頼もしい友達たちが付いてるぞっ!!
災いの神ドゥルゲットの予言した3度目の大異変は、3度目ではなく既に3か月前に起こり始めていたことだった。しかし、僕達は前世の記憶をたどり、変色した麦を廃棄する方法で病気が蔓延することを阻止することが出来た。
また、天候不順が原因で大量発生したネズミも効率的に駆除する方法を伝えて、これらの危機も脱することが出来た。 (残酷なので、ここでその具体的な方法を語るのはやめておこうと思う。だって、ネズミって可愛いもんねっ!!)
そして、世界が麻のようにと予言した災いの神ドゥルゲットの思惑を阻止するように、父上は世界各国に変色した麦の廃棄とネズミの駆除の方法を伝えた。
さらに、今後も転生者の助言を各国に伝えることを宣言なされた。
これで世界は転生者を狙う必要が無くなった。
僕達にやっと平穏が訪れたのだ。
だが、本当にそうだろうか?
災いの神ドゥルゲットの予言に翻弄されたランゲルやその配下の魔剣士グー・グー・ドー。それに魔神フー・フー・ローや災いの神ドゥルゲットさえも、本来は黒幕ではない。
むしろ、これらは、その黒に潜む何者かの企み事に一枚嚙もうとしたり、踊らされた者たちに過ぎない・・・・。
一体、黒幕は何者であろうか?
僕と父上は、その事を考えると、気持ち穏やかにはいられなかった。
しかし、そうは言っても、当面の危機は防ぐことが出来たのだ。
今回のことで、世界各国は我が国、傭兵王国ドラゴニオンに謝礼として大層な報酬を送ってくれた。
彼らの贈り物の中で特に助かったのが、やはり保存食だった。他国も本年の麦を失ったわけだから、これは貴重であったろうに・・・・。僕と父上は、改めて恨みを買うよりも感謝される行いをすることの大切さを再確認したのだった。
危機は去ったっ!!
そうなると、僕とクリスは復学できるし、僕達が最もやりたかった少年少女保護庁の活動も本格的に再開することが出来るっ!!
僕とクリスとオリヴィアは、父上に頼んでシズールも学院に入れるように手配してくれませんかと頼み込んだ。
しかし、流石の父上もこれには、快諾というわけにはいかなかったし、シズールの祖父である疾風のローガンもいい顔はしなかった。
「殿下。殿下のお申し出。シズールの祖父として誠にありがたく思います。
しかし、殿下。シズールは御覧の通り、鬼族の容姿をしております。その心が人間であっても、他人はシズールを人間と認めてくれるものでしょうか?
皆が、奇異の眼や恐怖の対象として、シズールを忌み嫌うのは目に見えております。その子は、これまでずっと他人のそういう目にさらされてきたのです。私は、この子を守るために隠遁生活をしてきました。
殿下のお申し出に従って学院に通うとなると、再びあのような目にこの子を合わせるのかと思うと・・・・・。どうか、この義ばかりはご辞退させていただきたく・・・。」
疾風のローガンは、詳しく事情を話して断ってきた。
父上もその意を酌んで入学は控えた方がよいのではないかと僕達を説得してきた。
それは正論だったし、僕達も無理にシズールに嫌な目にあってほしくはない。
そこでシズールにも意思を確認したところ・・・「私、知ってる。皆がジュリアン様とクリスのように優しくないこと。・・・・私、怖い。」と拒否してきた。
それならばっ!
そう、それならば・・・いやその時こそっ!!僕達が提唱したいじめられっ子が何の気遣いもなく逃げ込める場所となる少年少女保護庁が役に立たせるべき時ではないかっ!!
