明されて、納得する。そして、僕が納得すると、師匠は模擬戦まず第一戦目の相手に愛妾の一人、風の精霊騎士リュー・リュー・ルーンを指名した。
リュー・リュー・ルーンは、長い黒髪をなびかせながら僕の前に立つと、模擬刀を構える。
「貴方を痛めつけるように仰せつかった。ご褒美に今晩は失神するほど可愛がってもらえると言われたの。
貴方に恨みはないけれど、死ぬほど痛い目にあってもらうわね?」
風の精霊騎士リュー・リュー・ルーンは、ニッコリ笑って怖いことを言う。
僕は騎士の作法にのっとって、槍の石突で地面を三度打ち鳴らし風の精霊騎士リュー・リュー・ルーンに敬意を払うと、挑戦的にほほ笑むのだった。
「ありがとうございます。
しかし、ご心配なく。僕は師匠に貴女に勝利するように命ぜられておりますのでっ!!」




