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戦略的撤退だぞっ!!

災いの神ドゥルゲットに体を乗っ取られたクリスティーナは首をへし折られて死に、その魂だったエネルギー体は、同じ魂の片割れであるオリヴィアの魂に吸収されて・・・消えた・・・・・。

「うそだああああああー-----っ!!」

僕とオリヴィアの命を救ってくれた魔神フー・フー・ローの説明を受けた僕は、受け入れがたい事実に絶叫ぜっきょうする。

「いやあああああ~~~っ!!

 クリスっ!! クリスっ!!」

オリヴィアも現実が受け入れられずに絶叫しながら、クリスの名を呼ぶ。


「やかましいっ!!

 耳元で騒ぐなっ!! ガキどもがっ!!」

僕達を両肩に抱きかかえて走り抜ける魔神フー・フー・ローは、鬱陶うっとうしいとばかりに僕達をしかりつける。

火妖精の貴族ヌー・ラー・ヌーは、シズールとミレーヌを抱きかかえているが、二人はぐったりとして声も上げられない。

魔神フー・フー・ローは、しばらけてから、急に立ち止まる。

「あの化物は、俺たちを追ってくるかもしれん。

 このままヌー・ラー・ヌーの速度に合わせて走っていては追いつかれかねん。」

そう言うと魔神フー・フー・ローは、口から吹雪を吐き出すと、そこから氷の馬が引く馬車が飛び出てくる。

何の呪文も唱えずに異界いかいの馬車を召喚するという人の身からすると信じられないほどの高レベルの召喚術だった。

魔神フー・フー・ローが神である証拠であるように僕達は感じていた。

氷の馬が引く馬車には御者ぎょしゃがいて、僕達を視認しにんすると、馬車から降りてきてフー・フー・ローの前で深々と頭を下げる。

「これはこれは。氷と泥の国の王の一子、魔神フー・フー・ロー様ではございませぬか。

 氷の地獄へ向かって走るこの馬車をお呼び止めした理由は何でございましょうか?」

どうも御者はフー・フー・ローと顔見知りらしく、一目でフー・フー・ローの正体を見抜いた。

フー・フー・ローは不機嫌そうに「わが父の名は出すな。」と断ってから、御者に向かって

「この者たちを連れて氷の地獄へ向かえ」と命ずる。

御者はその命令を聞いて顔をしかめて

「それはうけたまわりづらい命令でございます。その者たちは神ではなく、生きた人間ではございませぬか。生きた人間を地獄へ連れて行くなど聞いたことがありませぬ。決して許されぬ事でありますれば、ひらにご容赦願ようしゃねがいたく・・・。」

と拒否するのだったが、魔神フー・フー・ローは、「地獄へ向かえと言ったが、地獄へ入れとは言っておらぬ。その入り口手前で降ろせ。」と命令する。

その言葉を聞いて御者は「御身おんみ大神おおかみの子でなければ、決して聞かぬ事でございますぞ。」と、恨みがましい事を言いながらも、渋々しぶしぶ、僕達が馬車に乗ることを許してくれた。

御者は馬車の扉を開けると「決して中の者たちと口を利かぬように。全員、亡者であるぞ。」と、忠告する。

何のことかわからぬまま、僕達は、フー・フー・ローとヌー・ラー・ヌーの後に続いて馬車に乗り込む。

その馬車は、外から見ると6人乗りサイズの馬車にしか見えなかったのに、中に入ると新幹線の中に入ったんじゃないかと錯覚するほどの奥行きがあった。恐らく、数十メートルの長さがあるのだろう。

そして、遠くに見える牢獄のような小屋には悲鳴を上げる亡者たちがぎゅうぎゅうに押し詰められていた。

「さぁ、座れ。」

その様子を見て呆然ぼうぜんとする僕達にフー・フー・ローは冷たく言った。

「あれは亡者だ。それも犯罪を犯して、地獄へ連れて行かれる哀れな犯罪者だ。

 決して口を利かぬようにな。」

魔神フー・フー・ローは、そう言って、亡者たちの方に目もくれずに忠告する。

火妖精のヌー・ラー・ヌーも亡者たちには興味を示していないように見える。

ミレーヌとシズールとオリヴィア。僕達は、不安そうにお互いの顔を見合わせてからフー・フー・ローの後に並んで座る。

そして、二人ともそれ以上口を利かなかったので、僕達人間同士も口をかずに恐る恐る座っていた。

その内、次元の壁を破るときになる大雷鳴だいらいめいと共に土精霊の貴族、バー・バー・バーンが現れるものの氷の馬が引く馬車を見て、

「考えたものだな。氷の地獄行きの馬車を召喚して乗り込むとは。

 これは氷と泥の国の王の支配する眷属けんぞく

 我々土精霊には手が出せぬっ!!」

といって、僕達が遠く異界いかいへと消えていくのを見守る様ににらみつけていた。


「いかに土精霊の大貴族バー・バー・バーンでも、これの馬車には手を出せまい」

フー・フー・ローは、愉快そうに笑った。その笑い声をBGM代わりにしながら、御者は僕達を乗せて悠々ゆうゆうと氷の地獄へと送り届けてくれる、


異界の壁を突き破り、再び元の世界に戻りつつ、信じられない速度で馬車は氷の地獄を目指して、走り去っていった。


僕らを乗せた馬車がどんな道をどれくらいの速度で走り抜けたのかは、窓のない馬車の中からでは見当もつかないが、あっという間に地獄の一歩手前の位置まで馬車は進んでくれた。

僕達が馬車から降りるときにフー・フー・ローは、何事か御者に伝えると、御者は嬉しそうに笑って深々と頭を下げると、再び馬を操って先を進むのだった。馬車が走り抜けた後には、炎が巻き上がっていた。


その様子を呆然と見ていた僕達にフー・フー・ローは、忠告する。

ほうけていられるのは今の内だ。」

そういうと、前に向かって歩き出した。

彼がどこに向かっているのか、僕達には見当もつかないが、きっと僕達人の身では及ばないような考えがあっての事なのだろう・・・・・。


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