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君の名は、オリヴィアっ!!

「どうした?ローガン。彼女が気になるのかい?」

僕がたずねると疾風のローガンは、眉間みけんにしわを寄せて答えるのだった。



「これは面妖な・・・・こんな小さな少女の体に・・・・・・2つの魂が混在しておる・・・。」


疾風のローガンの言葉に僕とクリスはびっくりした。

疾風のローガン。風と月の国の淑女しゅくじょハー・ハー・シーに看破かんぱの右目を授かった英雄。

その右眼はその者の魂の在り方を見破る。

幻術イリュージョン邪眼イーブルアイを打ち破る退魔たいまの目と呼ばれていて、勇者アルファを数多くの魔法使いの罠から守ってきたと伝え聞く。

英雄譚えいゆうたんによくある脚色きゃくしょくだと思っていたのに、それが、まさか本当のことだったなんて・・・・

僕はいささか興奮気味に尋ねるのだった。

「ローガン。貴方あなたにはクリスの体の中のとおる君の魂が見えるのか?」

僕が驚いてたずねるとローガンは怪訝けげんな顔をしながら、うなずいた。

「それが誰やはわかりませぬが、その少女の中にもう一人、”少女”のような魂の姿が見えまする。」

・・・・

・・・・・・

・・・・・・・え?・・・少女?

少女って、どういうことだ?

「ローガン。その子は男の子ではないのかい?」

疾風のローガンは答えた。

「少年・・・・かもしれませんな。しかし・・・・いや・・・・・うむ。判別つかぬほど少女の魂に近しいかと・・・・・。されど・・・殿下でんかおっしゃる通り、少年の魂やもしれませぬな。」

どうにも歯切れの悪い返事に僕は困惑こんわくして、張本人のクリスの顔を見た。

すると、クリスは大慌おおあわてで僕から目を背けるのだった。

・・・・・

・・・・・・・・・・うそつくの下手か?

僕がちょっとあきれてしまうほど、クリスは芝居下手しばいべただった。知らないふりを演出したいのか、窓の外を見てるし・・・・・。いやいや。今、君の魂の話題でしょ?。普通気にならないふりはないっしょ。

最低でも「心当たりがありません。ローガン様の勘違かんちがいでは?」とか、嘘でも話題に乗ってくるでしょ、普通は・・・・・。

何で君、今。「私関係ない」を演出しちゃうのさ。

そんな何かありそうな感じで隠されちゃったら、気にならないわけがないでしょ・・・・・。

しかし、これは気に入らないぞ。

よく考えたら、全く気に入らない事態ではないのか?

僕はクリスを睨む。


「クリス・・・・・君は言ったね。徹君は、魂の残骸ざんがいのような存在だと。・・・・

 ・・・僕をだましたのか?クリスティーナ・・・・。」

「そ、・・・それは・・・。」

僕が詰問きつもんすると、クリスはおびえてしまった。

それを見てローガンが慌てて訂正する。

「いや、すみません。殿下、それは本当の事でございます。その少年の魂は、随分とはかない存在で、いずれクリスティーナに取り込まれて消えるでしょう。クリスティーナのいう事は、嘘ではありますまい。」