僕らは疾風のローガンとシズールに自分たちのおせっかいを詫びるとともに、少年少女保護庁について説明した。
そこはいじめられっ子が逃げ出せる場所。
心に傷を負った子たちが立ち直れるまで隔離して保護できる施設だ。
そこに入っている間は外敵はいないし、きちんと教育も受けられる。勉強に遅れを取る子も、その理解力に合わせたペースで勉強できるし、社会に順応しにくい子にも時間をかけて社会に溶け込めるように教育する。
もし、仮に一般の生徒が卒業する時間をずっと少年少女保護庁で過ごすことになったとしても、きちんと教育を受けられる。そういう施設を自分たちは作っているんだと、説得した。
しかし、それでも疾風のローガンは、渋い顔をした。
「殿下。脅威は学校だけではありませぬぞ。
社会に出れば、誰も子ども扱いしてはくれませぬ。
そういった場合、どうされますか? 困難と戦ったことがない子が、どうやって社会に出た時に孤独に世間と戦うことが出来ましょうや?」
・・・それは、僕も気がかりな事であった。
前世で「ゆとり」と呼ばれる世代は、甘やかされ過ぎたために社会に順応できずに引きこもり化してしまう話を聞いていたからだ。ただ、残念なことに僕もクリスもオリヴィアも前世は中学生で終わってしまった。社会に出た時にどんな困難があるのか?それは想像するしかないし、それの打開策など知る由もない。
経験したことも見たことさえもない大人の世界。
その問題をどうやって解決すればいいのか?それは、僕達の新たなる課題であるとともに、この先、少年少女保護庁を卒業していく子供たちにとって避けて通ることが出来ない問題であったので、早急に対応を考えないといけない問題だった。
疾風のローガンは、大人だ。世界各国の騎士団を渡り歩いた老エルフの騎士は、大人社会の厳しさを重々見知っていた。だからこそ、僕達の考えに反対しているのだろう・・・・。
僕達は、何も言い返すことが出来なかった・・・・。
「それではっ!! 只今よりっ!!作戦会議を開始しますっ!!」
僕は、少年少女保護庁に全員を集めて作戦会議を始めるのだった。
メンツは、僕。クリスとオリヴィア。ミレーヌ。シズール。そしてスティールとユリア。
まず、僕達はこの3か月の間に新しく増えたオリヴィアとシズールの紹介をすることにした。
シズールにとっては、僕の同級生であるスティールとユリアとは初対面であるので、きちんと説明をする必要があったからだ。
「やぁ。初めましてシズール。」「初めましてスティール、ユリア」の会話で済ませられるわけがない。
その理由は勿論、シズールが鬼族の容姿をしていたからだ。
僕は、あらかじめシズールのことをスティールとユリアには説明していたが、それでも二人は初めて見たシズールの姿に恐怖を隠せなかった。
ユリアは恐怖を禁じえず、スティールの背中越しにシズールを見ていたし、スティールも恐怖を押し殺すために大変厳しい顔をしていた。
その時、僕達は疾風のローガンの言っていたことの難しさを思い知らされた。
見た目や前評判が産む他人への印象の強さは、簡単に乗り越えることなどできないのだ。
僕だって、初めてシズールを見た時は、恐怖の声を上げた。
僕がクリスを好きになったのだって、ハッキリ言って一目惚れだ。初めて大聖堂の中で二人っきり出会った時のクリスの可憐な姿は今でも忘れない。本当に可愛いロリータだったからこそ、僕はイチコロでやられた。正直、クリスがシズールのような鬼族の容姿をしていたら、僕はクリスを許せていたかは、自信がない。
容姿は、恋愛感情も左右するほど重要な要素の一つであることは事実なんだ。
これは、道徳心以前に本能的に存在する問題だけに、一筋縄には解決できないのだ・・・。
スティールとユリアの放つ空気を悟ったシズールは「私、怖くないよ・・・・?」と、泣きながら部屋を出て行ってしまった。
クリスは、そんなシズールを追いかけて会議室から出て行ってしまった。
肩を落とす僕を見て、ミレーヌがいう。
「ジュリアン様の責任ではありません。
シズールのように容姿だけの問題ではありません。例えば、私のように暗殺者家業の賤民も普通は、受け入れてもらえないものです。私が学院で平穏に暮らせるのは、殿下の庇護にあるからです。
もし、私が一歩でもジュリアン様の庇護のもとから出たら、私はたちまち石投げられる賤民に戻ってしまうのです・・・・・・。」
ミレーヌは、真実を悲しそうには話しながら、僕を励ますのだった。
「でもっ!! それでも私は殿下を信じますっ!! 殿下なら、私を差別やいじめの連鎖からお救いくださることをっ!!」
その言葉にスティールとユリアも同意してくれた。
「「私も殿下と共にっ!!」」
僕は頼もしい友人に恵まれた。前世とは大違いだ。君たちとなら、僕はやり遂げて見せるよっ!
「ありがとう、ミレーヌっ!!。
どんな困難な道でも僕についてきてくれるかいっ!?」
「もちろんですっ!!殿下っ!!
私はあの日誓ったはずですよっ!! 私は殿下の忠実な奴隷っ!!
殿下がお命じになったら、民衆の前でも服を脱いで見せますし、殿下がトイレをしろとお命じになったら、そこが神殿の真ん中でもやりますわっ!!
どこまでも殿下と共にいますっ!!」
元は僕の命を狙った暗殺者のミレーヌが父上の目の前で忠誠を誓った時の言葉をこの場で言うのだった。
その言葉を聞いてスティールとユリアは、心底軽蔑した目で「うわぁ・・・・・」というのだった。
誤解だあああああああああっ!!!!




