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訓練を始めるよっ!!

案内された客間は一室のみでベッドは超巨大サイズの一つのみだった・・・・。

・・・・・え?

こ、これって・・・

もしかして、僕達に同衾どうきんしろって言うのっ!?

僕達はまさかの事態に固まってしまう。そして、恐る恐る僕達を案内してくれたメイドに質問する。

「あの・・・・。僕達の部屋はこの一室のみですか?

 男女いるので、出来れば分けてほしいのですが?」

僕の質問にキョトンとした顔をする寝ぼけたような目をした妙齢みょうれいのメイドは

「この人たちはアナタの側室ではないのですか? 

 それとも、今夜はわたくし一人をご所望で、部屋を分けてほしいという意味ですか?

 断っておきますが、わたくしは両性具有のホムンクルスです。よほど特殊な性癖せいへきをしておられる殿方とのがたではないと・・・・。

 ああ・・・・。そういうマニアックなのがお好きそうな顔をなさっておられますね。

 では、寝室を二つに分けましょう・・・。」

そういうとメイドは隣の部屋を開けて、僕を手招きする。

頬を赤らめるな。頬を。

そして、僕に何を期待してるんだ?

ほら、やめなさい。僕が女の子たちから背中を殴られているのは君のせいですからね。


「あら、残念。王国の王子様の味が知りたかったのに・・・・。

 随分と初心ウブな事・・・・。」

メイドはとても残念そうに部屋を出ていった。

擦れ違いざまに「女に恥をかかせるなんて」と、ボソリと言ったのがちょっと怖かった。

加えて、去り行くメイドの背中を見送る僕を見つめるオリヴィア達の眼も怖かった。

何でだよっ!!

僕、何もしてないじゃないかっ!!


そうして、僕達は別々の夜を明かすことになった。

部屋の椅子に座ると同時に、ドッと疲れが出て風呂に入る余裕もなく眠りついた僕が起こされたのは、翌朝だった。

昨日のメイドは、何食わぬ顔で僕の寝室に入ってきたかと思うと、おもむろに窓のカーテンを広げて朝が来たことを伝える。

「おはようございます。ジュリアン様。

 湯浴びが出来るようにご準備が出来ていますので、ご主人様がお越しになる前にお入りください。」

窓の外は、まだ朝焼けだった。

「ああ・・・・。ありがとう・・・・。」

僕はメイドの名前を呼ぼうとして、まだ名前を知らないことに気がついて、「え~と? 君の名は?」と尋ねた。メイドは「アーリー」と名乗り、僕を浴場に案内する。それから

「御背中をお流しします。」と言って、服を脱ぎだしたので慌てて止める。

「ちょっ・・・・・何してるんだよっ!」

「なにしているって・・・・・服が水に濡れてしまいますから。」

キョトンとした顔は相変わらず可愛いけど、それはマズいでしょっ!!

「だ、駄目だよっ!!

 そんなの一人で出来るからさっ!!」

普段は小姓こしょうに洗ってもらっていたけれども、別に自分で洗えぬ訳で無し、僕は慌てて服を脱ぎかけるアーリーの手を取って止める。

そして、開かれたブラウスの胸元の隙間すきまからあふれんばかりの胸の谷間を見て固まってしまった。

「うっわ・・・。すっごい・・・。」

そのサイズに思わず声がれた僕を勝ち誇ったように微笑みながらアーリーが見つめる。「あんっ・・・・そんなに急がないでください。

 すでに3人もお待ちですし、焦る必要はございませんよ?」

アーリーのその妖艶な色っぽい声に僕は胸の奥が熱くなったけど、・・・・・不穏なセリフに気が付いた。

・・・・・既に3人、お待ち?・・・・・

一瞬、脳が思考停止してしまった。

そして、間が悪い事にこの瞬間に浴場の扉が開き、中からオリヴィア達3人が出てきた・・・・・。

その姿を察するに、3人はお風呂上がりだ。

いや、当然そうだろう。だって浴場から出てきたんだし・・・・・。

3人は僕を視認すると無言のまま、扉を閉めて浴場に戻っていった。


「きゃあああああああ~~~~~っ!!!」


早朝の魔神宅に少女の甲高い悲鳴が響き渡った。



「はっはっはっ!! 

 朝からお盛んなことだ。我が弟子よっ!」

朝食前の訓練を始める前にアーリーからこと顛末てんまつを聞いて、魔神フー・フー・ロー様は愉快そうに笑った。

「いや、我が神よっ!! 笑い事ではないですよっ!

 一体、メイドにどんな教育をしているんですかっ!? おかげで僕は風呂上がりにリンチされかけたんですよっ!!」

僕がそう非難するとフー・フー・ロー様は「いや、許せ。アーリーは元々、高位の存在の接待をする目的で作られた調度品でな。面白いから拾ったのだが、そういう性質を持っているのだ。」と弁解する。

なんで・・・。そんなのをメイドに使ってるんですか? と、尋ねようとして時間の無駄と悟り、あきらめる僕。にしても、両性具有のセクサロイドとは、本当にマニアックなものを作る。


「さて・・・と。」

フー・フー・ロー様は、さり気ないセリフで日常から訓練を始める空気に変える。

ボクも色々と思うことがあるけれど、フー・フー・ロー様の眼差しが緊張感を帯びたことに呼応して、気持ちを切り替えた。

「ジュリアン。我が弟子よ。

 お前はまず、その体の氷魔法の因子を完全に制御する術を身につけねばならん。そうしなければ、これから幾度も修羅場しゅらばを迎えるであろうお前は、直ぐに死んでしまうだろう。」

そうなのだ。

土精霊の大貴族バー・バー・バーンが敵に回ってしまった以上、僕は今後土魔法を封印して戦わなければいけない。土魔法は僕の切り札だったので、その失った戦力を補うために魔神フー・フー・ロー様は、僕の背骨に氷魔法の神文しんもんを刻みつけた。おかげで僕は訓練なくある程度の氷魔法が使えるようになったのだが、代わりに体の中で氷魔法の因子が暴走する事態になっている。現在はどうにか意識的に因子を制御することが出来ているけれど、昨日のターク・タークとの戦闘中に起きたことのように、どうしても氷魔法を制御できずに魔力を消費してしまう時間帯がある。

これを放置しておくと、戦闘中に魔力が切れて死んでしまう状況も容易に想像できてしまう。

だから、魔神フー・フー・ロー様はまず、無意識化でもこれを制御できるように訓練すると仰っているのだ。

しかし、こういうものを背負った経験が無い僕は、氷魔法の因子を制御できる訓練法など見当もつかない。だから、魔神フー・フー・ロー様の言葉を待つしかなかった。


「これから意識が飛ぶほど氷魔法を使ってもらおうか・・・・・。」


魔神フー・フー・ロー様は僕が想像もしていなかった訓練を始めるようだ・・・・。

「魔力因子を制御するために魔力因子を抑え込もうと考えるのは3流のいう事だ。

 お前はまず、徹底的に氷魔法を使って鍛え上げる。

 魔法の精度と威力を上げるのは訓練するしかない。魔法の精度が高いものほど魔力を操るのがうまい。コントロールに無駄が無くなればなくなるほど、無駄な魔力を使わなくなる。

 お前に必要なのは、その技術だ。これが身に着けば、自然と魔力を制御できるだろう。」


こうして、僕の訓練が始まるのでした。

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