脇から助け舟を出してきたローガンをキッと睨みつけながら、「本当か? 本当にもう一つの魂は、いずれ消える存在か?」と問う。

「恐れながら殿下。この疾風のローガンを疑われるのかっ。」

ローガンは毅然きぜんとした態度で返答した。

その騎士としてのプライドを感じる姿勢に僕は我に返った。

「すまない、ローガン。僕としたことが取り乱してしまった。非礼をびよう。受け入れてくれるかい?」

ローガンは無言で深々とお辞儀するのだった。

誤解が解けてホッとする僕とクリスだったが、僕とクリスは話し合うべきことがある。



「すまない、皆。僕とクリスとローガンだけにしてくれないかな・・・・?」

僕が騎士団や他の者に命じて部屋から出て行ってもらった。

三人だけになった部屋には、怯えるような瞳のクリスがいた。

僕は、出来るだけ穏やかな声で尋ねる。

「クリス。徹君はそこにいるんだね?」

「・・・・はい。」

「それは、・・・・徹君としての自我がちゃんとあるのかい?」

「・・・・・・・・あると言えばありますが、無いと言えば、ありません。」

奥歯に物が挟まったような返答が帰ってきた。

僕は、ごくごく普通の質問を返す。

「具体的に言ってくれないか? どういう状態なんだ?」

「・・・・・・・・・・。」

返事が返ってこない。クリスは返答に困っているようだった。

僕が仕方なくローガンを見ると、ローガンは咳払い一つしてから語る。


「今、その・・・トールクンでしたかな? その者の魂はですな。私がお二人の転生者としての事情から察するに・・・・・男子から女子に魂が入れ替わるときにはじき出された残骸のような存在かと・・・・。」


男子から・・・女子に魂が入れ替わるときにはじき出された残骸っ!!

その言葉を聞いて、僕はハッ! とした・・・・。

もしかして・・・・

もしかして、それがクリスが男心にうとすぎる原因か・・・?

男の子の事情にクリスが疎いのは、人間形成するうえでの「男性らしさ」は、弾かれて部屋の隅に追いやられたほこりのように集まって・・・・・それが徹君の正体かっ!!

しかし・・・・それならば、それならば、疑問がもう一つある。

僕は、ローガンに一度部屋に出てもらってから、クリスに尋ねる。

「クリス。嘘を言わずに正直に答えてほしいんだ。」

僕がクリスを見つめながら聞くと、クリスはしっかりと頷いた。



「あの・・・・徹君の自我があるとして・・・・・。

 僕がクリスに向かって可愛い連呼したり、キスしたりしてたのを・・・・徹君はどんな気持ちで見たてのさ・・・・・。」


その言葉にクリスは真っ赤な顔になって、「し、ししし、知らねーよっ!!」と答えた。

僕はギョッとした。恐らく、恐らく・・・今までもこんなことがあったのかもしれない。僕が気が付かなかっただけで・・・・。本当は・・・。

「徹君。いま、そこにいるんだね?」

クリスは言った。自分とクリスの自我が入れ替わることがない、と。でも、それが無自覚に行われていたのだとしたら? いや、クリスの自我のまま、その自我に介入して徹君にも発言権があるのだとしたら・・・・?

これまでも、クリスは僕に対して暴言を吐いたことがあった。ヤンキー気質な口汚い暴言を。

あれは、徹君がクリスに言わせたのではなくて、徹君が発言権を得て話していたのだとしたら・・・・?

僕は、それを確認するために質問したのだ。「徹君。いま、そこにいるんだね?」と。

そうして、僕のききたいことを察したクリスは・・・・・いや。徹君は「・・・・いるよ。」と答えるのだった。

・・・・・そういうことだったのか・・・・。

いや、でも。それだとすると徹君の自我はあったわけだ。

だったらさ、あのさ・・・・・


「め、メチャクチャ。聞きにくいんだけどさ・・・・

 じゃぁ、徹君は・・・僕がクリスに可愛いって連呼してたのを、どんな気持ちで聞いていたのさ・・・・。」

「ああああああっ!! な、なんちゅーことを聞くんだよっ!! 知らないっ!!

 そんなの、俺知らないっ!!」

徹君は僕に背を向けると頭を抱えて、その場にしゃがみこんでしまった。

え・・・・?

じゃぁ、やっぱり。その時、自我があってみてたのか・・・・・

め、メチャクチャ恥ずかしいんですけどっ!!

し、しかもさ・・・・あれだよっ!?

「じゃぁ、僕がキスしたときも君、よく平気だったね? 男にキスされたんだよ? 君っ!!」

僕の言葉を聞いて、徹君は怒ってその辺のものを掴むと、僕に向かって投げつけてきた。

「ああああああっ! いうなよっ!! いうなよっ!! スケベっ!!」

混乱する徹君が投げつけてくるものが結構な物量になってきたので、たまらず僕が徹君の手を掴んで止める。

「やめろっ!! 物が壊れたらもったいないだろっ!!」

「だ、だって・・・・お前が、変なことを言うからっ・・・・バカヤローっ!!」

徹君は、まだ暴れようと必死だが、クリスティーナの小さな体で僕にあらがうことなど出来ない。

「やめろ。今の君が僕に勝てるわけがないんだ。」

僕が耳元でささやくと、徹君は、恥ずかしそうに顔をそむけた。

・・・・・

・・・・・・・・え?

なに・・・・・この初心うぶな少女みたいな反応・・・・。

・・・・・

・・・・・・・あのさ、徹君、きみ。もしかしてさ・・・。


「徹君。もしかして、君の魂も・・・・すでに女性化していってるんじゃないのか?」

その言葉を聞いて、徹君は目をむいて反論してきた。

「・・・し、しかたねーだろっ!! だって、こっちは女の体で生まれてきたんだっ!!

 だんだん、心が女の魂に侵食されそうになるのを必死で俺は食い止めてきたんだっ!!

 それなのに・・・・それなのに・・・・

 お前が、お前が、あんなに毎日毎日、キスしてくるから・・・・・バカーっ!!」


徹君はそれだけ言うと、その場に泣き崩れてしまった。

そうか・・・・それでローガンは、徹君を見た時に少女と判断したのか・・・・。

そういうことだったのか・・・。

僕は床に座り込んで泣く徹君の肩を抱いて、見つめる。

僕に見つめられて恥ずかしそうに眼をそむけた。

「・・・・僕の事が好き?」

徹君は泣きながら、小さく頷いた。

ならば、僕が出来ることは一つだけ・・・・。



僕は、徹君の唇を奪う。

そして、言うのだ。

「だったら、僕も君を愛そう・・・。君がクリスの一部なら。君ごと僕はクリスを愛するよ・・・・。」

「君を女の子にしてしまったのは、僕なんだから・・・・。」


徹君は再び泣き崩れながら「ばかやろう」「ばかやろう・・・」と何度も何度もつぶやいていた・・・・。

やがて、徹君が泣きつかれたのか、発言力を失うほど体力を消費したのか、クリスが戻ってきた。

「・・・・・浮気者。」

責めるようなセリフとは裏腹にクリスは嬉しそうにそう言うと僕の唇を奪う・・・。

「大好きっ!! 私の全部を受け入れてくれて、ありがとうっ!!」



こうして、僕とクリスと徹君の問題は解決した。

でも、

「あのさ・・・・・この先、徹君て呼ぶのは・・・・お互いキツくない?

 女の子の名前に変更しないか?」

僕は正直に言う。

だって!! 女の子の名前じゃないとやっぱ、きついって!!

そうでしょうっ!!? わかりますよね? 僕の気持ちっ!!

クリスは、面白そうにクスクス笑いながら言う。

「実は私たち二人の会話の時は、前から女の子の名前で呼んでいたんですよっっ!」

マジでっ!!

「教えて教えてっ!! これからそう呼ぶから教えてっ!!」

クリスは悪戯っ子のように僕を覗き見てから、教えてくれた。


「この子の名前は、オリヴィアよっ!!」

・・・

・・・・・・「オリヴィアか・・・いい名前だね。」

僕はそう言うと再び唇を重ねる

「これからもよろしく・・・。僕の可愛いオリヴィア・・・・・・・」

徹君改めオリヴィアがいま、どんな状況かクリスが教えてくれた。

「今、オリヴィアは、真っ赤な顔して「うっせー。・・・・・・ばか・・・・・。」って言ってます。」

素直じゃないのっ!!

それが逆に可愛いいっ!!

ここまで取っておいたメス堕ちシーンです。

ずっとこれが描きたかった。

ヤンキー男子の魂が女の子に書き換えられてしまった瞬間です。

めっちゃ気持ちよく書けましたっ!!

読者様にも喜んでいただけたら幸いです。

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